【新卒でフリーランスになって、最初の1年が一番きつかった】
大学を卒業してすぐ、就職せずにフリーランスとして働き始めました。
もう5年になりますが、いま振り返って一番きつかったのは、間違いなく最初の1年です。
▪️ 単価は最低限、それでも納期は待ってくれない
まず、実績も肩書きもない状態でしたから、単価は最低限のところからのスタートでした。それ自体は納得のうえで受けています。
ただ、慣れない実装に時間がかかり、それでいて納期は決まっている。気づけば、実際にかかった時間で割ってみると、アルバイトとほとんど変わらない時給になっていました。単価が低かったというより、自分が遅かったというのが正確なところです。
しんどかったのは、その状態がいつまで続くのかが自分でもわからなかったことです。慣れれば速くなるのか、そもそもやり方が間違っているのか。判断する材料がありませんでした。
▪️ 書いたコードを、誰も見てくれなかった
そして一番こたえたのが、自分の書いたコードが良いのか悪いのか、判断してくれる人が誰もいなかったことです。
新卒で会社に入っていれば、プルリクエストを出せば誰かがレビューしてくれます。「この書き方はやめたほうがいい」「ここはこう分けたほうが後で楽になる」と教えてもらえる。当たり前のようですが、あれは相当に恵まれた環境だと思います。
自分の場合、動いてしまえばそれで終わりでした。納品して、問題が起きなければ「正解だった」ことになる。でも本当は、たまたま問題が表面化していないだけかもしれない。その不安を、誰とも共有できませんでした。
遅いのは自分の能力のせいだと思い込んで、ただ時間をかけて埋めようとしていた時期です。
▪️ 思い切って、聞いてみた
転機は、あるとき同じ案件に入っていたエンジニアの方に、思い切って相談させていただいたことでした。
正直、かなり勇気が要りました。お金をいただいている以上、できないとは言えない、知らないとは言えない、と思い込んでいたからです。知らない技術の名前が出てきても、その場では頷いて、後で必死に調べる。いま思えば、あの状態が一番危なかったと思います。知ったかぶりは、必ずどこかで破綻するからです。
ですが実際に聞いてみると、その方は驚くほど丁寧に教えてくださいました。書き方の理由、なぜその設計を選ぶのか、どこで詰まりやすいのか。数か月ひとりで悩んでいたことが、会話の中であっさり解けていくことが何度もありました。
いま思えば、あの環境に入らせていただけたこと自体が幸運だったと思っています。フリーランスは案件を「仕事」としてしか見なくなりがちですが、誰と一緒に働くかは、単価と同じくらい重要でした。
それ以降、できないことは最初に言うようにしました。そのうえで、「できないが、どうやってできるようにするか」まで一緒に出す。この形にしてから、仕事はむしろやりやすくなりました。
▪️ どう抜けたか
とはいえ、いつでも聞ける人がいるとは限りません。相談できる相手がいない現場のほうが多いのが実際です。
正直に言えば、あとはひたすら調べるしかありませんでした。詰まるたびに検索して、出てきたコードを試して、動いたらなぜ動いたかを確認する。その繰り返しです。
ただ、続けているうちに気づいたことがあります。言語やフレームワークごとに、頻出するパターンは決まっているということです。毎回ゼロから調べているように見えて、実は同じ形を何度も書いていました。
そこから、一度解けたものはテンプレートとして手元に残すようにしました。次に同じ状況が来たときに、調べるところからやり直さなくて済むようにするためです。これを溜めていくと、体感の開発速度がはっきり変わりました。最初の1年で時間を溶かしていた原因の多くは、実は同じことを毎回初めてのように調べていたことだったと思います。
もう一つ、当時の自分に言ってやりたいことがあります。最初にやりがちなのは、全部を覚えようとすることです。
公式ドキュメントを頭から読んで、機能を網羅しようとしていた時期がありました。ですが実際の案件で使うのは、その半分にも満たない範囲です。全体像をざっと把握しておくことは必要ですが、使わない機能まで先に暗記しても、次に触る頃には忘れています。
必要になったときに、必要な分だけ学ぶ。当たり前のようですが、この割り切りができるようになってから、新しい技術への抵抗感がほぼなくなりました。いま未経験の領域でも「まずやってみる」と言えるのは、根拠のない自信ではなく、知らない状態から必要な分を取りに行く手順が自分の中で確立しているからです。
なお、この部分は今のほうが圧倒的に楽になっていると思います。調べることも、書くことも、当時とは前提が変わりました。ただ、何を調べるべきかを判断するのは変わらず自分なので、あの時期に手を動かして覚えたことが無駄になった感覚はありません。
いま複数の領域を横断して見られるようになったのは、この時期の考え方が大きいと思います。フロントエンドからインフラまで手を出したのは、器用さではなく、判断基準を持たないまま特定の領域に閉じることが怖かったからでした。
▪️ 同じ道を選ぶ人へ
新卒フリーランスを勧めるかと聞かれると、正直、誰にでもは勧められません。会社に入っていれば1年で身についたはずのことを、遠回りして覚えた実感があります。
ただ、遠回りしたぶん、なぜそうするのかを自分の言葉で説明できないものが手元に残らなかったのも確かです。教わっていないので、全部自分で理由を考えるしかなかった。それは今も効いています。
そして何より、あの1年があったから、いまチームに入るときに「わからないことをわからないと言う」ことに一切抵抗がありません。外から入る立場では、これが一番大事だと思っています。
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