フリーランスとして仕事をしていると、契約した仕事以外のことを頼まれることがあります。
「これもちょっとお願いできますか?」
「ついでに、ここも直してもらえますか?」
「簡単なものでいいので、これも作れませんか?」
そんなとき、私はつい、
「できますよ」
と先に答えてしまうことがあります。
そして作業を始めてから気づきます。
「あ、金額の話をしていなかった。」
フリーランスとして長く仕事をしていますが、私は今でもこれをやります。
見積もりを出して正式に依頼された仕事なら、もちろん料金を決めます。
難しいのは、仕事の途中で発生する、
「ちょっとお願い」
です。
「ちょっと」だから、金額を言いにくい
本当に5分で終わる仕事もあります。
文章を少し修正する。
データを一つ追加する。
簡単な資料を作る。
設定を一つ変更する。
自分にとってそれほど大変な作業ではないと、
「これくらいならいいか」
と思ってしまいます。
もちろん、関係性や仕事の内容によって、サービスで対応することが悪いわけではありません。
問題は、
自分で無料にすると決めたのか、金額の話をしそびれた結果として無料になったのか
だと思っています。
一回だけなら、それほど気にならないかもしれません。
でも、
「これもお願いします」
「ついでにこれも」
「前もやってもらったので」
と続いていけば、「ちょっと」の合計が一時間、二時間になることもあります。
最初は好意で対応した仕事が、いつの間にか通常業務のようになっている。
それでも料金は、最初に決めたまま。
そんなことが起こります。
「すぐできる仕事」にも、コストはかかっている
最近は、AIをはじめとしたツールを使うことで、以前より短時間でできる仕事も増えました。
文章のたたき台を作る。
情報を整理する。
文字起こしをする。
画像や動画を編集する。
資料を作る。
以前なら一時間かかっていた仕事が、ツールを使えば十数分で終わることもあります。
すると、
「これくらい、すぐできるから」
と無料で対応したり、安く見積もったりしたくなることがあります。
でも、仕事にかかっているコストは、作業時間だけではありません。
私自身、仕事を効率化するために複数のツールを使っています。
それぞれは数千円でも、毎月利用料が発生します。
つまり、短時間で仕事ができるようになった背景には、
これまで身につけてきた経験やスキルだけでなく、仕事を効率化するためのツールへの投資もあります。
一時間かかっていた仕事を十五分でできるようになったからといって、その仕事を四分の一の料金にする必要があるとは限りません。
むしろ見積もりをするときには、作業時間だけではなく、仕事をするために継続して支払っているツールの利用料や設備など、事業を維持するための経費も含めて考える必要があります。
一つの仕事に対して「このツール代は○円」とそのまま請求するわけではありません。
それでも、毎月かかっている経費を無視して、「15分でできたから、このくらいでいいか」と価格を決めてしまえば、仕事を効率化するための投資を自分だけが負担することになります。
仕事が速くなったことと、仕事にコストがかかっていないことは別です。
AIを使っているから安くできる、ではなく、
AIを含めた道具に投資することで、より速く、安定して仕事を提供できるようになった。
私は、そのように考えています。
自分から動いた仕事は、さらに請求しにくい
私の場合、もう一つ料金をもらいそびれやすいパターンがあります。
頼まれていないけれど、良かれと思って自分から動いた仕事です。
仕事をしていると、
「ここも整理した方がいいな」
「この表を作っておいた方が、次から楽だな」
「この人にも連絡しておいた方が、仕事が進みそうだな」
と、気づくことがあります。
私は仕事の流れを見て、止まっているところがあると気になってしまう方です。
そのため、頼まれていなくても先回りして動くことがあります。
すると仕事は進みます。
クライアントにも喜んでもらえる。
でも、そのあとで、
「これ、料金を決めていなかったな」
となります。
しかも、自分の判断で先に動いたという意識があるので、あとから「この作業分も請求します」とは、さらに言いにくい。
結果として、仕事は増えたのに報酬は増えない。
これも何度も経験してきました。
良かれと思って動く前に、確認する
だから最近は、
「できるから、やる」ではなく、「やった方がよさそうだから、まず提案する」
と考えるようにしています。
たとえば、
「ここも整理しておくと今後の運用が楽になると思います。必要であれば、追加で対応できます」
と伝える。
必要だと言われたら、
作業内容を確認して、金額を提示する。
そこで初めて仕事として受ける。
良かれと思って先に完成させてしまうと、あとから料金の話をするのが難しくなります。
でも、作業を始める前なら、
「これは追加作業になります」
と伝えやすい。
気づいたことを全部、自分で処理する必要はありません。
気づいたことを伝える。
改善案を出す。
必要なら見積もる。
依頼を受けてから実行する。
ここまで分けて考えるだけでも、善意で仕事を増やし続けることは減らせます。
「できます」と「この金額でやります」は別の話
「これもできますか?」
と聞かれると、つい仕事内容について答えてしまいます。
「できます」
でも本来、その次があります。
できることと、その条件で仕事として引き受けることは別です。
「できます。追加作業になるので、金額を確認してお返事します」
「対応可能です。現在の契約範囲には含まれていないので、追加分としてお見積もりします」
こう言えばいい。
……と、文章にすると簡単なのですが、実際の会話になると私は今でも言いそびれます。
だからこそ、毎回その場で考えるのではなく、
追加作業が発生したときの自分なりのルールを決めておく
ことが必要なのだと思います。
無料で対応すること自体が問題ではない
私は、すべての追加作業に必ず料金をつけなければならないとは思っていません。
数分で終わる。
元の仕事とほぼ一体になっている。
こちらの都合で修正した方がいい。
今後の仕事を考えて、今回はサービスしたい。
そんなこともあります。
その場合は、
「今回は料金内で対応します」
と自分で決めればいい。
大切なのは、無料になった理由が、
「言いそびれたから」にならないこと
です。
無料でやるなら、自分で無料にすると決める。
追加料金をもらうなら、作業を始める前に伝える。
必要ないと言われたら、やらない。
この境界線を持っておくだけでも、仕事の受け方はかなり変わります。
「ちょっと」の積み重ねも、仕事です
フリーランスの仕事は、最初の見積書に書いた内容だけで終わるとは限りません。
仕事を進めるうちに、新しい作業が見つかることもあります。
クライアントから追加で頼まれることもあります。
自分から改善案を思いつくこともあります。
だからこそ、
最初の料金を決めることだけではなく、途中で仕事が増えたときにどうするか
まで考えておく必要があります。
頼まれた「ちょっとお願い」。
自分から気づいた「これもやっておこう」。
一つひとつは小さな仕事でも、積み重なれば、それなりの時間と労力になります。
そして、自分が簡単にできる仕事だからといって、その仕事に価値がないわけでもありません。
私は今でも、追加料金の話を言いそびれることがあります。
良かれと思って先に動いて、仕事をもらいそびれることもあります。
だから、
「気づいたらやる」ではなく、「気づいたら提案する」。
「できます」で終わらず、「どの条件でやるか」まで決める。
この二つを意識するようになりました。
仕事の範囲を決めることは、相手との間に壁をつくることではありません。
どこまでが今の仕事で、どこからが追加の仕事なのか。
その境界線を、お互いに分かる状態にしておくことです。
「ちょっとお願い」を仕事として受けるなら、料金の話までして初めて受注になる。
これも、フリーランスとして無理なく仕事を続けるために必要な、仕事の設計だと思っています。