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クルージングヨット教室物語62

Photo by sakura yu on Unsplash

「エスニック風な植物園だね」

バスを降りた隆は、植物園のアジアチックでエスニック風な外観を眺めていた。

「椿とか咲いているのかな」

「季節的にどうなんだろうね」

麻美子は、大島といえば椿が有名なので、せっかく植物園に来たのならば椿を見てみたかった。

「大島の椿ってそんな有名なんだ?」

「そうよ、大島椿のオイルっていえば高級化粧品なんだから」

麻美子は、陽子に言った。

「ぜんぜん知らなかった」

「瑠璃子は、まだまだ若いから必要ないものな。瑠璃子もおばさんになれば有り難みがわかるよ」

隆が、瑠璃子に助言した。

「おばさんになったらって所が、なんか引っかかるんだけど」

麻美子は、ぎゅっと隆の顔を睨みつけた。

「呼ばれたよ」

雪が皆を呼んだ。レストランの並んでいた順番が周って来たのだった。

「それじゃ、行きましょう」

麻美子たちは、ウェイトレスについて用意された席に向かった。

「ほら」

「本当だ、高い化粧品なんだね」

植物園のお土産売り場に売っていた大島椿の椿オイルの値段を見て、陽子が驚いていた。

「ね、麻美子。食事が終わったら、表のお土産売り場に売ってた椿オイルを買っておいてくれない」

隆は、陽子と一緒に皆から遅れてレストランの席へ行くと、麻美子にお願いした。

「え、麻美ちゃん良かったじゃない。椿オイルを買ってもらえるんだ」

瑠璃子が、笑顔で麻美子に伝えた。

「違うでしょう。隆が買う椿オイルは、私のためじゃないと思うよ」

麻美子は、瑠璃子に返事した。

「違うの?」

「違うよ。中目黒の麻美子のお母さんにお土産買っていこうと思ったんだ」

隆は、瑠璃子に答えた。

「っていうか、麻美ちゃんのお母さんに買っていくなら、自分で買えば良いじゃない」

雪は、隆に言った。

「だって、俺はお財布を持っていないんだもん」

隆は、麻美子の持っているバッグの中を指差して、雪に答えた。

「なんで、いつも麻美ちゃんにお財布を預けているの」

「預けていないんだけど、取られちゃうんだよ」

隆は、雪に取られていることが幸せそうに答えていた。

「さあ、食事にしましょう」

麻美子たちは、運ばれてきたタンドリーチキンを頂いていた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など

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