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出版不況、CD不況と言われる時代の新しい"コンテンツ消費"の形を求めて。

シナプス株式会社に入る前

 中高時代にBlogを通じて誰もが情報発信者になれる時代になっていき、そして大学時代にYoutubeやニコニコ動画が普及し優良なコンテンツを手軽に視聴することができるようになっていくのを肌で感じてきました。スマートフォンが普及し、音楽配信や電子書籍配信が始まったのもその頃です。

 インターネットやモバイルの発達によって、テキストも動画も音楽も随分と身近なものとなったように思います。一方で、学校や職場でする「昨日あの番組見た?」といった会話や、CDの貸し借りを通じたコミュニケーションはどんどん減っていきました。テレビ・出版・音楽などのマーケットが縮小に転じるのと同時に、コンテンツを消費する体感覚も失われていったように感じます。

僕はレガシーなコンテンツを愛して止まない人間だったため、就職活動では既存のメディア産業を変え、かつてのような「コンテンツ消費に伴う熱狂」を世に取り戻そうという思いの下、最大手の広告会社やグループに音楽レーベルや映画配給会社を持つグローバルメーカー、日本のメディア産業に関して大きな案件を持っている外資系コンサルティングファーム等を受け、それらの会社の内定をもらいました。

 しかし、やっぱりその場所から何かを変えられる気はせず、僕は「Synapse」というサービスを立ち上げました。ネットテクノロジーは僕の愛した"熱狂"を解体していった憎むべき存在でもありましたが、一方でネットテクノロジーを使って"熱狂"をつくりだすことにも関心がありました。他の企業がネットを用いてコンテンツ消費を「より安価で、手軽なもの」にしていこうとするならば、自分はその逆側に立ってやろうと・・・。

 「Synapse」を立ち上げてからしばらくの後、縁あってドワンゴ創業者の川上量生氏と会う機会がありました。KADOKAWA DWANGOはまさに、新時代のコンテンツ創造に挑戦する会社であり、大いに刺激を受け、同社にて1年半ほど新規事業開発に従事することとなります。ここでは「デジタルコンテンツの配信はどうあるべきか」「Web時代のコミュニケーションはどうあるべきか」を徹底的に考え、今まででの概念にとらわれない新サービスの企画・UXの追求をメインに仕事をしていました。また、そのために必要な各種アライアンスから、ときには番組の企画まで様々な仕事に携わらせて頂きました。

 その経験を活かし、今はSynapseのプロデューサーとして現場に復帰し、再び新たなコンセプト創造に邁進しています。

現在

 Synapseのサービスデザイン(機能やUI等を含めて統合的にUXを設計していくこと)を中心に、徐々にメディアプロデュースに関わる業務割合が増えてきています。

 私論ですが、昨今の競争環境下においてはビジネスモデルやテクノロジーというものは大きな差別化要因になりえなません。そんな時代の新しい戦い方は「"ユーザー体験"で差別化し、コミュニティが持つ"カルチャー"を参入障壁としていく」ことだと考えます。

 僕の仕事はまさにこれを実現・実装すること。リアルかネットかという議論を超え、皆が真に楽しめる新しいコンテンツ消費体験をつくること。また、コンテンツやメディア全体をうまく編集することで、良い空気感をつくっていくこと。

 それは大変むずかしいことですが、真剣に考え始めるとその業務の一つ一つがとても深遠です。Synapseは一事業であることはもちろんのこと、僕にとっては「新時代のコンテンツ消費の在り方を追求し続ける実験場」でもあります。

シナプス株式会社について

 自由に楽しく、それぞれが好きなコンテンツに対して「それをもっと面白く出来ないか」を考えながら働いています。個人的に大切にしている仕事に対する価値観は以下のとおり。

■人より多く働いた分だけ多くの対価を得られる時代ではない  
モノをつくればつくるほど売れる時代は終わりました。かつて、そうであった時代には職務年数と生産性には大きな相関があったと思います。ただし、現代は求められる能力がより多様化・複雑化しています。大変な時代ではありますが、逆に考えれば発想と戦略次第で僕らのような組織が巨艦に挑める時代でもあります。経験値に不安がある方でも、"感性"に自信がある方は是非門を叩いてみてください。

■よく遊び、そこから得られるフィードバックで価値を創る
コンテンツ消費は「パッケージの消費」から「サービスの消費」へとシフトしています。サービス全体として得られる体験を最大化するためには、本やCDを買って消費することはもちろん、クリエイターがソーシャルアカウント等を通じて発信する情報に耳を傾けたり、トークショーやライブに足を運んでその熱狂を肌で感じたり、また同じ趣味を持つ仲間との談義に興じたり...それらを自分で体験してみなくてはいけません。シナプス株式会社では、それを全力で推奨します。

今後どういうことをしていきたいか

 知識・情報を得るためのツールとしてblogやソーシャル要素を絡めたニュースサイト等が台頭した他、リアルの世界でも勉強会ブームがここ数年続いています。かつてアリストテレスが「人間は社会的動物である」と言ったように、人は自己実現を考える中でも他者や社会との関わりの中でそれを達成したいという根源的欲求があるからだと思います。その文脈の中で、Synapseではネット時代における「新時代の私塾」とも言える多くのケースを世に送り出す事に成功してきました。

 そして、「知識・情報」の次は「娯楽」です。コンテンツ消費の原点は劇場や社交場の存在に求めることが出来ますが、今後はコンテンツが本源的に持っている体感覚や熱狂をネット上に再現していきたいと思っています。

 グーテンベルク以降、活版印刷技術によってコンテンツの大量頒布が可能となり、現代では情報革命を機にその流通コストがほぼゼロとなりました。テキスト・音源・動画...etcそれらが持つ情報そのものには価格がつかない時代です。

 しかし、それだけ便利で手軽な時代だからこそ、人々は"熱狂"を求めているはず。その"熱狂"はコンテンツを所有するのではなく共有することでブーストされるものであると思うし、共鳴しあうことで全く新しい体験に生まれ変わっていくはずです。今後はその仕組みづくりとコンテンツプロデュースを両輪で進めていくことができたらと考えています。

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