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『元コインチェックCFOが初めて語る自身のキャリア』仮想通貨交換業から建設ITベンチャーへの挑戦を決めた思いを告白(後編)

前編では、木村氏の経歴をファーストキャリアから経営のトップまで駆け上がった話をお届けした。レジュプレス(※現コインチェック)入社までの華々しい経歴を捨て、後に世間にインパクトを与えたあの事件から、マネックスグループ傘下になるまでのストーリーとユニオンテック入社を決めた核心に迫っていく。


前編はこちら


「危機的な状況の時、逃げずに相対することで会社としても個人としても強くなった」

1時間のインタビュー予定があっという間に過ぎていた。私が入社した2018年4月以降、約40人以上のメンバーが増えた社内の会議室は“利用予約”が必須となり、次の予約者の為に部屋を開けなければならなかった。

「幸夫さん、いろいろお話頂いてありがとうございます。ただ…明け透けに話してくれすぎて全然書ける内容がないです(笑)」

「そうだよね。ごめんね。聞かれたらなんでもお話するから!」

『書けることないじゃんって言ってるのに』と内心思っていたがこの男、なかなかに正直者である。同時に、どこのメディアにも載っていないような話を部下、しかも出会って間もない私にしてくれるとは。

仮想通貨に詳しくはない人でも『仮想通貨流出事件』なら知っているのではないかと思う。筆者自身もユーザーであったということもあるが2018年1月に発生した仮想通貨流出事件、補償総額460億円にものぼるその事件は当時、連日に渡ってメディアを賑わせていた。当時、木村氏も取締役ではないもののCFOという会社の財務責任者として事件後のユーザー保護や補償はもちろん、その後の企業とサービス存続に道筋を付けるため、複数のスポンサー候補との折衝や金融庁対応等に奔走していた。事件発生直後からユーザーやマスコミがオフィス前に集まったり、約1か月間自宅に帰れなかったり、数々あった報道の真偽等話せる範囲で当時の内情について話してくれた。厳しい状況の中でも友人、知人だけではなくユーザーかどうかもわからない人から「頑張ってください、応援しています」とメッセージや差し入れをもらったエピソードが個人的には印象的であった。

「やっぱり働いていた人も相当辞めたんですか?」

事件後にコインチェックの採用サイトを見に行ったこともあり求人が出ていたのを覚えていた。少々気遣いながらも無邪気なトーンで質問をぶつけてみた。

「これは信じてもらえるかわからないけど、事件直後からマネックスグループへのM&Aが決まるまでの2ケ月半、誰一人として辞める人がいなかったんだよ。それどころか、事件後に入社してくれる人も多かった。」

個人の選択において同一の理由はないと前置きしながらも、理由を尋ねるとこのように話してくれた。

「第一には責任感でしょう。ユーザーに対して社会に対して。自分自身も第一にユーザーに対してどうしたらよいかを考えて行動していた。補償はもちろんサービス再開に向けてだったり。会社としては、同業他社が同じような事件に遭わないために果たすべき責任もあったと思う」

「次に、これほどの大きな事件を起こしたので、いつどうやって復活できるかわからないしそもそも復活できないのかもしれないけど、事件までは大きな利益を上げた事実があったので『もし復活できるのであれば、再チャレンジしたい。コインチェックにはその可能性があるし、自分たちでそれを作ってきた』という思いもあったと思う。仮想通貨の将来については取引所に留まらず様々な可能性を考えていた社員も多かったし『それを同業他社ではなくコインチェックで実現したい』という社員も多かったので」

「また、これに近い話だけど、過去に例が無いこんな事件を乗り越えてこそ会社としても個人としても強くなり信用度が増すというのもあったと思う。事件当初は発生原因も侵入経路も被害の拡大可能性も、もちろん会社の存続もわからない危機だった。ただ、そんな危機を社外の方々含め会社が一丸となって乗り越えることができれば、会社としても個人としても(自分のみならず社外の方含め全関係者の)信用度が上がると思っていた。会社としての信用は失墜したが、だからといってそこで逃げ出さず『むしろこんな状況からコインチェックが復活するには生半可な仕事では不可能。だからこそそれを乗り越えて復活できれば強いはず』それを目指して頑張っていた」

「個人個人で理由は違うと思うが、どんな理由にせよ当時の危機的状況下で誰ひとり離脱せずにM&Aという区切りまでたどり着いたことは、同じコインチェックの人間として誇らししく頼もしい仲間だった。危機に逃げずに相対したことで会社としても個人としても強くなったはず」

言われてみればなるほどそうである。たしかに大きな可能性のある事業領域である。そして誰も経験したことのない危機を経験したもののそれをクリアすることは、企業にとっても個人にとっても信用にすらなる。世間から見れば会社や経営者にはネガティブイメージが付く可能性は高いが、見る人が見れば場合によって“強み”になりえるのだと。含み益とは言え自身が巨額の資産を失ったと考えたら文句の一つも言いたくなる気持ちもわかる。私もユーザーのひとりであったため、一部ユーザーにとっては怒りの感情を持ったことだろうし美談にしたいとも考えていないし木村氏自身もそれを望んではいない。あくまでもユニオンテックや、この会社を働く場所の一つとして考えてくれている人たちのために正直に話してくれたということだけは伝えておきたい。

2018年4月上旬に発表されたマネックスによるコインチェックの子会社化発表は先の事件発生から約2か月少々とスピーディな印象を受けた。木村氏はこの間について関係各所とのやり取りを最前線で行っていたとのことであるが、話の内容が内容だけに普段からノミの心臓で有名な私はいかなる軋轢や、批判、誤解に対しての指摘に耐えられる自信がないため気になる方は直接ご本人に会いに来てほしい。

「本当にいろいろとあったよ、事件直後からM&Aが決まるまでの間、本当にたくさん。同じ危機は二度と経験しないだろうけど、危機的な状況下で、様々な人から様々な人間性というものを良くも悪くも学んだし経験もした。」


「けったいなおっさんだよ。きっとお前好きなタイプ」

2時間にも及ぶインタビューで感じた木村氏への印象は、ロジカルかつ合理的に物事を捉え判断する人。しかし同時に自身や、周囲の“温度”に正直な人物でもあるという印象を持った。意思決定までのプロセスはものすごく合理性がある、話もわかりやすい。だが「嫌なものは嫌だ」という素直な言葉や「働くメンバーのため」というキーワードが意思決定の際に多く聞かれたのも事実である。私の出身である関西では『けったいな(人)』という言葉がある。変な人、変わった人といった意味である。社長の韓が木村氏のことを「けったいなおっさんだよ。きっとお前好きなタイプ」とよく評していた。

落ち着いた声で淡々と話をする。だけど自身の我をしっかりと貫き、周囲の人たちの温度を感じることができる、そんな不思議な人間味を感じた。関西圏出身者以外には伝わりづらいかもしれないが“けったいな”という言葉は最高の誉め言葉でもある。


「僕よりも優れた人がいたら僕のことを切ることはできますか?」

インタビューの最後にどうしてユニオンテックを選んでくれたのかと尋ねてみた。

「2つあります。1つは、建設業界の市場規模に対して改善余地が大きいと感じたこと。そして当社が設立以来実際にその業界に身を置いているからこその強みも大きいと思った。もう1つは人だね。入社前に多くの方々と話して優秀なメンバーが揃っていることもわかったし、何よりも創業者の大川さん(代表取締役会長)すごいなって思ったね。一代で100人を超える規模まで成長させた会社なのに、今は社長を韓さんに任せている。もちろん肩書だけでなく本当に全権を委任している。会社の成長や業界の未来のためを考えた結果とはいえ、創業経営者が実際にそれをできることは稀だと思う。しかも40歳で。それまですべての権限を持っていたのに、それを全て他人に渡すって簡単ではないよ」

「会社のすべてを決められる立場なので、言葉を選ばずにいえばいくらでもワンマンになれるし、大川さん曰く『実際にそうだった』らしいしね(笑)ただ、今後ユニオンテックがビジネスの幅を拡げていく上で『自分が社長では会社の成長にキャップがかかる。ここから先は自分より韓さんの方が社長にふさわしい』と韓さんに社長を託した。その判断ができることと実際にやり切っていることがすごい。しかも韓さんとは旧知の間柄だったわけでもなく、人を通じて知り合ってから1年も経たずに実行した。その意味では、もちろん韓さん自体もすごい人なんだよね。実際に一緒に仕事して、自分もそれは毎日感じている」

「会社の限界って、経営者の器と能力の限界とイコールだと思うんですよね。特に創業経営者は強大な権限を持っているがゆえにいくらでもその地位に居続けることができる。ただ、会社が大きくなれば、あるいは大きくしたいと思うのであれば「自分が経営者のままでいいのか」と問い続ける必要がある。経営者といってもすべてが得意な人は本当に稀だから。孫さんとか三木谷さんとか柳井さんとか永守さんとか。普通は、会社が大きくなれば持ち場も得意分野も変わってくる。ゼロイチができるひと、1から100にできるひと、100から1万にできるひと」

これは経営者に限らずほとんどのビジネスマンに言えると思う。でも普通の会社員であればそこで異動だったり昇進があったりがあるけど、経営者であればたとえ自分の得意分野でなかったとしてもその権限によってその地位に居続けることができる。ただ、それって会社の成長と完全に相反することになってしまうよね。本当に会社の成長を考えているのであれば、たとえ創業経営者といえどその地位に留まることの是非を考えるべきだし、それは社長だけでなく創業時や古くからの経営陣とかも同じ。だけど、頭でわかっていてもそれを実行できるか、あるいは本当に気付けるかどうかは別。でもそれをユニオンテックは、大川さんはすでにそれをやっていた」

そして、そういう経緯で社長が代わったり役員が代わったとき、他の社員に変な憶測を呼ばない、誤解を与えないコミュニケーションが普段から取れているか、あるいは文化として根付いているかも重要だと思っている。」

コインチェックでの職を辞することを決めてからの数か月間、数多の経営者と会う中で、全員に尋ねていた言葉があるそうだ。

「昔からの社員や私よりも優れた人がいたら、その社員や私のことを切ることはできますか?そして、創業社長のあなた自身より適任な人がいたら席を譲ることはできますか?」

多くの企業において、高尚なビジョンやミッションがあふれている。ただ、経営者は本当にそれを実現したいのか。経営者や創業者がボトルネックになっていると気づいたとしてもその選択はなかなかできないものである。

「まあ最終的には、大川さんと韓さんが休日にわざわざ私の自宅まで来てくれてオファーレターを渡してくれたことも大きかったかな。『これで断ったら毎週ピンポンダッシュされるかもなあ』って思ったから(笑)。それは冗談として、ありがたかったね」

インタビューはそんな冗談で締め括られた。


「幸夫さんありがとうございました。最後に僕に対して何かありますか?」

「なんかあったっけ?笑」

「何かあるでしょ?」

「いや、特にないな」

「でもあれだね、このオフィスまで来てもらって経営者やメンバーと話してもらったらきっと良さは伝わると思うから、応募とか面談のハードル下げてよ!」

自身に対してのコメントがなかったことへ若干の寂しさと共に胸に去来する『やっぱりけったいな人やな』という思い。新たな“個性”が加わったユニオンテック。応募と面談のハードルは低いので気になる方はお気軽に遊びに来てもらいたい。

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