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広報職人たちが創り出す記者発表会の「舞台裏」。特別潜入レポート(前半)

タレントや芸能人が登壇し、メディアに対してさまざまなPRを行う記者発表会。そんな華やかな場を創り上げる会社がある。目線の先はクライアントの笑顔と視聴者の記憶に残る「1枚の画」。記者発表会のリアルな舞台裏をライターが潜入レポートした。本レポートは、前半と後半に分けてお届けする。

累計参加者が1,000万人を突破、「リアル脱出ゲームの日」制定記念記者発表会

謎解きをとおして、参加者がまるで“物語の登場人物”になったかのような体験ができる「リアル脱出ゲーム」。2007年の初開催以来、現在までに累計1,000万人以上を動員した。日本をはじめ全世界の男女問わずあらゆる世代が参加する、今注目の体験型エンターテイメントである。

「リアル脱出ゲーム」公式サイト
https://realdgame.jp/

そんな「リアル脱出ゲーム」をもっと多くの人に知ってほしいとの思いから、株式会社SCRAPは、初めてリアル脱出ゲームが開催された7月7日を「リアル脱出ゲーム」の日と制定し、2023年7月7日、渋谷のシダックスカルチャーホールで「リアル脱出ゲームの日」制定記念記者発表会(以下記者発表会)が行われた。

この記者発表会の運営を支えるのが「アウル株式会社」。PR事業、イベント・ストリーミング事業、デジタルマーケティング事業を手がけるコミュニケーションのプロフェッショナル集団だ。クライアントの期待値を超える成果をだし、視聴者の印象に残る「1枚の画」を届ける舞台裏は未知の連続だった。

開演前の会場は寒くて熱い

待ち合わせの時刻に会場に到着すると、代表取締役CEOの北村 俊二(きたむら しゅんじ)さんとエグゼクティブオフィスの吉本 仁紀(よしもと ひとき)さんが迎えてくれた。この日は、来春入社の内定者も記者発表会の現場を見学していた。3人の学生たちと一緒に会場のホール内に移動した。

ホールは冷房で冷え切っており、思わず「寒い!」と声が出てしまう。7月の酷暑の中を歩いてきたからなおさらだ。学生の1人は、両腕を搔きよせ背中を丸めていた。

「なぜ、これほど寒くなるまで冷やしておくのかわかります?」すかさず北村さんから質問がとんできた。「照明で室温が上がるからでしょうか…。」幾分トンチンカンに筆者が答えた。「違います。人の体温が理由です。多数の人が着席すると、ホールの室温はすぐに10度位上昇します。だから開演前にガンガンに冷やしておくんです」。 

ステージでは舞台監督(略称:「ぶたかん」、または「ぶかん」)がマイクを手に大声で指示を出していた。舞台監督とはステージディレクターのこと。「手にしているのが通称『がなりマイク』。大声でがなって(怒鳴って)指示を出すマイクなのでそう呼ぶんです」北村さんが業界用語を教えてくれた。イベント現場では、ステージ正面に向かって右側を上手(かみて)、左側を下手(しもて)と呼ぶ。イベントに関わる人は、そのような専門的な言葉も少しずつ覚えていく必要があるそう。

ステージディレクターの指示のもと、黒ジャケットとパンツ姿のスタッフたちがキビキビと動き回っていた。

「スタッフの服装が黒であることにも理由があります。黒子に徹することは当然ですが、白などの明るい色は光を反射します。そんな服装で暗いホールを動き回ったら目立ってしまう。主役はクライアント様とステージの登壇者。それを忘れてはいけません」北村さんはそう話す。

インカム(インターカム)のマイクを口元に寄せて小声で話すスタッフは、リアルタイムで現場の進行をやりとりしている。インカムはトランシーバー型の一方通行の通信機だが、ディレクターはクリカム(クリアーカム)も装着する。クリカムは常時、双方向でタイムラグ無しでコミュニケーションできる高性能な通信機だ。

今回のステージ進行を務めるのは、アウルでイベント・ストリーミング事業の責任者をしている伊集(いじゅ)さん。音響、照明、映像のオペレーションを総括する。髪を留めるカチューシャの様にクリカムを装着した伊集さんが座席の合間を縫いながら、スタッフに次々と指示を出していく。記者発表会を成功させようと、会場はスタッフの熱い思いにあふれていた。

照明で浮かび上がったステージには、格子状にロゴがあしらわれた一松模様のバックパネルがセットされている。記者会見の映像でよくみるパネルには会社名が縦横に並び、どの角度から撮影しても登壇者と会社名が映るように配慮されているのだ。

突然屈む北村さんのモットーは「神は細部に宿る」

テレビ局のクルー達が会場の後方に陣取り、テレビカメラをセットし始めた。テレビカメラの音声は全てキャノンケーブル(音響機器同士を接続するケーブル)から取得する。マイク経由だと音声がハウリングしてしまうためだ。

突然、前を歩く北村さんが屈みこんだ。「何かあったのか?」と見ていると、床に貼られた養生テープを剥がし始めた。コンセントにつながった電源コードを手繰り寄せ、ヘビのように2、3巻のとぐろを巻き始めた。

「コードの上にこうしたバイパスを作っておくことも大切ですが、そもそも、遊びを作っておかないと、誰かが足を引っ掛けたとき、電源コードが抜けてしまう。万が一、音響機器の電源コードが抜けてしまったら、テレビ局のクルーは音声を取れなくなってしまい、準備してきたことがすべて無駄になってしまいます」。

北村さんが現場で常に意識している言葉は「神は細部に宿る」。万が一に備え、念には念を入れて準備をすることだと話す。

──── 後半へ続く

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