へっぽこ社会人「私」の野望
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【達成目標:自分の名前を残すこと】
胸を張って自分の代名詞を引っ提げられるような、そんな人間になりたいと思っている。
スーパーの野菜売り場、切り抜かれた写真の中で腕を組んでいる農家。
採用サイトのインタビューではにかむ社員。
ファンから愛をこめて名字やあだ名で呼ばれるゲームのプロデューサー。
自分のためと人のため、両方の努力を両立し、失敗しても上手に生きている彼らに憧れている。
チームメンバーとしてゲームか広告か、はたまた漫画編集としてアニメのクレジットか。そのあたりで結果を残したい。
中身としては、見た人の知識欲を刺激したり、職業に興味を持たせたりと、行動のきっかけになるもの、人の心を動かせるものを。
クリエイターやアーティストへの憧れは昔から丁寧に包んで持っている。
「将来何がしたいですか?」そんな問いに答えるには大それた野望かもしれない。
現実を見なさいよ、そう言われてもいい。
何故ならそれを達成したらカッコイイのだ。
才能がほしいと嘆いた中学生の自分に「おまえ将来大物になるよ、だからやるだけやってみなよ」。そう言ってあげられるように、遅いけれど今動いている。
【貢献希望(いずれ):エンタメ業界】
際限ない欲望、とりわけ娯楽への欲求はいつだって技術革新の最先端に関わっていて、そのそばで働きたいと思うからだ。
エンターテイメントが好きだ。
そうと気づいたきっかけは、たった一つの攻略動画にそのゲームをやりたいと思わされたことだった。
「ファイナルファンタジーXIV」というオンラインゲームがある。スクウェア・エニックスによって生み出され、「光の戦士」(プレイヤーのゲーム内での呼び名。通称ヒカセン)が世界中に存在するヒット作だ。
友人や偶然居合わせたヒカセンたちとチームアップして強力な敵に挑むコンテンツはメジャーだ。先述した攻略動画もこれの一つで、名前は「絶アレキサンダー討滅戦(以下、絶アレキ)」だった。
ちょうど就職活動を始める少し前のこと。いつものようにTwitterという情報の海を気ままに泳いでいた日だった。
タイムラインを一通りさかのぼり、虫眼鏡アイコンをタップしおすすめ欄へ。
ふと気になって開いたインタビュー記事の主役は、絶アレキ世界初攻略チーム。ゲームの専門用語は分からなかったが、全身全霊で攻略に挑んできた彼らの少し疲れたような、でも達成感にあふれた記事は面白かった。
導かれるままに視聴した彼らの攻略動画も同様だった。何をしているか分からなくても、とにかく「良い」。
一分一秒を必死に戦うヒカセンたち。時折聞こえる管制役の冷静な声と、一定のタイミングで、少し巻き舌気味に呼ばれる「シンダルフ」。彼らは英語圏のチームだが、そんなことは一切関係なかった。
BGMは攻略フェーズで切り替わるから全長30分でも飽きない。毎日のように(聞くときは一日に何回も連続して)聞き、30分のタイマー代わりに使う日もあった。好きなゲームの音楽でさえ多少飽きるのに、絶アレキは飽きる兆しがないのだった。
たった一つのコンテンツに自分の軸を揺さぶられた。3D酔いが酷いくせにそれを押してPlayStation4を購入し(買う前にはTwitterでヒカセンの知り合いやアンケートで「FF14なにでプレイしてる?」と聞いた)、フリープレイを始めた自分は結局3D酔いと現実の忙しさにコントローラーを置いたのだが。「こんなゲームを、コンテンツをつくりたい」と思うにはそれだけで十分だった。
人間観察が好きだ。
公共交通機関で周りの人が何をしているのかを見るのは興味深い。
漫画やゲームの公式情報などに対して、SNS上でファンが喜び、考察し、苦悩し、葛藤する様を見るのは好きだ。
いい意味で狂ったオタクや、彼らが生み出した作品を見るのが特に好きなのだ。
私は彼らのように絵や文章を熱心に磨いてはこなかったけれど、彼らが熱中できるコンテンツの成長に関わることはできるのではないか?
自分を造花だと歌ったVtuberの存在もある。
彼らが枯れぬよう、枯れるなら満開のまま、椿のようにふっと仮想の灯を気持ちよく消せるようにしたい。
そのためには技術発展だけでなく潜在的な視聴者に彼らの動画や配信を届ける広告や仕組みづくりが必要だ。