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WOVNの使命は「多言語化からの解放」。投資家エイトローズが説く、人口減少の日本でのチャンス

2019年6月に総額14億円の資金調達を行ったWovn Technologies 株式会社(以下「WOVN.io」)。リードインベスターとして迎えたのは、米国大手投資会社Fidelity(フィデリティ)グループの「Eight Roads Ventures Japan」(以下、エイトローズ)です。

WOVN.ioへの投資を決定されたエイトローズの村田さんに、投資家の立場から見た「WOVN.io」というサービスについてお話を伺いました。インタビュアーはWovn Technologies 取締役副社長の上森です。(文中敬称略)


村田 純一さん
Eight Roads Ventures Japan(旧: Fidelity Growth Partners Japan)
プリンシパル ウォルト・ディズニー・ジャパンのマネジメントチームを経て現職。ディズニーではインタラクティブ・メディア部門におけるStrat planningの主担当。Eight Roads Venturesでは、世界有数の資産運用会社のプリンシパル投資(自己勘定投資)部門のメンバーとして、Media、SaaS、IoTの領域をカバー。主にリードインベスターとして11社の投資を担当。複数の会社の社外取締役/ボードオブザーバーを勤める。事業会社での戦略立案、事業開発、ファイナンスの経験を活かし、主としてSeriesB以降のグロースステージの投資に従事。

“世界をよりよく形作る”革新的なグロースステージのベンチャー企業へ投資

上森:早速ですがエイトローズさんについて伺えますか?

村田:私たちエイトローズは、フィデリティという会社のベンチャーキャピタル部門です。フィデリティは年金および投資信託を数百兆円のスケールで運用している、世界で最大規模の資産運用会社の一社になります。ただし、我々がVC部門として運用するのは年金や投資信託の資金ではなく、あくまで社内の自己資金です。つまりエイトローズはフィデリティの自己資金運用部門であり、専門的な用語ではプリンシパルインベストメント部門と言ったりします。

フィデリティグループのユニークな特徴として、自身は株式を公開していないプライベートカンパニーの形態をとっている点をあげられるのではないでしょうか。これぐらい大規模でかつファミリービジネスであり続ける金融機関は世界を見渡しても稀有であり、さらに言えばその社内資金を運用しているベンチャーキャピタルということに関しては、その資金の性質、拠出余力、そのどれをとってみてもかなりユニークな存在です。

我々のミッションとしては、もちろんプロフェッショナルファームとしてリターンを犠牲にするわけではありませんが、単に“儲かればよい”というのではなく、社会にとって意味のある投資、社会課題の解決を意識した投資を心がけていますね。それはLP(Limited Partnership)の要請でもあります。

SaaSは人口減少の日本において大きなチャンス

村田:私たちは海外のベンチャーキャピタルなので、年に複数回、世界中からキャピタリストが集まるミーティングがあり、そこで日本のマクロ環境を説明する機会があります。当然ながら、そこで出てくるマクロ統計に関しては、医療費の増加や人口の減少、労働力不足など、日本がまさに直面している課題があがります。

しかし、視点を変えればそれは大きなチャンスだとも言えるのです。人が減るなら必然的に生産性を上げなくてはいけない。減ることが前提の労働人口で経済を盛り上げるためには生産性の向上が不可欠。その改善の方策として、さまざまなプロセスのデジタイズが一つのアプローチだと考えています。

すなわち、紙や手とエクセルと電話、勘でやっていたものをデジタル化し、次のステップへと押し上げていく。そのカギとなるのがSaaSだと考えており、私の担当先だけでも10社近くのSaaS企業に数十億円を投資しております。もちろん簡単なことばかりではなく、日々ラーニングと悪戦苦闘の日々ですが、おかげさまでご支援先には恵まれており圧倒的な成長を達成している先も担当させていただいております。

上森:人口が減るなら生産性を上げるサービス、GDPをあげるなら新しいビジネスモデルが生まれてくる。そういったところに注目されているんですね。

村田:鋭敏なペイン(痛み)は鋭敏なソリューションを必要とします。そういった意味では先進国特有の課題が先行する日本の動きは、海外からも注目されています。

例えば、中国・インド・欧米の各国は介護システムについて、日本の動向を追っている。日本が抱えている高齢化という課題は、今後彼らも向き合わなくてはならないからです。この課題を日本のスタートアップがどのように解決していくのか。課題感が緊迫であればあるほど、ソリューションとして可能性が出てきます。


WOVN.ioは単なる多言語化ツールではなく、日本の構造自体を作り変える可能性のあるソリューション

上森:WOVN.ioに投資された理由を伺えますか?

村田:投資した理由の1つ目は、このビジネスが“圧倒的なスケーラビリティ(拡張性)”を内包しているという点です。日本が抱える課題感と、それを解決した先に見えてくる世界観、プラットフォームの可能性に対する投資です。

我々はWOVN.ioを単なる多言語化のツールとして捉えていません。日本の社会的な構造問題を解決するソリューションだと捉えています。更に言えば、その大きな課題を解決した後には、プラットフォームになれる可能性がある。つまり圧倒的なスケーラビリティを内包する事業であると感じています。

今後、将来にわたって外国人向けのインターフェイスがオンライン・オフライン問わず整備されていくのは必然であり、半永久的な傾向だと感じてます。人口減少の加速、外国人観光客の増加、労働者としての外国人居住者の増加、この流れはオリンピックを頂点にピークアウトするのではなく、むしろそれ以降より重要性が高まっていきます。それに対して現時点で積極的に準備できているのは、一部のインバウンド関連事業者だけであり、その他大半の事業者様の準備が十分かというと、現状できていない。

現時点で、WOVN.ioが日本の全産業にとってのmust haveのツールかといえば、大半の企業にとってはnice to haveのソリューションでしかない。ただ、先駆者としてデータの蓄積を先行しプロダクトの磨きこみを継続していれば、全企業の課題感が表出してくるタイミングでその解決役としてWOVN.ioは間違いなく頼られるでしょうし、サービスの版図を全産業に一気に広げることができます。明らかにそのシチュエーションはプラットフォーマーになるチャンスです。

ジャパンクオリティはその可能性に比して圧倒的な機会損失が発生している

村田:もう一つ我々が投資に至った理由は、このサービスにより“日本自体の機会損失を極小化できる”ということ、また、その社会的な意義にあります。

日本はいいサービスや商品を提供しているのに、それが海外にちゃんと伝わっているかというと、そうは思えない。今後、ジャパンクオリティで勝負しようとするすべての事業者にとって、WOVN.io導入の有り無しが、多くの「いい」サービスの機会損失の有り無しに直結する、そういうプロダクトになる可能性を秘めていると思います。

余談ですが、それはSaaSそれ自体についても言えることです。日本はSaaS後進国と言われていますがUIなどは他国のサービスと比べても全く劣っていません。車やゲームは世界でも認められていますが、SaaSをはじめとする新しい産業は、クオリティは高いのに伝えきれていない。それは言語の問題であって、サービスの質の問題ではない。だが、言語の問題がクリアできないことで、そのサービスの良さが伝わらないのは圧倒的な機会損失を生んでいると考えています。WOVN.ioはその課題を解決できると信じています。実際に我々の他のご支援先も含め、日本における一流のSaaSの会社がWOVN.ioの導入を検討しています。

WOVN.ioはリソースを提供して終わりではない。翻訳の労力を集約して資産化。

村田:いまさら改めてですが、僕はWOVN.ioという「多言語化サービス」がユニークだと思っているんですね。単に翻訳のリソースだけ提供してるわけではなく、「多言語化」に必要な全てをハックしている。

上森:確かに人口減少・生産性向上でリソース提供が中心のサービスは多いですもんね。

村田:WOVN.ioは「翻訳」を提供しているわけではないのが面白い。既存の翻訳による対訳はFacebookやTwitterのように時間とともに流れてしまいますが、WOVN.io上で翻訳することで、対訳が資産化されWEBごとの辞書ができていくみたいなイメージだと思うんですよね。

例えば「金融業界」「不動産業界」といった具合に、同業種内でWOVN.ioを使うお客さんが増えていけば、その業界の辞書を間接的に作っていける。

同じ翻訳作業をやるでも、WOVN.ioがないと汗と苦労がただ流れていくだけ。WOVN.ioがあることによってその苦労がアセット化していって、レバレッジが効いてくる。

これが積み重なっていくことでWOVN.ioは、インターネットの外国人対応のベストプラクティスになっていくでしょうね。

上森:その為にも、便利に安く早くより良く使えるようにしていかなければいけません。

村田:人の労力をうまく集約化して資産化していくのはとても大事です。例えばGoogleは、今までわからないことを調べる場所として「検索ボックス」を作りました。実際にこの検索ボックスに人々が手入力していくことで、「みんなの疑問」が資産化され、今のGoogleの礎になっているんですよね。


言語はノイズでしかない。本質で評価されなくなってしまう。

村田:世界に伝えていく事の必要性を説きましたが、そのアクションに言語が不要になれば、あとは自社サービスにコミットするだけですよね。

「ローカライズする」を意識しなくていい世界。サービス・プロダクトを作っている会社が言語のことを考えずに、本来の開発に注力できる環境。さながらSuicaを使うことで、電車運賃のための小銭を気にしない、または券売機に並ぶ時間がいらなくなる、といったイメージです。

インターネットによっていい商品やサービスを選べる時代になったのに、いまだに言葉というものが障壁になっています。

日本のレストランが1万店あるとして、言語のフィルターをかけたら数百店しか残らない。それが「日本」の評価になってしまっているのが現状です。

WOVN.ioの使命は「多言語化からの解放」。自社サービスにコミットできる世界へ

村田:世の中は自分の得意なことに集中できるようになるべきなのは、語るまでもありません。多言語化のことを考えないで、自分のサービスの改善・プロダクトの改善に時間を避けるようにする。それがWOVN.ioの使命だと思うんです。とくに日本は、「ローカライズ(多言語化)」が一番苦手な国。日本でローカライズが解決できれば、世界のローカライズ問題も解決できると思います。

上森:多言語化は、各社でもやろうと思えばやれなくはないですが、企業戦略からシステム、翻訳などさまざまな業務を統括しなくてはいけないので、非常に複雑なんです。そして知識も必要。そのなかでもシステム対応を自力で行うことに労力も時間も要します。

村田:そういった課題をマルっと解決するのがWOVN.ioですよね。

多言語化フリーにすることで自社サービスのクオリティを上げる。その高いクオリティを世界にも伝える。WOVN.ioにはいい循環を作って欲しいです。

各社が独自でやってきた多言語化。WOVN.ioに集約してベストプラクティスに

上森:1人あたりの言語サービス利用料ってご存知ですか? アメリカは1人あたり3,000円で、アジアは150円。それに対して日本は2,000円なんです。


村田:日本は高いんですね。

上森:日本は経済大国になるために、世界のマニュアルや学術書をとにかく翻訳して、自国にノウハウを取り込もうとしました。その影響で金額が高いんです。

当時と比べると、今はインターネットが主流になっているので紙媒体の何万倍もの情報量の翻訳ニーズがありますよね。

村田:明治維新の最中、貴族だった岩倉具視がヨーロッパに渡りました。「こっちは馬だけど電車が走ってるよ!おいおい!」ってビックリしたと思うんですよね。それぐらいのカルチャーショックと同じかはわからないけど、今日本は人が減っていき、外国人が入ってきています。そういった意味でWOVN.ioが日本の力になることって山ほどあるよね。WOVN.ioがビックネームと契約が増えているのもその証拠ですよね。

上森:それぞれがオリジナルで多言語化しているのをWOVN.ioがまとめて、「ベストプラクティス」としてプラットフォーム化していきたいです。

村田:WOVN.ioというソリューションが標準化して、日本という国を変えていきましょう。

(インタビュー2019年8月)

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