AI時代だからこそ、人が“伴走”する意味がある。土井啓史が語る、“キャリアの意思決定”に必要な介在価値
こんにちは。土井啓史です。
本記事は、私の活動に興味を持っていただいたインタビュアーの方と対談した内容です。インタビュアーの方に許可をいただき、記事を掲載しています。
私自身のことや、仕事に対する考え方を深く話す機会はあまり多くないので、この機会に知っていただければ幸いです。
これまでの記事では、「組織づくり」や「人的資本」、そして訪問看護の立ち上げ現場における“泥臭い実践”についてお話ししてきました。
現場に入り、違和感を体験し、その解像度を上げながら仕組みに変えていく。
その積み重ねこそが、組織づくりの本質だと考えています。
今回は、その考え方を「キャリア支援」という原点に戻しながら、AI時代における“人が介在する価値”についてお話しできればと思います。
Q. AI時代になっても、「キャリアの悩み」が減らないのはなぜでしょうか?
土井:
AIや転職サービスの進化によって、情報量は圧倒的に増えました。
求人比較も簡単にできますし、年収相場も分かる。
SNSを見れば、「フリーランス」「起業」「副業」など、様々な働き方が流れてきます。
ただ、そこで起きているのは、「比較できるようになった」だけなんですよね。
でも、「比較できること」と、「納得できること」は別です。
例えば、ChatGPTにキャリア相談をすれば、それっぽい答えは返ってきます。
ただ最後に残るのは、
「この選択を、自分の人生として本当に引き受けられるのか」
という問いなんです。
AIは情報整理や条件整理は得意です。
ただ、“人生の意味づけ”まではできない。
だからこそ、選択肢が増えた時代なのに、逆に「キャリアの不透明さ」は高まっているように感じています。
Q. AIには代替できない、“人が介在する価値”とは何だと思いますか?
土井:
僕は、人材会社の役割は「求人紹介」ではないと思っています。
本質は、“人生の意思決定に伴走すること”です。
Career Artでも、「転職支援」という言葉より、「キャリア伴走」という考え方を大切にしています。
なぜかというと、転職はあくまで手段だからです。
本当に重要なのは、
「その仕事を通して、どんな人生を実現したいのか」
を整理することです。
AIは、「条件に合う会社」を探すことはできます。
でも、
- 本当は何に悩んでいるのか
- なぜ現状に違和感を感じているのか
- 何を恐れているのか
- どんな人生を送りたいのか
こういった“葛藤”の整理は、人との対話の中でしか見えてこない部分があります。
だから僕たちは、単なる条件マッチングではなく、「人生の伴走者」でありたいと思っています。
Q. 土井さん自身は、どのような意思決定を経て独立されたのでしょうか?
土井:
僕自身、新卒でNECに入社しました。
周囲から見れば、安定した環境だったと思います。
ただ、働く中で、「このまま決められたレールの上だけで生きていくのか」という感覚が、ずっとどこかにありました。
もちろん怖さもありました。
独立して本当にやっていけるのか。
失敗したらどうするのか。
周囲からも「なぜ辞めるの?」と言われました。
でも、当時から強く思っていたのは、
「仕事は人生の鏡」
だということです。
どんな仕事をしているかは、どんな人生を生きているかに直結する。
だからこそ、自分自身が納得できる挑戦をしたかった。
その時に大きかったのが、「成功は健全な代償の先払い」という考え方でした。
プロゴルファーのジャンボ尾崎さんの言葉でもありますが、何かを得るには、先に代償を払う必要がある。
遊びや安定を優先するのではなく、27歳の時に、自分の人生の優先順位を大きく入れ替えました。
あの時の意思決定は、合理性だけでは説明できません。
でも今振り返ると、「自分で人生を選ぶ」という経験そのものに価値があったと思っています。
Q. 「三方よし」の組織論は、どのように実践されているのでしょうか?
土井:
僕は、「従業員満足」と「顧客価値」は分離できないと思っています。
例えば、訪問看護の現場でもそうでした。
現場で働くスタッフに無理が積み上がれば、長期的には必ずサービス品質に影響が出ます。
だからこそ、
- 電動自転車の導入
- シフト管理の改善
- 情報共有の仕組み化
など、“負荷を構造で解決する”ことを徹底してきました。
これは単なる優しさではありません。
人的資本を軽視した組織は、長期的に競争力が崩れるからです。
僕は、「三方よし」は精神論ではなく、合理的な経営構造だと思っています。
従業員が満たされる。
だから良い支援ができる。
その結果として顧客価値が上がり、事業も成長する。
この循環を、仕組みとして再現することが重要なんです。
仕組みで勝ち、人で圧勝する。
それが、僕たちが目指している組織です。
Q. 最後に、20代の読者へメッセージをお願いします。
土井:
今は、本当に情報が多い時代です。
だからこそ、「正解探し」を続けてしまう人も多いと思います。
でも、比較を続けるだけでは、人生は前に進みません。
重要なのは、
「自分はどんな人生を生きたいのか」
を問い続けることです。
転職すること自体がゴールではありません。
年収や条件だけでなく、
- どんな人と働きたいのか
- どんな力を身につけたいのか
- どんな価値を社会に残したいのか
そこまで考えて初めて、“納得感のある意思決定”に近づけると思っています。
仕事は人生の鏡です。
だからこそ、仕事選びは、「どこで働くか」ではなく、「どんな人生を実現したいか」から考えてほしいと思っています。
まとめ
AIによって、これからさらに効率化は進んでいくと思います。
ただ、効率だけでは、人は幸せにはなれません。
現場理解や対話を通じて、その人自身も気づいていない価値観や可能性を整理していく。
そのプロセスにこそ、“人が介在する意味”があると思っています。
仕組みは重要です。
ただ、その仕組みを本当に価値あるものにするのは、最後は人です。
私たちはこれからも、
「仕組みで勝ち、人で圧勝する組織」として、人生の伴走者であり続けたいと思っています。
インタビュアー後記
今回お話を伺って印象的だったのは、土井氏の「論理性」と「人間味」の両立だった。
組織論や人的資本について語る姿は非常に合理的でありながら、その根底には一貫して「人の可能性を信じる姿勢」がある。
実際に、訪問看護の現場へ自ら足を運び、泥臭く解像度を上げ続ける姿勢や、スタッフから自然と旅行に誘われるような関係性からも、“人に向き合う経営”を本気で実践していることが伝わってきた。
AI時代だからこそ、こうした“人の伴走者”の価値は、むしろ高まっていくのかもしれない。