東明館中学校・高等学校では2022年度から、中高生徒会や生徒有志を中心とした「ルールメイキングプロジェクト」を発足させました。
「ルールメイキング」とは、これまでの校則やルールに対して、生徒が主体となり、先生・保護者などの関係者との対話を重ね、みんなが主体的に関われる学校を作っていく取り組みです。校則を見直したり、変えたりすることを目的にするのではなく、生徒や先生同士で対話を重ね、みんなの納得解を作っていくプロセスを大切にしています。
このプロジェクト自体は認定NPO法人カタリバが2019年から取り組み始め、経済産業省「未来の教室」実証事業として採択されています。東明館は、カタリバのルールメイキングプロジェクトの実践校127校(2022年6月現在)のひとつです。
元々、東明館には校則がありませんでした。初代の校長先生が「本校には、校則が必要な生徒は入学してこないから、校則は必要ない」という方針を打ち出し、東明館に生徒を迎え入れたんです。
ところが、開校から数年が経つと校内に“荒れ”が目立つようになり、様々な取り決めをしなければいけない環境になっていきました。しかし、「校則は必要ない」と打ち出しているので、「ルール」や「守るべきこと」という取り決めが作られていきました。「校則がない」のに生徒たちが「ルール」や「守るべきこと」で縛られている状態になっていきました。
しかも、この「ルール」や「守るべきこと」は、教職員が把握しきれない数にまで膨れあがっています。例えば「夏から冬の制服の移行期間で、合服の時の女子生徒のソックスの色・形状は何ですか?」というルールに対し、きちんと答えられる教職員は数人でした。
実際、私も全てのルールを把握しきれていません。ルールが細かくなりすぎていて、生徒も教職員も把握できなくなっていて、ルール管理が煩雑になっているのです。そもそも、そのルールがなぜできたのかも、教職員も把握しきれていないんです。
そのため、生徒からは「校則がないのに、守るべきルールがあるのはおかしい」「時代に即していないのでは」という声もあがっていました。東明館のルールについては、これまで一度も見直されてこなかったので、もっと時代に合わせたルール作りが必要になっていると感じるようになりました。
そんな中で、世間では髪型や髪色、制服の記述に関して、学校毎に校則やルールに関して生徒に強要する学校側の動きが「ブラック校則」という問題として表面化してきました。こうした動きを見て、東明館にもルールメイキング実勢の機運が高まり、プロジェクトが発足しました。
プロジェクトを通じて生徒たちに学んでほしいこと
東明館ルールメイキングプロジェクトを通じて、生徒たちに学んでほしいことは、大きく2つあります。
1つ目は「民主的な過程における意思決定の在り方」。民主主義を取り入れている日本社会の一員として、意思決定がどのように進められていくのか、生徒たちに主体的に学んでほしいと思っています。
2つ目は「ルールの在り方」。社会に出ると、様々なルールが存在しています。「そのルールはなぜ生まれたんだろう」「どういう背景で制定されたのだろう」と考えることで、ルールの在り方について学んでほしいと思っています。
プロジェクトでは、生徒会や有志の生徒たちが週に1回程度集まり、議論を進めます。まず、学年を関係なく生徒たちをいくつかのグループに分け、校則の疑問点、時代に即してないもの、安全面などを話し合ってもらい、意見を集約しました。
保護者や地域の皆さまの意見を聞く「未来教育対話」
ルールを変えるには生徒総会での多数決が必要になります。プロジェクトでの意見集約を元に、7月の生徒総会に向けて検討するべきルールを3つに絞りました。
1つは「登下校時の靴」。ルールではローファーと定められていますが、「雨の日にはすべって歩きにくい、走りにくい」と言った声があがっていて、運動靴やスニーカーでの登校も可能とするのかを検討します。
2つ目は「制服の移行期間時に着用する制服」。時期によって着用する制服が決められていますが、気温や体調によって柔軟に変更しても良いのではないかという意見もあります。
3つ目は「髪型・髪色」です。髪の色や髪型などのルールも多いのですが、時代に合わせて見直しても良いのではという声も出ています。
この3つを議題にして、生徒総会の前に保護者や地域の皆さまの意見も聞こうと、6月に行われた「未来教育対話」でさらなる意見集約を図りました。
未来教育対話では、中学1年生〜高校3年生がグループを作り、そこに保護者の方や地域の大人も参加。多様性に富むメンバーで半日をかけて「対話」をしました。その後、7月の生徒会では「登下校時の靴の種類の追加」と「制服移行期間の廃止」が承認されました。(下の写真は未来教育対話の様子)