本気で人生を変えたい生徒に挑戦し続ける環境を 未来を生き抜くための持続的な学びを提供していく【探究コース1期生担任・広報部長 山元祐輝】
沖縄県で生まれ、福岡で育ちました。大学卒業後、新卒で東明館に赴任し、途中1年間は別の学校にいて、教員4年目に東明館に戻ってきました。2022年度は高校探究コース1期生の担任と広報部長を務めています。
教師になろうと意識したのは、大学生になってから。私は元々、知らない物事を知ると喜びを得るタイプで、海外旅行に行くようになってから学ぶことの大切さに気付きました。旅行のために下調べをしたり、現地に行って観光したりすると、いろんな発見があって人生を豊かにしてくれるなと思いました。
大学2年生のとき、旅行でフランスのパリにあるルーブル美術館に行きました。ルーブル美術館はとても広いので、きちんと回ると2日ほどかかるのですが、なんとなく面白くないなぁと感じて1時間ほどで出てきました。
後日、写真を見て旅行を振り返ったときに「あんな歴史のある場所に行くのはそうそうあることじゃないのに、もったいないことをしたなぁ」と後悔してしまったんです。現地で実際に見て感じて、学べることがあったなと。この頃から、人生の幅を広げて幸せをつかむための学びを、学校教育を通じて子どもたちに教えられればいいなと思うようになりました。
東明館に来てから意識したのは、生徒がイキイキとして飽きない授業をすることでした。僕は中学と高校の授業に面白みを持てず、時間を無駄にしてしまいました。
先生の話をあまり聞かなくても教科書や資料を読めば大体は把握でき、テストでそこそこ点も取れる。成績をものすごく上げたいという欲もなかったので、いい点数を取ろうという意識もない。授業って何のためにあるんだろうと思う、ちょっとひねくれた生徒でした。
生徒の3割が寝ていた授業にショックを受ける
ところが、いざ自分が先生となって教壇に立つと、教室の3割の生徒が寝ていたんです。私が中学・高校時代にしていたことを教え子がしている。めちゃくちゃショックでしたね。教員になるために学んできた授業スタイルが、僕がなじめなかったスタイルそのものだったんです。
もっと面白い授業ができるようになるために考える日々が始まりました。
教師になって1年目の2学期に、東明館に電子黒板が導入されました。「これだ!」と思った私は早速、パワーポイントでスライドでの授業を提案しました。先輩の先生からは「やりたいようにやったらいいよ」と言っていただいたので、早速授業に導入しました。結果的に授業は面白くなり、授業のテンポも上がっていきました。
ただ、振り返ってみると、教える内容は受験対策で、黒板を使った授業とさほど変わらなかったんです。授業スタイルはいろいろと試させてくれるけど、私自身にきちんと授業をできるスキルが足りないと思いました。ただ、私は当時の東明館に対し、先輩の先生方に相談しづらい雰囲気を勝手に感じていて、なかなか自身のモヤモヤを打ち明けられませんでした。
東明館という環境は好きだけど、このままだと一人前の教師になるのには、すごく時間がかかってしまうかもしれない。そう思った私は志願して別の学校に赴任させてもらうことにしました。
やりたいことを形にするため東明館に帰任
2校目では、これまで以上に授業に取り組みました。いつになるかは分からないけど、いつかは東明館に貢献したいという気持ちはあったので、ガムシャラになって一人前になるための勉強を重ねました。
2校目に赴任して1年目の冬のことです。当時の東明館の校長先生から直接連絡がありました。話を聞くと、「来年度から東明館高校ではICTに力を入れていく。もし、ICTに興味があるなら、東明館に戻ってこないか」というんです。
東明館を出てから1年で戻ってくるのはどうなのか。私は悩みました。でも、ICTを取り入れた教育には元々興味があったし、いつかは戻りたいと思っていた東明館がICT教育を携われるなら、これはチャンスかもしれない。2校目を経験したことである程度は教科の力がついているという実感もありました。後ろ髪を引かれる思いもありましたが、私は東明館に戻ることにしました。
東明館に戻ってきて最初の年は、試行錯誤が続きました。授業のスタイルも面白くなったし、生徒たちの学びに対する理解度も上がっていました。ただ、どうしても詰め込み型というか、先生たちが主導して、それを生徒たちが受け身で学んでしまうことがありました。
翌年度からは、もっと生徒主体で動いて学べる方法はないか模索しました。どうすれば生徒たちが自ら考えて行動して学ぶのか。その手法を探っていきました。
これからの時代に必要と感じた「探究学習」
そんな中、2020年度から東明館に「探究コース」という新しいコースができることになりました。「やりたいことを形にすることができるようになる」を最上位教育目標とし、PBL(課題解決型学習)やTBL(教科横断型学習)をという教育手法を取り入れ、生徒たち自身が課題を見つけ、仲間と協業して解決策を考えたり、新たな価値を創出したりするカリキュラムです。
学校側から「東明館の文化に合う探究コースを1から創りたい先生はいませんか?」とアナウンスがあったとき、私は「これだ!」と思い自ら手を挙げ、探究コースの準備に取りかかりました。
探究コースを担当するにあたり、まず新学習指導要領とその解説部分を全て読み込みました。その結果、分かったのは「主体的で対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)を取り入れた「探究学習」は、これから社会がものすごいスピードで変化していく中で必要な学習だということです。
「未来を生き抜く人を育てるために、自ら問いを見つけて考え、判断して行動する」。これを達成することだけを考えながら、授業の仕組みを作りました。また、仕組み作りのために、キャリアガイダンスや授業に協力してくれる大人を探し、コネクションを作っていきました。
初年度の探究プロジェクトで印象に残っているのは、基山町の町おこしプロジェクトです。TBLとして国語総合、数学Ⅰ、現代社会、デザイン思考、社会と情報などを横断する形でスタートしました。
私も生徒たちも試行錯誤の連続で、時には対話でなく感情を出す言い合いになることもしばしば。それでもなんとか生徒たちは町長へのプレゼンという大きな舞台を乗り越えてくれました。それがあってからは、大きく成長し続けてきました。
1期生が3年生になった2022年の夏休みには、これまでの集大成として「ウガンダプロジェクト」を実施しました。11日間ウガンダに行き、現地の社会課題となっている元子ども兵に関し、社会復帰プロジェクトを行っている認定NPO法人「テラ・ルネッサンス」の皆さんにサポートしていただき、生徒たちが考えた支援プロジェクトを行いました。
驚いたのは生徒たちの自主性です。当初は現地の方にコーディネートなどをお願いしていたのですが、生徒たちが自分たちで考えて動き、現地の人たちとコミュニケーションを図り、自主的に運営していたんです。
別の日には、JICAの方とディスカッションをする機会がありました。終了後、生徒たちは自主的に集まって議論の振り返りをしながら、「私はこう思う」とさらに議論を深めていたんです。入学時から見ている私としては、成長を感じましたね。
本気で人生を変えたい生徒を全力でサポート!
生徒たちには、未来を生き抜くための持続的な学びの実践を続けてほしいと思っています。大学に行っても、社会人になっても続けてもらいたいです。やりたいことが難しいのであれば、誰かを巻き込んで一緒にやっても良い。生涯を懸けて何かに取り組むことはすごく大切だと思います。
やりたいことがコロコロ変わってもいいと思うんです。大切なのは、本当にやりたいことを形にし続けられるかどうかです。それが幸せをつかむことにもつながっていきます。
未知のことや未知のものを知ったときに喜びを感じる人は、ぜひ東明館に来てください。東明館には挑戦できる環境があるし、挑戦し続けられる環境があります。
2022年度から赴任した神野校長も、教育系スタートアップ企業の経営者からの転身です。探究コースが目指す人物像は、起業家のように社会を変えようと挑戦し続ける人、自分で何かを生み出して考え、1人でうまくいかないときは周りを上手に巻き込める人です。
そういう意味では神野校長は身近なモデルケースですし、校長と生徒たちの距離はめちゃくちゃ近いので、生徒たちにはとても大きな刺激になっています。
東明館の生徒が卒業して10年後、20年後の社会を生き抜くための力を身につけて、幸せに生きていく。そんな生徒をたくさん輩出するために、日本の教育を変えるのが僕の夢です。
東明館には様々なものを見たり触れたりできる環境があります。2023年度には総合選択制に移行するので、生徒が主体となって学ぶ環境が整備されていきます。これからも、本気で人生を変えたいと思っている生徒たちに全力で寄り添い、サポートし続けていきます。