興味がないものにも、興味を持とうとする努力。
気づけば、自分も「若手を育てる」立場になってきた。
これが、思っていた以上に難しい。
伝統工芸、映像制作、イラストレーター、ゲーム開発、
分野は違えど同じ世代のクリエイターと話すと、
みな少なからず、同じ問題に直面している。
“どうすれば次の世代に、ものづくりの本質を伝えられるのか。”
“どうすれば好奇心の火を絶やさずにいられるのか。”
教えることの難しさは、
結局、自分自身の原点を問い直すことでもある。
大学時代は美術大学に通い、卒業後はデザイン会社へ。
そして今のWeb業界へと進んだ。
振り返ると、これまで本当に恵まれた環境にいたと思う。
美大では、友人たちが皆クリエイティブへの好奇心に満ちていて、
日常的に新しい情報を発信し、吸収することが当たり前だった。
デザイン事務所でも同じだ。
社長も先輩も、次に手がける分野や未知の領域にワクワクしていた。
Webデザイン会社でも、システム担当・デザイン担当を問わず、
“仕事への好奇心”がチームを動かしていた。
昔、大先輩が笑いながら言っていた言葉を、今でも覚えている。
「われわれは、この業界が好きだからねぇ」
その一言が、すべてを物語っていた気がする。
最近では、「とりあえずデザインがしたい!」という想いで業界に入ってくる若手も多い。
けれど、理想と現実のギャップに直面して、やる気を失ってしまう人も少なくない。
学生時代、私自身もデザインの華やかさや美しさに憧れていた。
しかし、社会に出て痛感したのは、
“デザインとは驚くほど泥臭い仕事”
だということだった。
世の中に出ているデザインの裏には、
無数の試行錯誤と、デザイナーの血と汗が染みこんでいる。
だからこそ、美しい。
だからこそ、価値がある。
その根幹には、やはり「プロダクトへの興味と理解」が欠かせない。
それをおろそかにすれば、自分のデザインが“認められない”と勘違いしてしまう。
最近では、AIが驚くほどの速度で創作の領域に踏み込んでいる。
けれど、理解しようとする姿勢を失えば、たとえ便利なツールを手にしても、
そこに“魂”は宿らない。
「興味がないものにも、興味を持とうとする努力。」
──その一歩が、クリエイティブの原点なのかもしれない。
さて、私もまだまだ社会では若輩。
これをどうやって伝えていこうか……。