腸の善玉菌・悪玉菌と老化の関係~藁科充
ある時期まで腸内細菌の領域はブラックボックスのようなもので、あまり研究されてきませんでしたが、最近はどんな細菌が住み付き、健康保持にはどのような細菌群のバランスが良いのか、わかってきました。
腸の中には約100種類、100兆個の細菌が生息し、3種類に大別できます。
酸素がなければ生きられない「好気性菌群」、逆に酸素が有害な「嫌気性菌群」、最近知られるようになったビフィズス菌などの「乳酸菌群」です。
ものが腐るのは細菌が原因ですが、赤ちゃんの便は臭くありません。
赤ちゃんには臭くならない細菌がおり、そのバランスも私たちと異なるのです。
無菌で生まれた赤ちゃんは、その後大腸菌などに続いて、乳児特有のビフィズス菌が出てきます。
この菌が腸内で乳酸と酢酸を作って強い酸性にし、大腸菌など腐敗を起こす菌類を住めなくします。
赤ちゃんの腸内は、ビフィズス菌が95%から99%も占めています。
それが離乳期になると、大人型のビフィズス菌に入れ替わり、大腸菌も増えて便が臭くなってくるのです。
細菌の大半は、毒素を出して病気や老化に関係する悪玉菌ですが、ビフィズス菌に代表される善玉菌が15%ぐらいないと、健康が維持できません。
ビフィズス菌の働きはいろいろありますが、まず体外から侵入する病原菌の感染を防御し、腸内環境を整えて大腸がんや乳がんを予防するとみられています。
抗生物質で病気の治療をしますと、腸内細菌のバランスが崩れますが、その副作用をビフィズス菌が軽くします。
もっと重要なのは、免疫を刺激して高める作用です。
コレステロールを抑えるのにも役立っています。
ところが老年期になると、ビフィズス菌が減って大腸菌やウェルシュ菌といった悪玉菌が増えてきます。
これを私は「腸内細菌の老化現象」と呼んでいます。
おなかが張ったり、便のにおいが強まり、老化やがんを促しかねません。ネズミの実験で一番長命なのは無菌状態で、悪玉菌がいてビフィズス菌のいないネズミが最も短命です。
ビフィズス菌に解毒作用があると思われています。
成人病の多くは食物繊維不足と関係し、これを多くとると善玉菌が増えます。
日本で開発され、特定保健食品に指定されているオリゴ糖のほか、ヨーグルトも効果があります。
私たちは無菌社会に生きることができません。
長生きするには、善玉菌優勢、悪玉菌劣勢を保つことです。
藁科充(ヨガ講師)