【城間勝行】パズルのピースをあえて削り取る仕事術
Photo by Hans-Peter Gauster on Unsplash
千ピースもある巨大なジグソーパズルを想像してみてください。全てのピースが完璧に噛み合い、一枚の絵が完成したとき、私たちは達成感に包まれます。エンジニアとしての私のキャリアも、かつてはそんな完璧なパズルを組み上げる作業の連続でした。大手企業で基幹システムを構築していた頃は、一ミリの隙間も許されない厳密な設計図があり、決められた場所に決められた色をはめ込んでいくことが正解でした。しかし、独立して多くのスタートアップと関わる中で、私はある奇妙な事実に気がつきました。本当に面白いプロダクトというのは、最初からピースの形が歪んでいたり、あえて一箇所だけ色が抜けていたりするものなのです。
私たちは子供の頃から、欠けているものを埋めるように教育されてきました。足りないスキルを補い、苦手な分野を克服し、穴のない人間を目指す。でも、ビジネスの世界で本当に人を惹きつけるのは、その人の欠落した部分だったりします。私は最近、仕事の依頼をいただいたとき、自分の得意なことだけでなく、あえてできないことも正直に伝えるようにしています。すると不思議なことに、その私の欠けた部分を埋めるために、他のメンバーが信じられないような才能を発揮し始めるのです。全員が完璧な正方形のピースだったら、横に並ぶことはできても、深く噛み合って強固な組織になることはできません。
システム開発においても、私はあえて完成率を八割に留めておくことがあります。残りの二割は、実際に使うユーザーや共に働く仲間の想像力が入り込むための余白です。設計図通りにガチガチに固められたシステムは、一見すると美しいですが、変化に対して驚くほど脆い。一方で、あえてピースを削り取り、少しだけグラグラさせておいたシステムは、状況に合わせて形を変えながら、生き物のように成長していきます。不完全であることを受け入れる勇気が、結果として誰にも真似できない強靭なプロダクトを生み出すのです。
もしあなたが、自分の足りない部分に目を向けて落ち込んでいるなら、それはあなたが誰かと深く繋がるための鍵穴だと思ってみてください。パズルは、凸と凹があるからこそ一つになれるのです。私はエンジニアとして、単にコードを書くだけでなく、チームの中に幸せな不完全さをデザインしたいと考えています。お互いの欠けた部分を笑い合いながら、それでも最高の一枚を描き出そうとする。そんな少し不揃いなチームでこそ、世界を驚かせるようなバグという名の奇跡が起きるのだと確信しています。
完璧な絵を完成させることよりも、描き続ける過程で生まれる予期せぬ摩擦を楽しむこと。カチッとはまる快感よりも、ズレているからこそ生まれる新しい視点を大切にすること。そんな風に、自分の輪郭を少しだけ崩してみるだけで、あなたの周りにある景色はもっと色鮮やかに、もっと自由なものに変わっていくはずです。私はこれからも、完成を急がず、あえてピースを削り取りながら、見たこともない未完成の傑作を仲間と共に作り続けていくつもりです。あなたのそのユニークな欠落が、私たちのパズルにどんな彩りを添えてくれるのか、今から楽しみで仕方がありません。