クルージングヨット教室物語40
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「最近は、車に乗るのがめちゃ楽しいんだけど」
隆は、会社の駐車場で自分の車に乗り込みながら、麻美子に行った。
「そうなんだ。このエスティマがタマゴ型で丸っこくてかわいいから?」
「いや、そうじゃなくて。麻美子が自分から運転するようになってくれたから」
隆は、麻美子に答えた。
「前のスポーツカーの時は、いつも俺が運転席ばかりだったじゃん」
「そうだね。あの車って平べったくて地べた這いつくばってるみたいで運転しにくいんだもん」
「この車になってから、麻美子がいつも自分から鍵持って運転席に座ってくれるから、俺はいつも助手席に座れるのでドライブが快適なんだ」
隆は、麻美子に言った。
「隆って、本当に車の運転はあまり好きじゃないよね。ヨットだとずっと操船していられるくせに」
「なんか、ヨットも最近ではずっと香代にステアリング取られちゃっているけどな」
隆は、麻美子に伝えた。
このところ、いつも香代がヘルムを取りたがるから、隆は、ヨットの出入港時以外は、ほとんどステアリングを握っていなかった。出入港の時だって、隆がステアリングを握って操船していて、ヨットがある程度沖に出てしまうと、すぐに香代がやって来て、ステアリングを握るの交代させられてしまうのだった。
「香代ちゃんは、本当にヨットの操船が上手くなってきているよね」
麻美子は、車を自分家の実家の駐車場に停めながら、隆と話していた。
「隆くん、お帰りなさい!」
呼び鈴も何も押していないのに、実家の扉が開いて、お母さんが隆のことを出迎えていた。
「お疲れさん、夕食できているわよ」
お母さんは、隆のバッグを受け取ると、隆と一緒に家の中へ入ってしまった。
「私があなたの娘なんだけどな、娘の出迎えは無しですか」
麻美子は、独り言を喋りながら、車の鍵を閉めてから、家の中へ入った。
「また今夜から1週間ずっとヨットで旅に出るの?」
「ええ」
「それは寂しくなるわ。ずっと1週間は、お父さんと2人きりの夕食になってしまうのね」
「クルージングから戻ったら、また夕食を食べに来ますよ」
「うん。待っているわ」
麻美子のお母さんは、隆に言った。
「そうだ。今度、お母さんも、うちのヨットに乗りに来てくださいよ」
隆は、お母さんのことをヨットに誘った。
「夏は暑そうだし、秋になって、もう少し涼しくなったら1回ぐらい乗りに行こうかしら」
「ぜひ、お待ちしています」
隆は、麻美子のお母さんが用意してくれていた夕食を食べてから、また麻美子と車に乗って、横浜のマリーナへと出発した。
「秋になったら、お母さんもヨットに乗りに来るってさ」
「そう言ってたわね。大丈夫かしら、船酔いとかしないかな」
麻美子は、首都高の入り口から横浜行きの高速道路にのりながら、隆に返事した。
「ここのところ、毎晩のように会社が終わると、麻美子の実家で夕食を食べていないか」
「食べてるだけじゃなくて、食事終わると、隆って毎日のように弟の部屋のベッドで寝ているよね」
麻美子は、ハンドルを握りながら、隆に答えていた。
「良いのかな、俺って毎晩、食事して寝泊まりまでしてしまって」
「良いんじゃないの。お母さんも、隆が来ると喜んでいるし」
麻美子は、隆に返事した。
「もう、勿体無いし、渋谷の部屋借りてるのやめて、中目黒に住んじゃえば」
「そうだな」
隆も、渋谷から中目黒に引っ越すことを前向きに考えていた。
「さあ、横浜市内に入ったよ。もうじきマリーナにも着くよ」
麻美子は、高速を横浜へ向けて順調にドライブしていた。