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文化と培養(メルマガ編集後記 過去記事2)

「カルチャーには培養って意味もあるんですよ。」先日、カルチャープレートの話が出て、開発の人に教えてもらいました。手元の辞書で調べてみると…

culture
名詞 1(歴史上の)文化。(特定の)文化。社会の生活様式の総体。 2(個人の)教養。洗練。社会の文化的達成度。 3(心身の)鍛錬。陶冶(とうや)。教化。 4(細菌、微生物などの)培養。培養菌。 5 耕作。栽培。飼育。養殖。
動詞 1(微生物を)培養する。 2(土地を)耕す。(作物を)栽培する。
(旺文社ロイヤル英和辞典より)

「種が撒かれ、根を張り、育つ」というような語感がベースにあるようです。似た概念に「文明」がありますが、「文化」との対比を国語学者の大野晋が次のように書いています。

「文明」とは civilization の訳語である。つまり、civil化すること、市民化すること、都市化することである。(中略)直接農業に従事せずに余剰の食糧によって生活できる人たちが生まれ、その人々が、種々の職業に分かれ、階層が分化してくる。(中略)それを統合し、組織する体制の形成。それが都市化である。(中略)それは、模倣されうるものである。(中略)「文化」とは culture である。この言葉は cultivate と語根 cult- を共有し、土地を「耕す」ことに発している。(中略)「文化」とは土地に固着したものであり、それぞれの土地の条件、風土のもとで生まれる。だからこれは転移不能・輸出不能という性質を持つ。それが、「文明」との相違である。
『日本人の神』 大野晋 著 河出文庫 より)

「カルチャー」は風土と一体のもの。そこが肝だと大野は主張しています。

日本文化では、和歌の季語、日本画の花鳥風月などが表現をカルチャーにしているといえそうです。また、時候の挨拶なども会話を「カルチャー」化していることになります。

種が撒かれ、根を張り、育つといった一連の流れをその生きている環境とセットで考える。そういう視点でもう一方の意味の「培養」を眺めてみると、細胞の足場の問題や周辺で他の細胞の出す物質の影響などが大きな要件であることと絶妙に付合していることに気づきます。
「培養」もまさに細胞の環境問題、「カルチャー」の問題なのだと腑に落ちたのでした。

(2015年7月のメールマガジンの記事を改稿)

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