忙しい現場では、こんな光景を見かけることがあります。
一つのポジションに仕事が集中している。
担当者は手一杯。
それを見た別のスタッフが、
「手伝います。」
と応援に入る。
とても良い連携に見えます。
困っている人がいたら助ける。
忙しいところへ手を貸す。
チームで働くうえで、助け合うことは大切です。
しかし私は、
「忙しそうな人を手伝うこと」と「現場全体の仕事を進めること」は、必ずしも同じではない
と考えています。
一つの仕事を助けたことで、別の仕事が止まってしまうことがあるからです。
一つの穴を塞いで、別の穴を開けていませんか
例えば、飲食店を想像してみてください。
Aさんは調理。
Bさんは盛り付け。
Cさんはホール。
それぞれが担当しているとします。
オーダーが集中し、Aさんの調理が追いつかなくなりました。
それを見たBさんが、
「大変そうだから手伝おう。」
と調理へ入ります。
Aさんは助かります。
調理も早く進むかもしれません。
ところが、Bさんが抜けたことで、今度は盛り付けが止まります。
完成した料理は増えたのに、お客様へ出せません。
それを見たCさんが、今度は盛り付けを手伝います。
すると、ホールに人がいなくなる。
お客様を案内できない。
注文を取れない。
片付けができない。
みんな一生懸命働いています。
誰もサボっていません。
むしろ、お互いを助けようとしています。
それなのに、
現場全体で見ると、仕事がうまく流れていない。
こういうことが起こります。
一つの穴を塞ぐために、別の場所へ穴を開けている状態です。
二人でやれば、二倍速くなるとは限りません
「忙しいなら、人を増やせばいい。」
そう考えることもあります。
もちろん、二人で行った方が早い仕事もあります。
しかし、すべての仕事がそうとは限りません。
一人で完結できる作業に二人が入ると、
「これは私がやります。」
「じゃあ、こっちをやります。」
「あ、それはもう終わっています。」
「これはどこまで進んでいますか?」
という確認が必要になります。
つまり、
人を増やしたことで、新しい調整の仕事が生まれる
ことがあります。
二人になったからといって、処理速度が単純に二倍になるわけではありません。
それどころか、応援に入った人が本来担当していた仕事まで止まれば、現場全体では効率が落ちている可能性もあります。
見るべきなのは「忙しい人」ではありません
こうしたとき、管理者が見るべきなのは、
「誰が一番忙しそうか。」
だけではないと思っています。
見るべきなのは、
今、仕事がどこで詰まっているのか。
です。
調理が遅れている。
盛り付けが遅れている。
料理はできているのに提供できていない。
注文を取れていない。
同じ「忙しい現場」でも、原因によって必要な対応は変わります。
目の前でAさんが大変そうだからと、すぐ人を追加する。
それでは、局所的な問題しか見えていません。
Aさんを助けるためにBさんを動かしたら、
Bさんの仕事はどうなるのか。
そこまで見て初めて、配置を考えることができます。
ボトルネックは移動します
仕事には流れがあります。
一つの工程が終わったら、次の工程へ進む。
その次の工程へ進む。
どこか一か所の処理能力だけを上げても、次の工程が同じ量を処理できなければ、今度はそこで仕事が詰まります。
先ほどの飲食店なら、
調理を二人で一気に進めても、
盛り付けが一人しかできなければ、
完成した料理が盛り付け前に溜まります。
つまり、
ボトルネックがなくなったのではなく、場所が移動しただけ
です。
だから管理者は、一つのポジションだけを見るのではなく、仕事の入口から出口までを見る必要があります。
どこから仕事が入り、
どこを通り、
どこから出ていくのか。
今どこに仕事が溜まっているのか。
次に詰まりそうなのはどこなのか。
仕事の流れ全体を見ることが大切です。
「手が空いている人は手伝って」では判断できない
現場では、
「手が空いたら、忙しいところを手伝って。」
という指示もよくあります。
一見すると、自主的に動ける良い指示に見えます。
でも、
どの状態になったら自分の持ち場を離れていいのか。
何を優先して手伝うのか。
どこまで応援に入るのか。
元の仕事へ戻るタイミングはいつなのか。
そこが決まっていなければ、判断はスタッフ任せになります。
昨日はAさんを手伝った。
今日はBさんを手伝った。
人によって判断も変わる。
その結果、
「誰が今どこを担当しているのか分からない。」
という状態にもなります。
助け合いをなくす必要はありません。
必要なのは、
助けに入る基準を決めること
だと思います。
会社でも同じことが起きています
これは飲食店だけの話ではありません。
例えば、経理が忙しいから総務担当が経理を手伝う。
すると、総務の仕事が止まる。
問い合わせが増えたから営業担当も問い合わせ対応へ入る。
すると、新規営業が止まる。
現場が忙しいから社長が現場へ入る。
すると、商談や採用、経営判断が後回しになる。
目の前の問題は解決しているように見えます。
しかし、
その人を動かしたことで、何の仕事が止まったのか
まで見なければなりません。
人は一人しかいません。
一つの仕事へ時間を使えば、その時間は別の仕事には使えません。
だから、人を動かすということは、
単に「忙しい場所へ人を足すこと」ではありません。
どの仕事を止め、どの仕事を優先するのかを決めること
でもあります。
応援が必要なら、元の仕事まで確認する
誰かを別の仕事へ応援に入れるとき、私は少なくとも、
その人の元の仕事は止めても大丈夫か。
本当にその場所へ人を増やせば処理量が上がるのか。
応援はどこまで続けるのか。
元の持ち場へ戻るタイミングはいつか。
を見る必要があると思っています。
一時的に応援すれば解消する問題なら、それでもいいでしょう。
しかし、毎日のように同じポジションへ応援が必要なら、
それはスタッフの助け合いで解決する問題ではないかもしれません。
人員配置。
役割分担。
作業工程。
仕事量。
そもそもの運用。
構造そのものを見直すサイン
とも考えられます。
助け合える現場と、助け合わないと回らない現場は違います
私は、助け合うことが悪いとは思っていません。
むしろ、困っている人を自然に助けられるチームは素敵だと思います。
ただし、
助け合える現場と、常に誰かが助けないと回らない現場は違います。
毎回誰かが持ち場を離れなければならない。
毎回忙しい人を見つけて応援へ入る。
その結果、別の仕事が止まる。
これが日常になっているなら、
「みんな協力していて良いチームですね。」
だけで終わらせず、
なぜ毎回応援が必要なのか。
どこに仕事が集中しているのか。
配置そのものに無理はないのか。
一度、仕事の流れを見直した方がいいかもしれません。
管理者が見るべきなのは、
誰が一番頑張っているかではありません。
誰が一番大変そうかでもありません。
仕事が、入口から出口まで滞りなく流れているか。
目の前の一人を助けるために、別の仕事を止めていないか。
一つの穴を塞ぐために、別の穴を開けていないか。
人を動かす前に、仕事全体を見る。
私は、それも「仕事を管理する」ということだと考えています。