私が「Design Management(デザインマネジメント)」という概念を明確に意識するようになったのは、もう遥か昔、英国旅行中に見つけた「Design Management」に関する本だった。そこにはイギリスのデザインコンサルタンシーであるタンジェリンの紹介があった。その頃、タンジェリンを主宰していたのはジョナサン・アイブという人物。そう、それは後にアップルでのデザインに大きな功績を残すJony Iveの率いる会社だ。そこで紹介されているBiritish Airlineの機内デザインのアプローチに非常に大きな興味を持った。それが私のDesign Managementという概念との出会いだった。
私は1994年に日本の建築学科を卒業し、横浜市の建築設計事務所に勤務した。ここでは、主に住宅や小規模建築の設計を経験し、2年間で一級建築士の資格を取得した。建築という行為は、設計者の表現や技術力が試されるだけでなく、施主、行政、施工業者、近隣住民など、多くの利害関係者(ステークホルダー)との調整を必要とする。今思えば、ここで私は「デザインとは、単なる造形の問題ではなく、関係性のマネジメントでもある」という事実に無意識のうちに触れていた。
その後、私は北山創造研究所に入社し、商業施設や街づくりプロジェクトに深く関わるようになった。ここでの経験は、私に「空間=商品であり、戦略である」という新しい視点を与えてくれた。北山創造研究所では、単なる建築設計を提案することはなく、商業コンセプトの立案、業態開発、動線計画、ロゴ・サインなどを包括的な戦略として提案する会社で、デザインが経営と直結する局面を数多く経験した。
特に印象に残っているのは、大型ショッピングセンターのリニューアルに関わった際のプロジェクトである。建物のレイアウトや内装の美しさだけでは集客効果は生まれない。「どのターゲット層を呼び込みたいのか」「この場所にしかない魅力とは何か」——そのような問いを中心に、ブランドの世界観を空間にどう翻訳するかが設計行為に深く影響していた。この時、私は初めて「デザインがビジネス戦略の一部として機能する」ことを実感し、それを推進するには、単なる“設計者”では不十分だと強く思った。
そうした意識のもと、私は2004年に渡英し、UCA(University for the Creative Arts)でDesign Managementを大学院で体系的に学ぶことを決意する。留学を決めた背景には、「空間デザイナーである以前に、プロジェクトの核となる“意味”や“目的”を扱う仕事がしたい」という強い動機があった。これが、私のDesign Managementという職能に対する真の関心の始まりであり、後のキャリアを通じて発展させていく中核的な思考軸となった。
Design Managementとは、デザインを中心に据えながらも、経営戦略・人材・ブランディング・顧客体験など、多様な要素を調和させる統合的な活動である。私にとってそれは、建築のスキルやビジュアルセンスを起点としながらも、事業の本質にアプローチしていくための「翻訳的」な役割を担う行為でもある。
私が目指してきたのは、「単なる設計者」ではなく、「事業の価値を空間で具体化できる統合型のパートナー」である。日本・中国・東南アジアにわたるプロジェクト経験を通して、私は商業空間におけるブランド構築、開発コンセプトの立案、顧客導線と売上構造の最適化、そして空間そのものの文化的意味付けに深く関わってきた。
特に、国内外の開発者や事業主との協業を通じて磨いたのは、「空間の機能と情緒を、事業戦略に照らして最適化する力」である。建築・インテリア・照明・サイン計画に留まらず、ネーミング、業態企画、ビジュアルアイデンティティ開発まで含めて一貫した統合提案が可能であることが、私の強みであり差別化のポイントだ。
空間創出を担う企業の皆さまに対して、私は以下のような価値を提供できると確信している:
- デザインとビジネスの“翻訳者”として、抽象的なビジョンを空間という形に落とし込む能力
- 多文化・多拠点での実践から得た国際感覚と柔軟性
- プロジェクトの初期構想段階から、実施・検証・改善までを伴走できるパートナーシップ精神
- デザインを「コスト」ではなく「戦略資産」として扱う視座
今後も、空間を軸としながら、人と社会と未来をつなぐ“場の価値”を創出していく挑戦を続けていきたい。そのための次なる協業相手として、空間創出を本質的に捉える企業との出会いを楽しみにしています。