時代の価値観を更新するIPが作りたい。
私は、コンテンツやブランドを超えて、時代の価値観そのものに影響を与えられるようなIPを生み出せるマーケターへと成長することを目標としています。
しかし、価値観を更新するIPとは何なのか。
それはどうすれば生まれるのか。
これまでtoC事業に取り組む中で、その問いと自分なりに向き合ってきました。
① 既存価値観に迎合するIPの限界
既に称賛されている価値観に寄り添うコンテンツは、一定の成果を出しやすいと思います。
時流を捉えて波に乗ることや、成功している施策を取り入れることは、特に認知拡大の段階では非常に重要です。
しかし、それだけでは「共感」は生まれても、「更新」は起こりにくいのではないかと感じています。
カルチャーに乗るコンテンツは作れても、カルチャーそのものになるコンテンツは生まれにくい。
・努力は美しい
・成功は素晴らしい
・前向きでいることが正しい
こうした既存の価値観をなぞるだけでは、強い違和感や熱量は生まれにくい。
ヒットはするかもしれない。
しかし、時代を動かす力は弱い。
AIの普及によって表現活動が民主化し、消費者の目がこれまで以上のスピードで肥えていく時代において、単なる模倣や波乗りだけでは、長期的な価値は残りにくいと感じています。
② 隙間の声を拾うこと
価値観が更新される瞬間は、いつも「隙間」から生まれると考えています。
悪しとされてきたもの。
無視されてきた感情。
言語化されていない小さな声。
それらに再定義をかけ、
「それもまた、いいかもね!」と言える状態に昇華する。
再定義とは、肯定の構造化だと思っています。
まだ光の当たっていない感情を拾い上げ、
届く形に翻訳し、構造として提示する。
IPには、それを美しい形で可能にする、そんな力があると思います。
③ M-1アナザーストーリーという再定義
例えば、M-1グランプリ のアナザーストーリー。
あの企画は、「規定通りの人生でなくてもいい。順調な人生でなくてもいい。」
という再定義を、物語として可視化していると感じました。
売れない時代。
不安定な生活。大きな借金。
報われない努力。
社会的には“不安定” ”負け組”と見なされがちな人生を、
「尊い挑戦の物語」として提示する。
それによって、世界が少しずつ、優しくアップデートされていく。
そしてその中で、「フツウになれない」と悩んできた人が、
少しだけ自分を肯定できるようになっていく。
その再定義が、多くの人の自己認識に影響を与えたのではないかと思います。
④ 私自身の実践:美容事業における再定義
私は過去に、「救済」「再定義」「居場所づくり」を軸に、美容領域でのtoC事業に取り組んでいました。
認知チャネルであるTikTokではまず、拡散性の高いコンテンツとして、K-POPアイドルの骨格タイプ予想を投稿しました。
その際、ただの予想ではなく、オタク的な言語で徹底的に「肯定」する構成にしていました。
エンタメに見せながらも、必ず入れていたのが「コンプレックスの再定義」です。
例えば、
- 同じ骨格タイプの人が抱えがちな悩み
- 隠したいと思っている体型特徴
- 市場でミーム化していた「骨ストは詰み」といった価値観への優しい対抗
それらを「だからこそ似合う」「そこが武器になる」と翻訳する構成を徹底しました。
結果、コメント欄には
「救われた」
「ちょっと自分の体を好きになれそう」
「希望が持てた」
といった声が多く寄せられ、今でもその時の嬉しさを覚えています。
単なるバズではなく、救済要素を設計に組み込んだことで、TikTokとLPのみという最小導線でも、ファン化から予約転換までスムーズにつなげることができました。
私自身も当事者として深いコンプレックスを抱えてきたからこそ、表層では拾われにくい「隙間の声」にアクセスできたのだと思います。
裏にある不安や羞恥、劣等感の言語を理解できたことが、最短距離で刺さるコンテンツ設計につながりました。
⑤ 私が目指すIP像
私が目指すのは、
悪しとされてきたものや、
隠されてきた感情に再定義をかけ、
誇れるものへと昇華できるIPです。
コンテンツやブランドでありながらも、そこにとどまらず、
「こう生きてもいいのかもしれない」と思わせる存在。
生きづらさや不安定さを、
競争力や物語へと転換できる構造を持ったIP。
それが、私の目指す方向です。
⑥ 実験×構造への接続
再定義は、思想だけでは成立しません。
どの感情に、どの角度で、どのフォーマットで提示すれば届くのか。
それは、実験と検証の積み重ねでしか磨かれないと考えています。
・どの物語に人は反応するのか
・どの表現が共感を生むのか
・どの構造が継続消費につながるのか
IPは偶然ではなく、
感情理解と実験の反復によって精度を高められるものだと思っています。
再定義を思想で終わらせるのではなく、事業として実装し続けられる人間でありたい。
そのために、挑戦と検証を重ね続けていきたいと考えています。