採用がうまくいかないとき、「もっと広告費をかけるべきか」「媒体を変えるべきか」という話になりがちです。
ただ、私が最初に確認するのは、広告ではありません。
「この会社は、誰にとって、なぜ働く価値があるのか」
「その価値は、採りたい人に届く言葉になっているか」
です。
今回は、特別養護老人ホームの採用支援で、応募ゼロの状態から、狙い通りの30代前半の介護経験者採用につながった事例をご紹介します。
目次
最初にあったのは、“魅力がない”のではなく“魅力が伝わっていない”状態
この施設では、介護求人フェアへ出展しても、求職者は大手法人のブースへ流れ、足を止めてもらえない状況が続いていました。
自社のWixホームページには、採用専用ページと呼べるものはなく、採用に関する情報も募集要項に近い短いテキストがある程度でした。
Indeedに有料掲載しても、応募は0件。
求人を出していないわけでも、広告費をかけていないわけでもありません。
それでも応募が来ない理由を、求人原稿をすぐ直す前に、施設の採用担当者や現場へのヒアリングから始めました。
ヒアリングで見えた、“経験者ほど驚く他の施設と違う価値”
話を聞く中で、この施設には求人票だけでは伝わらない強みがあると分かりました。
ここで行われていたのは、ただ業務をこなすための介護ではありません。
利用者さまを一人の人として尊重し、できることを奪うのではなく、機能回復を目指して支える「自立支援介護」です。
その考え方を実践できる教育体制があり、人間関係も含めて、職員が介護の仕事にきちんと向き合える環境が整っていました。
給与や勤務条件だけを比べれば、近隣施設と大きな差があるわけではありません。
それでも「ここで働きたい」と遠方から通う職員がいる。
介護経験者で、より良い介護をしたいと考える人には、「そんな施設が本当にあるのか」と思われるほどの価値で仮説は明確でした。
新卒・未経験者へ広く訴求するよりも、介護の現場を知っていて、仕事の意味や職場環境を大切にしたい経験者へ届けた方が、この施設は選ばれる。
先方の希望を否定せず、数字で一緒に答えを出した
一方で、施設側には「新卒・若手を採りたい」という希望がありました。
私は仮説を伝えつつも、「経験者向けに絞るべきです」と一方的には決めませんでした。
限られた予算の中で、若手向けと中途・経験者向けに求人原稿と広告を分け、Indeedで検証しました。
結果は明確でした。
若手向けの広告では応募が生まれない。
一方で、中途・経験者を意識した訴求では反応が出始めました。
さらに、単に「経験者歓迎」と書くのではなく、
・前職の人間関係や職場環境に悩んできた
・介護の仕事が好きだからこそ、良い環境を選びたい
・きちんと利用者さまと向き合える職場で働き直したい
という気持ちに寄り添う形へ、求人原稿を改善していきました。
RPOの仕事は、クリック率を上げることだけではありません。
応募した人が、採用したい人物像と本当に合っているか。
応募理由は何か。面接につながったか。採用できたか。
そこまで見て、次の打ち手へ反映することが必要です。
結果:狙い通りの経験者採用へ
最終的には、前職の介護現場の環境に悩み、より良い職場を探していた30代前半の介護経験者を採用できました。
施設側からも、「狙い通りの人が採れました」と評価をいただきました。
支援期間全体では、Indeed広告費140,653円で2名を採用。採用単価は約70,327円です。
ただ、この事例の成果は「2名採用」だけではありません。
・この施設の価値を、求職者に届く言葉へ整理できた
・採るべき人材像を、感覚ではなく数字と応募者の反応で確認できた
・次回以降も使える求人原稿の訴求軸と、広告運用の判断材料を残せた
これが、継続して採用成果を出すための土台になりました。
この採用で大切にしたこと
・求人票の条件だけでは見えない、現場の価値をヒアリングで掘り起こすこと
・「採りたい人」と「今いる職員が選んだ理由」を重ねて、採用ターゲットを見直すこと
・広告のクリック率だけで満足せず、応募者の質と採用結果まで確認すること
・先方の希望と支援側の仮説を対立させず、テストを通じて最適解を一緒につくること
採用広報は、きれいな求人原稿を書くことだけではありません。
企業の中にすでにある価値を見つけ、それを「ここでなら働きたい」と思う人へ届く形に翻訳する仕事だと思っています。