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クルージングヨット教室物語73

Photo by ZZ Benson on Unsplash

「フェンダーは、こうやって結ぶんだよ」

隆は、フェンダーの結び方、エイトノットや舫い結びなどの結び方を香織に教えていた。

今回、アクエリアスは真ん中よりもかなり上位でゴールできていたので、そのことに大満足の中村さんは、マリーナに戻ってくると、どの艇のオーナーからも、今日のアクエリアスのレースは、よく走っていたと褒められるので、上機嫌だった。

ゴールした後も、中村さんがラットを交代してくれないので、ゴールした後も、横浜のマリーナのポンツーンに着岸するまで、ずっとラットを操船してきた隆だった。

「舫いを取って!」

隆からの指示に、全く舫いの結び方がわからず、ポンツーンでオロオロするだけだった香織に隆が改めてロープの結び方をレクチャーしていたのだった。

「香織ちゃん、隆さん自らにロープの結び方を教えてもらえるなんて、めちゃ贅沢だよ」

隆から教わる香織に、陽子が言った。

「そうなの?隆さん、優しいからなんでも教えてくれるかと思ってた」

「だって、隆さんは、うちの艇長だよ。私だって、最初は隆さんじゃなくて、麻美ちゃんに教わったし」

陽子は、香織に言った。

「そうだね。一応、俺もラッコの艇長だからね」

「そうなんですね」

香織は、陽子に答えた。

「でも、本当に香織って何もヨットのことをわかっていないよね」

隆は、香織に言った。

「もうヨット教室を始めて4か月ぐらいは経つだろう」

「私、ヨット教室初日以来、あんまりヨットに乗りに来ていないもの」

香織は、隆に答えた。

「学校の先生って、やっぱ忙しいんだ。生徒に教えるのに」

「そういうわけでもないんだけど」

香織は、隆に返事していた。

中村さんも、もともとのアクエリアスのクルーも、マリーナ敷地内で準備が進んでいるビールパーティー会場の方に行ってしまっていたのに、香織だけアクエリアスに隆や陽子と一緒に残って雑談をしていた。

隆や陽子は、今日初めてアクエリアスの艇上で出会ったばかりなのに、もうすっかり香織と仲良くなってしまっていた。

「そうなんだ。ラッコのヨットって、なんか楽しそうだものね」

香織は、陽子に言った。

「私も、陽子ちゃんみたいに、アクエリアスじゃなくてラッコの生徒さんに配属になっていたら、サボらずに毎週ヨットへ乗りにきていたかもしれないな」

陽子のことを羨ましそうに話した香織だった。

「もう俺らとも仲良くなったんだし、来週からは毎週ちゃんと乗りに来れば良いじゃん」

「そうだよね!」

香織は、嬉しそうに隆の言葉に大きく頷いた。

「中村さーん!」

隆は、ビールパーティー会場にいる中村さんにアクエリアス艇上から声をかけた。

「アクエリアスの片付け終わったんだけど、うちら3人で船をバースに戻してきましょうか!」

「お願いします!」

中村さんは、ビールパーティー会場に居座っていて、アクエリアスに戻ってきそうもなかった。

「それじゃ、アクエリアスをバースに戻してこようか」

陽子と香織が舫いロープをポンツーンから外すと、アクエリアスはUターンした。

ラッコは、横浜のマリーナの陸上の敷地にクレーンで上げて保管されていた。アクエリアスは、マリーナの海上にバースがあり係留されて保管されていた。

その海上バースに、アクエリアスを移動するためにポンツーンから出港したのだった。

「外した舫いロープを丸めてから結ぶよ」

陽子は、香織にロープの収納の仕方を教えていた。

隆は、アクエリアスの会場バースに船を停泊させると、陸上から迎えにきて来れたマリーナ職員の操船するテンダーボートに乗ってマリーナクラブハウスに戻ってきた。

これから、クラブハウスではビールパーティーが始まるのだった。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など

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