前任者は、いつまで通常業務を担当するのでしょうか。
退職や異動が決まると、
「最後まで担当をお願いします。」
という言葉をよく耳にします。
もちろん、最後まで責任を持って仕事をすることは大切です。
しかし私は、一つ疑問があります。
前任者は、本当に最終日まで通常業務を担当するべきなのでしょうか。
現場を見ていると、引継ぎ期間中であっても、問い合わせ対応、顧客対応、判断、調整など、多くの業務を最後まで前任者が担当しているケースがあります。
その結果、後任者は横で業務を見る時間はあっても、自ら担当する機会は少なくなります。
そして退職や異動をした翌日から、突然後任者が一人で担当することになります。
私は、この状態では本当の意味での引継ぎにはなりにくいと考えています。
引継ぎ期間は「説明する期間」ではありません
引継ぎというと、
前任者が説明し、
後任者がメモを取る。
そんなイメージを持つ人も多いかもしれません。
もちろん説明は必要です。
しかし、本当に大切なのは、
後任者が実際に担当する期間をつくることです。
実際に問い合わせを受ける。
お客様とやり取りをする。
判断をする。
その中で分からないことを前任者へ確認する。
この流れがあるからこそ、仕事は少しずつ後任者へ移っていきます。
前任者は「担当」から「サポート」へ
私は、引継ぎ期間では役割を段階的に変えていくことが大切だと思っています。
最初は前任者が担当し、後任者が同席する。
次に後任者が担当し、前任者がサポートする。
最後は後任者が一人で対応し、必要な時だけ前任者へ確認する。
この期間があることで、後任者は実際の業務を経験しながら仕事を覚えられます。
一方で、最後まで前任者が担当し続けると、後任者は「見る」ことが中心になります。
実際に担当になってから初めて、
「これはどうすればいいですか。」
という質問が始まります。
最終日まで担当する運用も、一つの考え方です
会社によっては、前任者が最終日まで通常業務を担当する運用を採用していることもあります。
それ自体が間違いだとは思いません。
業務の性質や人員体制によっては、その方が適している場合もあるでしょう。
ただし、その場合でも、退職や異動後の運用まで前任者が担うことはできません。
担当者が変わった後に、
・問い合わせ窓口をどう切り替えるのか。
・後任者をどうフォローするのか。
・社員教育をどう行うのか。
・業務をどう定着させるのか。
これらは会社として取り組むべきことです。
前任者には業務を引き継ぐ役割があります。
一方で、引継ぎ後に組織として運用していく責任は会社にあります。
引継ぎ前に、会社として確認しておきたいこと
担当者の退職や異動は、どの会社でも起こります。
だからこそ、前任者と後任者だけに任せるのではなく、組織として一度確認しておきたいことがあります。
・後任者の選定だけで終わらず、引継ぎの進め方や完了基準まで決まっているか。
・引継ぎ後に運用がうまく回らないことを、前任者個人の責任にしていないか。
・担当者交代後の問い合わせ窓口や連絡先の変更について、会社として周知する仕組みがあるか。
・後任者への教育やフォロー体制が整っているか。
引継ぎは、前任者一人で完結するものではありません。
担当者が変わった後も業務が回り続けるように支えることも、会社として大切な役割だと私は考えています。
私が構造を見る理由
私は、人を責めたいわけではありません。
前任者が仕事を手放せないのも、
後任者が不安になるのも、
会社が引継ぎに苦労するのも、
多くの場合は、引継ぎ期間と、その後の運用設計が曖昧だからです。
だから私は、
いつから後任者が担当するのか。
前任者はいつサポートへ回るのか。
問い合わせ窓口はいつ切り替えるのか。
引継ぎ後は誰が教育し、誰がフォローするのか。
ここまで設計することを大切にしています。
引継ぎとは、業務を説明することではありません。
担当者が変わっても仕事が止まらない状態をつくること。
そして、前任者が安心して役割を終え、後任者が安心して仕事を引き継げる環境を整えること。
それもまた、私が大切にしている「構造設計」の一つです。