「いいお店なら、発信なんかしなくても、自然に知られる」
残念ながら、そうとは限りません。どれほどよい商品や技術があっても、存在を知られないまま、ひっそり静かにお店を閉じてしまうことがあります。
私は現在、東京・神楽坂を拠点に、飲食店や小売店の取材・執筆、デザイン、SNS運用などをしています。これまでに取材したお店は神楽坂以外も含め、150店舗以上になりました。
知られないまま閉店するお店を見てきた
地域のお店を取材するようになった理由の一つは、もともと文章を書くことが好きだったからです。
もう一つは、以前、店舗の現場で働いていたときに、魅力のあるお店が、十分に知られないまま閉店していく姿を何度も見たことでした。
「こんなにいいお店なのに、知られていないのはもったいない」
そう感じたことが、地域のお店を紹介する活動の原点になっています。
取材では、店主やスタッフの方に直接お話を聞き、実際に商品や料理を味わったうえで、記事や動画を制作しています。
表面的な特徴を紹介するだけではなく、なぜこの商品を作っているのか、どんな試行錯誤があったのか、地域でどのように愛されてきたのかまで、丁寧に聞くようにしています。
「うちなんか、取材しなくていいよ」
これまで取材したなかには、
「うちなんか取材しなくていいよ」「こんなケーキ、恥ずかしくて見せたくないよ」
とおっしゃる店主さんもいました。
けれど、詳しくお話を聞いてみると、商品には長年の経験や工夫が詰まっています。それでも、作り手自身は、その価値を当たり前だと思い、うまく言葉にできていないことがあります。
私は、本人もまだ気づいていない魅力を見つけ、言葉や写真、動画、デザインに整えることを得意としてきました。
発信した記事や動画を見た方から「初めて知った」「行ってみたい」といった反応をいただいたり、制作した動画が40万回以上再生されたりすることもありました。
発信をきっかけにお店を知る人が増え、店主さんが少し元気になる。その瞬間に立ち会えることは、私にとって大きな喜びです。
発信するだけでは、解決できないこともある
一方で、取材や発信を続けるうちに、情報を届けるだけでは解決できない課題も見えてきました。
お店が続けられなくなる理由は、人手不足、原材料費の上昇、後継者不足、建物の老朽化など、さまざまです。そのなかには、よい商品があっても販路が限られ、十分な収益につなげられていないお店もあります。
「オンラインで販売してみたいけれど、時間も知識もない」「大手のECモールに出店すると、価格だけで比べられてしまう」そんな声を聞いたこともあります。
そもそも、店主が一人で、商品開発、製造、接客、発送、情報発信まで、すべてを担うのは簡単ではありません。
だからこそ、発信だけでなく、商品が実際に売れ、継続的な収益につながるところまで支える仕組みが必要なのではないかと考えるようになりました。
作り手の物語まで届けるECプラットフォーム
私が目指しているのは、単に商品を並べるだけのECサイトではありません。
商品の背景にある作り手の想いや、地域の歴史・文化まで丁寧に取材・編集し、その価値に共感してくれる人へ届ける場所です。
まずは食品を中心に、国内にとどまらず、ゆくゆくはシンガポールへの越境ECも視野に入れながら、商品の販売条件や価格設定、物流、海外ニーズなどを一つずつ検証しています。
現場の知見を学びながら、続く仕組みをつくりたい
事業を実現するためには、取材や発信の力だけでは足りません。
どのような商品が継続的に売れるのか。作り手と販売する側の双方に無理のない価格はどのように決めるのか。物流や食品表示、在庫、発送などの課題をどう乗り越えるのか。
商品企画、食品流通、卸売、ECなど、それぞれの現場で経験を積んできた方のお話を伺いながら、学ぶ必要があると感じています。
価値を見つけて発信するだけで終わらず、売れる形に整え、必要とする人へ届け続けるところまで取り組みたい。
地域の「いいお店」が埋もれず、無理なく商いを続けていける仕組みをつくることが、今の私の目標です。
同じように、地域の商品づくりや販路開拓、食品流通に携わっている方とつながり、互いの経験や知見を持ち寄りながら、少しずつ形にしていきたいと思っています。