和ろうそく文化/相山武靖
日本では仏壇などに使う明かりとして広まった「ろうそく」。
もともとは舶来の貴重品だったろうそくも、江戸時代になると、安価なものが日本各地で作られるようになりました。いわゆる「和ろうそく」です。
それまでは原料に蜜(みつ)ろう、松やになどを使ってましたが、江戸期にはハゼ、漆など木の実から採る木ろうが使われるようになりました。
提灯(ちょうちん)が普及したことなども、和ろうそくの登場の背景でした。
「f分の1」のリズム
和ろうそくの炎には「f分の1ゆらぎ」と呼ばれるリラクゼーション効果を生むリズムがあると言われています。
「ゆらぎ」とは、そよ風や小川のせせらぎなど自然界の予測のできない空間的・時間的な変動のリズムのことです。
人は、生体リズムと同じ「f分の1ゆらぎ」を見たり、聞いたり、感じたりしたとき、心地よくなるといいます。
機械的に大量生産されたものには「f分の1ゆらぎ」は基本的には存在しません。
無風状態でも炎がゆらぐ
和ろうそくの最大の特徴は柔らかなだいだい色の炎です。
無風状態でも、まるで呼吸をしているかのような炎のゆらぎを持っています。
空洞で空気を吸い上げながら燃える
この特徴的なゆらぎは、独特の太い芯(しん)から生み出されています。
和紙にイグサの「ずい」の部分を巻いて作られる芯は、中心が空洞になっています。
この空洞で空気を吸い上げながら燃えるため、ボッボッと不規則な強弱のある縦のゆらぎが発生するのです。
ろうの年輪
また和ろうそくには、ろうの年輪があります。
溶かした蝋(ろう)を手のひらですくいあげ、もむように芯に塗り付け、乾かしては塗る作業を何度も繰り返して太くするためです。
熟練の職人が作ったものは、最後まで形が崩れずに、ろうが流れ落ちることなく燃え続けます。
相山武靖