TAIANでは、CI刷新時にサービスコンセプトに「AI for Celebration」を掲げました。これには、AIを活用したプロダクト提供により「祝祭市場」を創出し牽引していくという決意が込められています。実際にTAIANでは、どのようにAIを活用し、開発を行っているのでしょうか。CTOの淀川一生さん、PdMの川平さん、PdMの橋本さんにお話を聞きました。
PROFILE
淀川一生さん 執行役員CTO
東京大学工学部卒。株式会社メルカリやスタートアップスタジオなどで、新規事業を中心に幅広い開発業務を経験後、ソフトバンク株式会社にてAIエンジニアとして物流業界のDXに従事。2020年に株式会社TAIANを共同創業し、CTOとして開発組織立ち上げや事業開発を推進。
橋本さん PdM
大阪大学出身。株式会社リクルートスタッフィングにてITエンジニア派遣の営業を経験後、2021年よりTAIANにジョイン。TAIANでは一人目デザイナーとして0→1フェーズのプロダクトに関わり、体験設計やUI/UXデザインを中心に担当。その後PdMへキャリアチェンジし、現在は業務委託を含む6人のデザインチームをリードしながら、事業とプロダクトの橋渡しをしている。
川平さん PdM
中央大学理工学部卒。株式会社OKIソフトウェアに入社し、ソフトウェア開発に従事。その後、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社に転職し、SEとして幅広く活躍。フリーランスを経てTAIANへ入社。TAIANでは約1年間、フロントエンドエンジニアとしてOiwaiiの開発を担当した後、1人目PdMとしてプロダクト開発を推進している。
TAIANでのAI活用の現在。顧客理解を求める開発組織文化にAIがぴったり
──このインタビューでは、「AI for Celebration」とは何か、それによって何が変化していくのかをお話しいただきます。まず、TAIANでAIがどんな考えに基づいてどう活用されているのかを教えてください。
淀川:私たちが向き合うブライダル業界をはじめとする「祝祭市場」は、ステイクホルダーが多く、かなり複雑です。結婚式や法人宴会を例にとってみても、関わる人の多さやコンテクストの複雑さはご想像の通りです。そして、そのすべての人に満足していただけるプロダクトを開発するには、エンジニアにも深い顧客理解が求められます。
AIの登場により、「実装」そのものはAIがかなり代替できるようになりました。これにより、エンジニアにはその前後の工程のレベルの高さが求められるようになります。例えば、顧客理解、ヒアリング、要件定義、QA、モニタリングなどです。このような状況に、向き合う市場の複雑さと、もともと顧客理解を高いレベルで求めていたことが功を奏しました。おかげで、TAIANではかなり高いレベルでAI活用が進んでいます。
エンジニア、デザイナー全員にClaude Codeなどのアカウントを配布し、AIを使って開発ができる環境を用意しています。また、エンジニア以外にも積極的にAIを活用してもらうことで、AIの使用を前提として生まれた組織に生産性で劣ることがないよう、業務フローの作り方などにこだわりを持っています。
川平:AIの活用に長けている人が勉強会を開いたり、AIを用いて生産性を上げるためのナレッジシェアをSlackで積極的に行う文化もありますよね。AIの活用度合いを可視化できるツールで、エンジニアの中でもどのチームがよりAIを活用して開発をしているかがわかるようになっています。
橋本:デザインでは、デザインシステムをもとにAIがモックアップを簡単につくれる環境が整っています。また、作ったデザインをAIがチェックしてフィードバックを出せるようにもなっています。議論や提案の叩き台のデザインなどは完全にAIが作るようになっていて、デザイナーが手を動かすことはありません。デザイナーにもClaude Codeのアカウントを付与されることで、エンジニアの手を借りなくてもある程度のモックアップが作れることで気持ち的にも余裕が生まれています。
モックアップ、実装、QA。TAIANの開発におけるAI活用
──ここからは、具体的に開発にどのようにAIを活用しているのかを教えてください。例えばどんな活用シーンがありますか。
淀川:AIの現在の特性は、新機能や新しいプロダクトの開発と相性が良いと感じます。例えば、新しいプロダクトを作るためのヒアリングでは、実際に事業者様の前でモックアップを作って動かしてみることで要望の解像度を上げることができます。
橋本:デザイナーにもClaude Codeのアカウントが付与されているため、新機能の構想段階から実装に近い形でプロトタイプを作成し、スピーディーに議論・検証を進められる体制になっています。また、淀川さんのお話にあるような事業者様の前でモックアップを作る時にも、AIによってTAIANらしいデザインが即座に反映されるので、ブランド毀損の心配がないのは心強い点です。
川平:事業者様から機能要望が上がった時に、その機能要望の確からしさを検証するためにも AIを活用しています。DevinというAIツールを使ってコードをサーチやSQLを発行し、該当機能の利用状況などをデータで分析することで、より確度の高い改善判断ができるようになってきました。これまではエンジニアが開発の手を止めてSQLを組んで行う必要があった作業が、PdM自身で気軽にデータを参照できるようになり、意思決定のスピードと質が向上しています。
淀川:QA(品質保証)にもかなり役立っていますね。テストの観点は人が出すけれど、実際のテストはAIが設計して自動化できるようになっている。現在TAIANのQAは社員が1名、業務委託が2名ですが、それでこのプロダクト数のQAを行えているのはすごいことだと思います。QAの人手は足りてはいないのですが、それはあくまで観点を出す人の数ですから。また、フロントエンドDDDという設計思想を取り入れることで、人間がドメインロジック、AIがUIの部分を担当できるようになり生産性の向上に寄与できるようになっています。
「Oiwaii」のチャット、インサイト分析、自動配席機能にはAIが貢献
──ここまでは開発環境におけるAI活用について教えていただきましたが、事業者様が触れる機能にもAIが活用されていますか?
淀川:もちろんです。例えば「Oiwaii(オイワイー)」のチャット、顧客のインサイト分析などはAIの貢献度が高い機能です。単なるチャットやインサイト分析ではなく、TAIANが集めてきた専門的なデータとカップルの状況などの複雑なコンテクストを読み取るのには、ソフトウェアとAIの掛け合わせが活きています。
橋本:これまでのアナログなやりとりでは、これらの文脈・顧客情報や、結婚式ならではの業界慣習がプランナーの方の頭の中にあり、それを使って手動でメールを返していました。TAIANのAIは、過去のやり取りや顧客の状況を踏まえたコンテキストベースの回答案を生成します。これにより、プランナーの方は文章作成に時間を取られることなく、本来向き合うべき「想い」や「提案」に集中できるようになります。
川平:「Oiwaii」に搭載されている、婚礼の披露宴の配席ができる自動配席機能もAIを活用している良い例です。披露宴の配席ルールは、経験がないとなかなかわからないもので、これまではカップルが検索して情報をインプットする必要がありました。配席AI機能により、自動で席を決めた上でカップルがアレンジできるようになっています。単なる席と列席者の情報の掛け合わせだけでなく、配席に関するルールをAIに渡しておくことで、ルールに従った作業を自動で行えるのはAIならではですね。
──AIを活用するにあたって気をつけていることなどはありますか。
淀川:実装に入る前の設計時点で、CS、PdM、ドメインマスターと呼ばれる社内の婚礼業界出身者、デザイナー、エンジニアが集まって設計をすり合わせしきることが重要です。AIを使わずに開発を行っていた時は、少しずつ手を進めながらボトムアップで軌道修正することができましたが、AIによる実装を取り入れてからは最初の時点で全ての設計を詰めておく必要があります。それさえ確実にできれば圧倒的なスピードで実装ができるので、事前設計を大切にしています。
橋本:デザイナーは、なるべく早くデザインを出すようにしています。AIの活用により開発のスピードが上がったことで、デザインにかかる時間が全体の開発スピード向上のボトルネックにならないようにするためです。テキストの指示からAIでUIを作成するFigma Makeを活用するなどして、スピードを意識しています。
「AI for Celebration」で描くTAIANと「祝祭市場」の未来
──今回のインタビューで、TAIANにおけるAI活用のイメージがついてきました。今回のCI刷新に伴い、サービスコンセプトに「AI for Celebration」を掲げています。これによりどんなことを成し遂げたいですか。
川平:私たちがOiwaiiのプロダクト開発で大切にしているプロダクトビジョンは「煩雑な業務をゼロに。もっとワクワクする毎日を。」です。これに掲げたようにAIを活用することで「祝祭市場」に関わる事業者様の業務を効率化し、そのクリエイティビティを高めるお手伝いができたらいいなと思います。例えば、結婚式場のプランナーさんの紙による情報整理や返信作業などがなくなって、その人にしかできない提案を考える時間が増えて、幸せな「祝祭」が増えていったらいいですね。その祝祭の中心にTAIANが存在したら本望です。
淀川:「祝祭市場」をつくる事業者様たちがそのコア価値に集中することで利益構造を変え、利益を増やしてほしいです。例えば、結婚式場のコア価値は、土地と人にしかできないプランニングやサービスです。その他のところをAIが担うことで、本来の仕事に集中し、人間にしかつくれない感動体験をつくっていただけるようにしたい。そのためにAIを活用したTAIANのプロダクトを提供していきたいと思います。
橋本:私は、TAIANのプロダクトとそれに搭載されたAIを事業者様が活用して、その経営にも役立てたいと思っています。適切な経営判断を事業者様ができるようになれば、次の世代にも結婚式をはじめとする「祝祭」は受け継がれていくはず。AIの活用により、働く人の役割の垣根はさらになくなっています。この「AI for Celebration」に共感して、垣根なくTAIANで働きたい人の仲間入りもお待ちしています!
(写真・文:出川 光)