会社には、数字で見える仕事があります。
営業件数。
契約数。
売上。
利益。
こうした成果は数字で表れるため、評価もしやすく、多くの企業で評価制度に組み込まれています。
一方で、数字には表れにくい仕事もあります。
日程を調整する人。
関係者へ声をかける人。
滞っているところへリマインドする人。
会議を設定する人。
抜け漏れを確認する人。
情報を整理し、必要な人へ届ける人。
トラブルが起きる前に先回りして動く人。
こうした「調整役」の仕事です。
私は長年バックオフィスに携わってきましたが、この仕事は組織を動かすために欠かせない役割だと感じています。
調整役は、気が付く人に集中する
調整役は、役職ではありません。
気が付く人。
責任感が強い人。
相手の立場を考えられる人。
そういう人が自然と引き受けることが多い仕事です。
誰かが返信していないことに気付く。
会議室を予約する。
日程を再調整する。
必要な資料を準備する。
担当者へリマインドする。
一つひとつは小さな仕事です。
しかし、それらが積み重なることで、プロジェクト全体は予定どおり進んでいきます。
評価されるのは、目に見える成果だけ
ところが、この仕事は評価されにくいのです。
売上は誰が作ったか分かります。
契約を取った人も分かります。
でも、
「この案件が予定どおり進んだのは、誰が調整していたからなのか。」
は数字では見えません。
その結果、
誰かがやらなければならない仕事は、気付く人へ集まっていきます。
調整役は仕事だけが増え、評価は変わらない。
気が付く人ほど忙しくなり、気付かない人との仕事量の差だけが広がっていきます。
会社には、評価されない小さな仕事があります
会社の中には、評価項目には載らない小さな仕事があります。
トイレットペーパーを交換する。
コピー用紙を補充する。
給湯室の洗い物をする。
ゴミをまとめる。
応接室を片付ける。
どれも数分で終わる仕事です。
だからこそ、多くの会社では、
「気が付いた人がやる。」
という文化になっています。
もちろん、その考え方自体が悪いわけではありません。
善意で成り立つ場面もあります。しかし、その善意が仕組みの代わりになってしまうと、少しずつ組織は属人化していきます。
いつしか周りは、
「あの人が気付いてくれる。」
「あの人がやってくれる。」
と思うようになります。
そして気付けば、
「あの人が担当」
になってしまうのです。
本人は担当になったつもりはありません。
誰からも依頼されていません。
評価項目にもありません。
それでも、やらなければ誰もやらない。
だから今日も、その人が動きます。
善意に頼る組織は続かない
「○○さんがいるから大丈夫。」
そんな言葉を聞いたことはありませんか。
私は、この言葉が出始めたら少し注意が必要だと思っています。
その人が優秀だから回っているのか。
それとも、その人の善意に組織が依存しているのか。
この違いはとても大きいものです。
もし後者であれば、その人が休暇を取っただけで仕事が止まります。
退職すれば、さらに大きな混乱が起こるでしょう。
問題は、その人ではありません。
調整という仕事が、役割としても評価項目としても設計されていないことなのです。
評価制度は、会社が大切にしたい仕事を示すもの
評価制度は、給与を決めるためだけのものではありません。
会社が「何を大切にしているか」を示すメッセージでもあります。
もし売上だけを評価すれば、人は売上だけを追います。
もし個人成績だけを評価すれば、助け合いは減っていきます。
反対に、
・情報共有ができているか。
・引き継ぎができているか。
・部署間の調整ができているか。
・業務改善を提案しているか。
こうした項目を評価に加えれば、「調整することにも価値がある」という文化が育っていきます。
調整役を「役割」として設計する
私は、調整役は特別な才能ではないと思っています。
会社に必要な仕事なのであれば、
「誰が担当するのか。」
「どこまで担当するのか。」
「どう評価するのか。」
ここまで設計するべきです。
「気が付いた人がやる。」
「優しい人がやる。」
そんな状態では、長く続く組織にはなりません。
見えない仕事にも、価値がある
売上を作る人はもちろん大切です。
しかし、その売上が生まれる環境を整えている人も、同じくらい組織には欠かせない存在です。
私は、構造設計とは「仕事を見える化すること」だと考えています。
見えない仕事を見えるようにする。
役割を明確にする。
そして、その仕事を正しく評価できる仕組みをつくる。
調整役を「気が利く人の善意」で終わらせるのではなく、組織に必要な役割として設計すること。
善意は組織を助けます。
しかし、組織は善意を前提に設計してはいけません。
担当者が変わっても仕事が止まらない組織とは、誰か一人の頑張りではなく、役割と仕組みで支えられている組織です。
見えない仕事を見える仕事に変えることも、組織づくりの大切な仕事なのです。