正直に言うと、「Tokyo Artisan Intelligence」って、ちょっと後付けっぽい名前に見えると思っています。
でも、この名前、気に入っているんです。
というのも、誰も正式名称では呼んでくれないんですよね。
お客さんもパートナーも、みんな略語TAIの「タイさん、タイさん」って呼んでくれる。
結果的に、「TAI(タイ)」という略称のほうが自然に広がっていて、
それがすごくしっくり来ています。
もともとAIの会社をやるので「AI」という言葉は入れたかった。
正直、最初は少し無理やり感もあったと思います。
でも今は、この名前で良かったと思っています。
漁業のDXから始まった会社です
実は、最初からAIの会社をやろうと思っていたわけではありません。
会社を作る前から、ある企業と共同研究をしていたのですが、
AIの展示会に出展していたときに、養殖業の会社の方から相談を受けました。
「現場で困っている」と。
正直、魚をやるつもりはなかったんです。
でも、最初の応用事例が「養殖場のDX」になりました。
そこから、共同研究していた企業のAI事業を買い取って、
カーブアウトベンチャーとしてTAIを立ち上げました。
やっていることは、ずっと同じ
養殖から始まり、今は鉄道、工場、工事現場、介護・医療など、
対象となる業界は大きく変わりました。
でも、やっていることはずっと同じです。
現場に行くこと。
現場でデータを取ること。
現場で動くシステムを作ること。
養殖場でも、線路でも、工場でも現場で共通しているのは、
「人が足りない」という現実でした。
そしてもう一つ。
現場には、綺麗なデータなんてほとんど存在しない。
だからこそ、
データを取るところから設計して、
ハードウェアも含めて、全部作る。
壊れないコンピュータ。
現場で動き続けるAI。
そういう“現実に効くもの”を作るのが好きなんです。
もちろん、現場にコンピュータを置きますから、色々トラブルが起きます。
その際、現場に走っていって修理し、お客様には謝る。
とても地味で評価されにくいことなのですが、
元々私はそのような地道な作業自体が好きだったこともあり
何年もかけてお客さんと信頼関係を築きながら現場にシステムを一つ一つ導入してもらいました。
振り返ると、気がつけば
「現場で動くAI」という一点で全部つながっていました。
TAIには現場で活躍する技術営業(FAE)チームがいて
彼らと作業着を着てお客さんと一緒に現場に行くことが
とても楽しみな仕事になってます。
なぜ「Tokyo」なのか
拠点は横浜です。
それでも、あえて「Tokyo」と付けました。
理由はシンプルで、
世界から見たときに「Tokyo(=トーキョー、日本人がイメージする東京ではない)」が一番、日本をイメージしやすいからです。
いつか、日本発のAI技術を世界に広げたい。
そのときに、ちゃんと日本の会社だと伝わる名前にしたかった。
拠点として新横浜を選んだのは、
もともとカーブアウト元の会社があったというのもありますが、
半導体や組み込み系の企業が多く、現場で動くシステムを開発するには
技術的な連携がしやすかった地域だったからです。
なぜ「Artisan」なのか
この会社名で一番重要なのは「Artisan」です。
なぜ人工知能 Artificial Intelligence ではなく、
職人気質知能 Artisan Intelligence なのか。
AI、特に機械学習の世界では、
最後はパラメータ調整の“職人芸”で差が出ます。
同じモデルを使っても、
どこまで現場に合わせて詰められるかで、結果はまったく変わる。
そして、私たちがやっている「現場で動くシステム」も同じです。
教科書通りでは動かない。
綺麗な前提条件なんてない。
最後は人が手で仕上げるしかない。
だからこそ、ものづくりとしての“職人性”が重要になります。
もう一つ、日本発の会社としての意味も込めています。
海外から見たときの日本は、
和食や伝統芸能に代表される「職人の国、匠」というイメージがある。
その「職人、匠」と「知能」を掛け合わせたらどうなるか。
Artisan × Intelligence = AI
そう考えて、日本発トーキョーの
「Tokyo Artisan Intelligence」という名前にしました。
ちなみに略称の「TAI(タイ)」は、
創業当初のプロダクトが養殖だったこともあって、
魚の「鯛」とも重なって、覚えてもらいやすくなりました。
会社のロゴは社名略語 TAI(鯛=タイ)にちなんで魚マークなのですが、「AI」の「A」と「i」をモチーフにしたデザインになっています。
現場で使える Intelligence とは?
ここでいうIntelligenceは、
単なるAIモデルのことではありません。
研究者としてAIを実装していた時からずっと、
このまま実際に使えるのか?と違和感がありました。
実際に現場に出てみて分かったのは、
綺麗なデータはほとんど存在しないということでした。
養殖場、鉄道、工場、病院、介護施設。
どこに行っても同じです。
だから、現場で使えるAIを作るには、
データを取得するところから設計しないといけない。
よくあるオープンソースのモデルやデータは、
「動くこと」と「使えること」の間に大きなギャップがあります。
モデルが動くことと、
現場で使えることは、まったく別物です。
私たちが定義するIntelligenceは、
現実の中で機能する知能です。
現場に入り、
活きたデータを扱い、
実際に人手不足という社会課題を解決する。
それが、私の目指す、TAI社の Artisan Intelligence (=AI) です。
確かに、研究室で提供されたデータを使って新しいモノを生み出すこともやりがいがありますが、現場で活用された時の喜びは研究では得られない達成感が得られます。
もちろん、色々問題や課題がありますが、それも現場ならでは。
現場に行く毎に新たな発見があり、毎回勉強になります
最後に
振り返ると、
会社名は後付けのようでいて、実はずっとやってきたことそのものを表していました。
Tokyo
Artisan
Intelligence
現場で、現実問題を解決する知的システムを地道に一つ一つ作る。
これからも、その延長線上で、
日本発の技術を世界に届けていきたいと思っています。
執筆者:代表取締役 社長/CEO・CTO 中原 啓貴