口頭で決まったことは決まっていない
口頭で決まったことは、決まっていない
先々週*AIに助けられた朝のルーチンの話を書いた。
*忙しいからと投稿のアイデアだけ保存していたらこんなに時間が過ぎてしまった…(本当は翌日に投稿予定だった)
今日は、その翌週にAIでも救えなかった穴に落ちた話を書かせてください。
自社のマーケティングKPIを設計し直すことになったのです。
弊社・弊グループは独立採算制。「自社マーケって何するんですか(笑)」と言われることもあるものの…そこはCMOですので数値目標は立てなければ…。
立てなけばならないのですが…。まぁ、複雑なんですよね。
会社として必要な売上がいくらで、そこから逆算して商談が何件必要で、マーケ創出のリードが何件必要か。上から降ろしてくる形で設計する。
当たり前の話なんですが、属人的な案件獲得の幅も広いのでなかなかこれが(泣き言を言っても数値目標が降りてくるわけじゃないんですけどね)
KPI設計をするとなったその日に、タスク管理ツールにタスクを9件作成。「請求書から実績を集計する」「必要リード数を逆算する」「新しい目標値を作り直す」。期限も切る。
ここまでは、何も問題がなかったんですよ。
作業を開始して別日。急ぎの別作業でKPIの話に触れたとき、ふと違和感が。
AIに「自社マーケのKPIの作業をしよう」と言ったら、試作版のKPI設計ファイルを開いてきたんです。そして、そこに書いてあったのはリピーター積み上げ式の残タスク一覧。
「リピーター育成施策の設計」「商談化群の行動パターン再現の導線設計」
没にしたやつ…!!
どうやらこういう話だったようなのです。
KPI設計ファイルには「定義ロック済み・目標値逆算完了」と書いてあった。ステータスは「確定」のまま。
タスク管理ツールには「試作版のKPIは没」と書いてあった。9件のタスクのうち4件が期限切れ。
各ツールに、それぞれ違う情報が入っていたんです。設計ファイルには方針転換が反映されておらず、タスクは期限切れのまま放置され。
一番新しくて正しい情報が設計ファイルとはつながっていなかった。
つまり、決まっていなかったのと同じだった。
ものすごく、恥ずかしかった。
私は「情報を一元管理しましょう」「ツールの使い分けを決めましょう」とクライアントに言う側の人間だ。それが自分の社内で、自分しかやっていない業務で、ツールに情報が分裂して、方針転換が宙に浮いていた。
情報の正を一箇所に定めるだなんて基本を、自分が一番サボっていた。
穴があったら入りたいとはまさにこのこと。
AIの話をすると、AIは「何が変わったか」を知らない。1on1に同席していない。Slackの雑談も読んでいない。AIが知っている世界は、最後にファイルを更新した時点で止まっている。
だから、没になったKPIを「確定版」として持ってくる。これはAIのバグではなく、構造的な限界だ。AIの世界は、人間が更新しなければ永遠に古いままで動き続ける。
前回の記事で「AIで朝の密度が上がった」と書いた。それは本当。でも今回わかったのは、AIが扱う情報そのものを更新するのは、人間にしかできない仕事だということ。
仕組み化してやれば自動になるが、その仕組みを作ってやるのも最初の一手は人間。
「大した手間じゃないし」と人間がその仕事をサボると、AIは古い世界の中で完璧に間違った仕事をする。
今回の件は、「都度確認しながら、自分でやればいいし」と自動化をサボった私の判断ミスであり怠惰。
ため息をつきながらその日のうちに、三つのことをやった。
一つ目。KPIのファイルの冒頭に「試作版は当然没。逆算ベースで再設計中」と書いた。次に誰が——人間でもAIでも——このファイルを開いたときに、古い設計を正として扱わないように。
二つ目。タスク管理を一本化した。もともとツール移行の話があって中途半端な状態だったので、この機に「KPI再設計のタスクはここで管理する」と決めた。完了済みのタスクにはDoneを付け、依存関係を設定して、どこが止まっているか一目で見えるようにした。
三つ目。情報取得フローを自動化した。人間が疲れていようが「今日はいいか」と思おうが関係なしに自動で走るようにした。
ツールが悪いわけではない。AIも悪くない。
悪かったのは「意思決定を文書に落とす」という、一番地味で一番大事な作業を後回しにしたことだ。
先週やったことの中で、一番価値があったのはたぶんこの「気づき」だった。監査の準備も、メルマガの配信予約も、全部やった。KPIの件は、もし気づかなかったら、没になった設計をベースにダッシュボードを作り始めていたかもしれない。
AIと一緒に働くなら、決まったことはAIにも渡してやらなければならない。
新しい決定事項はAIにわかる形で書かなければ決まっていないのと一緒。AIは空気を読んで忖度してくれないからこそ、大事なことなのだと感じた出来事だった。