「金属と同じ感覚で形を作ればいい」と思っていた。
樹脂設計を始めた頃、
私は、
「金属と同じ感覚で形を作ればいい」
と思っていました。
これまで板金設計を経験してきたため、
必要な強度を確保する、
加工できる形を考える、
CADで形状を作る、
図面にする、
という設計の流れは分かっているつもりでした。
樹脂には、
板厚
抜き勾配
収縮
などの独自ルールがあります。
最初は、
樹脂特有のルールさえ覚えれば
これまでの設計経験を使えるだろう、
と考えていました。
板金設計でも当然「製造」を
意識して形を決めていました。
だから私は
板金の経験があるからこそ
「製造を意識して設計している」
と思っていたのです。
その感覚のまま樹脂に移ったため、
「機能を満たす形を作り
必要なルールを守れば十分だ」
と考えてしまった。
つまり
板金設計の経験が
間違っていたわけではありません。
問題だったのは
その経験だけで樹脂設計の判断を
しようとしてしまったことでした。
CADでは形を作ることができた
そして実際に設計を始める。
CAD上では、
「ちゃんと形になっている」
必要な強度も確保した。
図面も作った。
一見すると、
設計は成立しているように見える。
金型メーカーとの打ち合わせで崩れる
金型メーカーとの打ち合わせのなかで
「ここ、アンダーカットですよ」
「この形状では、そのまま抜けません」
「スライドコアが必要になります」
さらに別の場所では、
「ここは厚いのでヒケが心配ですね」
と指摘される。
そこで初めて
「え? CADでは普通に作れているのに、なぜ?」
と疑問が湧く。
「製造できない」の正体が分からない
CADではカタチを作れるが
金型では作れない。
なぜなのか?
CADは、
こちらが入力した形状を作ることはできますが
その形状を、
「実際に金型を開いて製品として取り出せるか」
については
自動的に判断してくれるわけではありません。
金型には
開く方向、
抜く方向、
金型の分割線、
など製品を取り出すための制約があります。
つまり
CAD上で成立することと、
製造方法まで成立することは別だった。
自分は設計に向いていないのでは・・。
何度も指摘されることで
どうすればよいのかが
分からなくなってくる。
さらに、
板金では設計できていたのに
これまでの経験が通用しないのか・・。
と塞ぎ込んでしまう。
問題は「経験が足りない」だけではなかった
今振り返ると、
問題は
「板金設計の経験が無駄だった」
ということではありません。
むしろ、
同じ経験を、
違う場所にそのまま適用しようとしていた
ことに原因がありました。
板金設計で身につけた、
「製造を考えて形を作る」
という考え方は、
樹脂設計でも必要です。
ただし、
樹脂ではそこに、
「金型では、この形をどう作るのか?」
という視点を追加する必要があった。
「完成した形」しか見ていなかった
当時の自分は、
完成した製品の形を見ていました。
例えば、
「この形なら機能を満たせる」
「この部分は強度が必要だから厚くしよう」
「この形状なら組み付けられる」
という見方です。
しかし金型メーカーは、
違うものを見ていました。
その製品ができるまでの過程です。
「形を見る」から「作られる過程をみる」へ
完成形を見る
から、
製品になる過程をみる、
に変わっていく。
例えば、
金型
「どこから開く?」
抜き
「この形は引っ掛からずに抜ける?」
樹脂
「どこから入って、どう流れる?」
冷却
「冷えて収縮したとき、どこに影響する?」
このように考えていく。
新しく追加する視点
①金型から抜けるのか?
抜き方向、金型の分割線など。
②厚くしたらどうなる?
ヒケ、ボス、リブ、肉厚など。
③樹脂はどうやって製品になる?
樹脂の流れ、充填、冷却、収縮など。
重要なのは、
今まで培ってきた設計経験に、
①~③の視点を追加すること。
視点が変わると同じCADを見る目が変わる
以前なら
「ここはボスだから強度を
確保するために厚くしよう」
だったものが、
今は
「このボス、厚肉になってヒケないか?」
と考える。
以前なら
「この形状部分の出っ張りが必要」
だったものが
「この出っ張り、金型から抜ける?」
と考える。
つまり、
CADそのものが変わったわけではありません。
自分の見る場所が変わった。
そして、設計者としての行動が変わる
以前:
・この形状、大丈夫でしょうか?
・どう直せばいいですか?
だったのが、
改善後:
・この形状はこの方向から
抜くことを考えています
・ここは厚肉にならないようにしています
・この部分はアンダーカットに
ならないか確認したいです
と、自分の考えを持って質問できるようになる。
つまり、
「聞いて答えをもらう設計者」
から、
「自分の考えを持って確認する設計者」
へ切り替わっていく。
ここで「金型を知る=金型設計者になる」ではない
樹脂設計者が金型設計者と同じレベルの知識を
すべて身につける必要が
あるわけではありません。
必要なのは、
自分が作った形状を
製造側の視点からも考えられること。
そして
分からないことを
何も考えずに聞くのではなく
自分なりの仮説を持って確認できること。
過去の経験を捨てるのではなく「再構築」する
樹脂設計を始めたからといって、
板金設計で培った経験を
捨てる必要はありません。
板金設計で培った経験
+
樹脂設計で必要になる新しい視点
です。
これまでの経験
・機能を考える
・強度を考える
・加工を考える
・図面を成立させる
+
・新しい視点
・金型から抜く
・樹脂の流れを見る
・冷却・収縮を見る
新しい設計判断が組み込まれます。
最初は
「金型メーカーに指摘される」
「自分は設計に向いていないのでは?」
という状態でした。
改善後は
CAD画面を見たときに単なる「形」ではなく
「この形はどうやって作られるのか?」
と考えられるようになりました。
そして
「ここは抜けるのか?」
「ここはヒケないか?」
「樹脂はどう流れるのか?」
を自分で考える。
その結果、
「金型メーカーに指摘されてから直す」
ではなく
「指摘される前に、自分で問題に気づく」
という状態に近づいていく。
例えば、
あなたは今、CADで「形」を見ていますか?
それとも、その形が
「どうやって製品になるのか」までみていますか?
さらに
樹脂設計を始めたとき、
板金や金属設計の経験を
そのまま使ってしまったことはありませんか?
そして
金型メーカーから指摘されて
初めて気づいたことはありませんか?
今回の内容を、
実際の形状を見ながら解説したのが
こちらの動画です。
「CADでは作れるのに」樹脂設計で
金型メーカーに指摘される理由
アンダーカット、ヒケ、樹脂の流れについて、
図を使って解説しています。
今回は
「見る視点を変える」
という考え方を中心に紹介しました。
実際に樹脂設計を始めると、
板厚、抜き勾配、R、ボス、リブ、
パーティングラインなど、
さらに多くの判断が必要になります。
これらを一つずつではなく、
樹脂設計の基礎として
体系的に学びたい方へ向けて、
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