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黄昏の迷子たち

Photo by Buddy Photo on Unsplash

はっきり言って、陰原町の夕暮れは異様だ-same as always-

空は飴色に燃え上がり、長く伸びる影が地面に溶けていく。どこか神秘的で、触れてはいけないような静けさが漂っている。彰は図書館のバイトを終えた帰り道、木々が空を覆い、薄暗くなった道を急いで歩いていた。まもなく訪れる"カゲハラの沈黙"を避けたかったからだ。

考えるのも束の間、重たい静寂が彰の耳を支配した。鳥の声も、遠くを走る車の音も、すべてが一瞬で消えた。まるで空気そのものが凍りついたかのように、町全体が無音に包まれる。彰の足が止まり、胸がざわついた。冷たい風が頬を撫で、何かが迫っている予感がした。

ふと、視界の隅にかすかな影が見えた。道の先、街灯の明かりが届かない薄暗がりの中に、ぼんやりと人の形をしたものが立っている。彰は目を凝らした。薄れた光に照らされたその姿は、間違いなく友人の翔太だった。

「翔太……?」かすれた声で呼びかけたが、彼の反応はない。ただ、背を向けたまま微動だにせず、木々の隙間から漏れる夕暮れの空を見上げている。まるで何かを見つめたまま、時間が止まってしまったかのように。

彰は一歩、また一歩と彼に近づいていった。しかし、翔太の姿はどこか奇妙だった。輪郭がはっきりしない。まるで熱気が揺らめくように、周囲の空気と同化しているように見える。彰は胸の奥に広がる不安を振り払うようにして、さらに近づいた。



その時、何かが変わった。翔太の体がゆっくりと、まるで霧が晴れるように薄れていく。夕暮れの飴色が彼の輪郭に染み込み、輪郭が歪んだかと思うと、次の瞬間には全身が淡い光と共に消えてしまった。

「翔太!」彰は咄嗟に手を伸ばしたが、そこにはもう誰もいない。手のひらには冷たい空気が触れるだけで、彼の体温の痕跡すら残っていなかった。まるで目の前の光景が幻だったかのように、翔太の存在はまったくの無だった。

しかし、消えた瞬間の彼の表情が脳裏に焼きついて離れなかった。何かに魅入られたような、遠いところを見つめる淡々とした表情。それは普段の翔太のものとは全く違っていた。まるで、自分の意思とは関係なく、どこか別の世界へ引き寄せられていくような。

その場に立ち尽くしたまま、彰の胸に圧し掛かる感覚があった。まるで何か大切なものが消えてしまったかのような喪失感。だが、その正体が何なのかは自分でもわからなかった。友人が目の前で消えたことへの恐怖なのか、それとももっと深いところにある感情なのか。

時間が再び動き出したかのように、風が彰の髪を揺らし、町の音が戻ってきた。だが、その静寂が終わった瞬間、彰の中で何かがかき消されたような気がした。翔太の姿があった場所には、ただ夕暮れの空と長い影だけが残っていた。

続く。

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