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分岐点(2020/7/8)

2017年秋。38歳の誕生日。子供を2人産み、下の子の1歳の誕生日が過ぎた。夜間の授乳も卒業した。子供と一心同体の日々から少しずつ脱し、「私」の人生と向き合う時が来た。40歳を目前に、何らかの再スタートを切りたい。そんな想いが生まれた。

何をするか?これまでの私の選択の基準は、「役に立つ」「安定」「無難」。なんとなく、やっておいて損のないもの。

さあこれからはどうする?人生の残り時間も見えてきた。「好きなことをしよう」。それ一択だった。

私の好きなこと。ずっとやりたかったこと。「心理学の勉強」。小学校の保健体育の授業で出会って、強く興味を惹かれた「マズローの欲求段階説」。それ以来、人の心の中の動きを見える化し、悩みの解決や成長へのヒントを与えてくれる心理学への興味が高まっていった。

しかし、中学・高校生当時、「勉強=受験勉強」であった自分には、受験に必要な教科以外の勉強をする、という選択肢が存在しなかった。大学へ行ったら、思いきり好きな勉強をしよう、という気持ちにも至れなかった。まずは大学へ入学することができなければ、何も始まらないと思っていたからだ。そして大学の選び方も、「親の勧め」「将来に役立つ」という理由から、法学部を選んだ。心理学部に行けるものなら行きたかったけれど、競争率が高かったという理由もあり、断念したのだった。

大学では、何事にも積極的な友人に引っ張られて、法学部の授業以外に教職課程を受講。そこで偶然にも心理学を学ぶ機会に恵まれた。これはとてもラッキーな出来事だった。大好きな心理学を勉強し、それが単位になるのだ。しかし、次の節目である就職というイベントを控え、また私の「基準」が登場した。「好きなことや興味のあることは仕事にはできない」、「憧れや理想は能力のある人が叶えるもの」。そんな思い込みがあった自分は、またしても可能性を狭め、偏った就職活動しかできなかった。

本当にやりたかったこと。本当になりたかったもの。多分私にはあったのだ。でも、あっさりと断念してしまった。自分の希望を叶えられるのは、能力の優れた人。それだけの覚悟を持った人。自分にはどちらも不足していると思っていた。

今思えば、当時の私に寄り添って話を聞いてくれる人がいたら、何かが変わっていたかもしれない。きっと当時から、「相談する場所」や「相談できる専門家」の存在はあったのだろうが、自分はつながることができなかった。

長い間、自分を縛ってきた思い込みから解放されたきっかけは、出産だった。それまでは自分の体も、自分の時間も、全て自分のものだった。出産後は、子供中心、子供のために生きる生活。「自分の時間がない」を経験し、初めて自分のために使える時間の貴重さを感じた。この先も続く子育てと並行して、自分の時間も持てるのであれば、「どうしてもやりたいこと」をしようと思った。「やらされ感」で過ごすのは嫌だと思った。好きなこと、興味があること、やっていて苦ではないこと、気付いたらのめり込んでいるもの・・。そのためにまず手を付けたことが、「キャリアコンサルタント」の資格取得だった。

2018年にキャリアコンサルタントの勉強を始め、資格を取得した。2019年は、当時在籍していた企業で、業務の課題発見や改善、社内のコミュニケーションの円滑化に努めた。そこで自分ができることはやり切ったと感じ、ある想いを胸に転職をする。その想いとは、①自分の望む働き方をする、②キャリアコンサルタントとして活動する、の2つである。①については、「仕事も子育てもどちらも大切にして、成長し、相乗効果を生んで会社と家庭に還元する」「そのために余分だと思えることはなるべくカットして、重要なことに注力する」を大きな柱とした働き方である。②については、キャリアコンサルタントとして、組織の一員としてできることもあるが、限界も感じ、独立した存在として人や組織の支援がしたいという思いから、フリーランスになることを思い立った。

39歳にして初めての転職。しかもいきなりフリーランス志望。自分にはハードルが高いと気付き、方針を変更した。段階的実現を目指し、まずは①を叶えることにした。2019年6月、パートとして士業の事務所に再就職した。結論から言うと、1年間の契約期間満了で先日退職した。ここでの経験については、別のストーリーで改めてお伝えしたい。

そして2020年7月現在、昨年秋に40歳になった私はまた分岐点に立っている。一年前に抱いた自分の理想①②は今も持ち続けている。①はコロナの影響で世の中の働き方が大きく変化し、自分も枠組みを変化させる必要に迫られている。

さらに②について。キャリアコンサルタントとして活動していきたいという想いを強めている。この1年間、パート従業員として働いていた事務所で、雇用主と自分との間に立つ人が誰もいない状況で、改めて当事者間での問題解決には第三者の介入が不可欠であると実感した。また、同事務所の顧客である企業の人事担当者と、組織の課題解決のための「作戦会議」を開催したところ、「普段思っていることをざっくばらんに話せる機会が持ててよかった」とのお声をいただき、第三者の組織への介入も求められていると感じている。キャリアコンサルタントの役割に強い可能性を感じるのである。

仕事を探している人は、心から望んでいる仕事に「気付けるように」。働いている人は、安心・納得して働き続けられるように。私は、よりよく生きたい・働きたいと願っている人が、安心して心の錘(おもり)を下ろせる場となって、建設的に未来を描くお手伝いをしたい。

現在、自分は何をしているかというと、「転職活動」と「棚卸し」である。大学生の頃、就職活動に成功したとはいえない自分だが、今もう一度、手探りで就職活動にチャレンジしている。大学生の頃とはだいぶ心境は違う。「なんとかして内定をもらって、社会人にならなくては」という焦りでいっぱいだった大学4年の頃。今は、「会社と自分が相互理解を深め、共に働くことで相乗効果が生まれる就職がしたい」という気持ち。20年前とは違い、「ネット」「スマホ」「SNS」という三大武器に加え、これまで生きてきた軌跡が後押ししてくれている。七夕は昨日だったが、改めて、「良き再スタートが切れますように」という願いを心に刻む。