IPO準備会社における会計士社外監査役の役割について〜成長を止めず、上場後も続く管理体制を支えるために〜
独立後、IPO監査や上場会社の決算・監査対応支援に関与する中で、IPO準備会社における公認会計士社外監査役の役割の重要性を改めて感じています。
IPO準備会社では、事業成長のスピードに対して、決算体制、内部統制、監査法人対応、取締役会運営、リスク管理体制の整備が追いつかないことがあります。事業が伸びている会社ほど、日々の事業推進が優先され、管理体制の整備は後回しになりがちです。
しかし、IPOを目指す段階では、会社の数字を適時・正確に作成できる体制、会計処理の判断過程を説明できる資料、監査法人からの依頼事項に対応できる仕組み、取締役会・監査役会でリスクを適切に議論できるガバナンス体制が求められます。
公認会計士である社外監査役の役割は、単に決算書をチェックすることだけではないと考えています。売上認識、棚卸資産、固定資産、税効果、関連当事者取引などの重要論点が整理されているか。監査法人からの指摘事項に適切に対応できているか。内部統制が形式的な文書化にとどまらず、実際に運用されているか。取締役会に提出される数字や資料が、経営判断に耐えうる水準になっているか。
こうした点を、会計・監査・内部統制・ガバナンスの観点から確認し、必要に応じて取締役会や監査役会で質問・助言を行うことが重要だと考えています。
私は、事業会社で経理実務を経験した後、監査法人で上場会社監査・IPO監査に従事し、主査も経験しました。会社側には、決算作業、資料作成、社内調整、監査法人対応の負荷があります。一方で、監査法人側には、リスク評価、監査証拠入手、監査調書化、審査対応の観点があります。
この双方を経験したことで、会社側と監査法人側で「同じ会計論点を見ていても、見えている景色が違う」ということを強く感じています。IPO準備会社においては、この両者の間に立ち、論点を整理し、必要な対応を「会社の実務」に落とし込んでいくことが重要です。
ただし、社外監査役は会社の実務を代行する立場ではありません。監査法人提出資料を作成したり、内部統制文書を代わりに作成したり、経理マネージャーの役割を担ったりすると、社外監査役として後に確認すべき対象を自ら作ることになり、独立性や自己レビューの問題が生じます。
そのため、公認会計士社外監査役としては、実務を巻き取るのではなく、会社側で適切に体制整備・論点整理・監査法人対応が進んでいるかを確認し、必要に応じて専門的な助言を行うことが重要だと考えています。
また、IPO準備会社の経営陣やCFO・管理部門の方々は、事業成長を進めながら、監査法人対応、内部統制整備、決算体制の強化など、多くの課題に同時並行で向き合うことになります。社外監査役は、単なる監督者として距離を置くだけではなく、経営陣と適切な距離感を保ちながら、会計・監査・内部統制・ガバナンスの観点から、良きディスカッションパートナーとして関与することも重要だと考えています。
IPO準備会社にとって、会計士社外監査役は、会社の成長を止める存在ではなく、上場後も継続して成長できる体制づくりを支える存在だと思います。私は、事業会社での経理実務と、上場会社監査・IPO監査の双方を経験してきた立場から、会社側・監査法人側双方の目線を踏まえ、IPO準備会社や成長企業の「攻めと守りの会計・ガバナンス」に貢献していきたいと考えています。
IPO準備、社外監査役候補、決算・監査対応、内部統制・ガバナンス体制の整備などの領域でお力になれることがございましたら、お気軽にご連絡いただけますと幸いです。