Synamonの「NEUTRANS」はバーチャル空間内の体験の質、わかりやすいUI・UXといった部分でも評価をいただいていております。その要となるのがデザインチーム。今回はCDO・西口、CGデザイナー・徳永、武藤の3名に話を聞きました。
CG屋にとって、映像でもゲームでもなくVR空間をつくる楽しみとは何なのか?
「NEUTRANS」の設計思想などについても、教えてもらいました。
【話を聞いた人】
取締役 CDO 西口 雅幸(写真左)
アニメ/映像業界で国内トップレベルのフリーランス・モデラーとして10年以上活動。その後、Unityエンジニアに転向。3DCGと技術の2つを融合させ「NEUTRANS」の開発責任を担う。
いつか「NEUTRANS」でつくってみたい世界:仄暗い路地裏
CGデザイナー 徳永 まり奈(写真右)
もともとPVやCMなどの実写合成の映像制作会社に勤め、その後VRで自分が作ったモデルを見れる喜びを知りSynamonにjoin。現在はモデリングだけでなく、UI/UXの部分など幅広く担当。
いつか「NEUTRANS」でつくってみたい世界:森とか温泉とか。趣味に走っていいなら廃墟w
CGデザイナー 武藤 拓海(写真中央)
中学生の時に友人に言われて3DCGに興味を持ち、高校三年生の時の受賞経験から本格的に勉強し始める。3DCGで作りたいものは背景など「世界」。「NEUTRANS」ではシーンの作成を主に手掛ける。
いつか「NEUTRANS」でつくってみたい世界:海沿いの街
CG屋だからこそ「自分のつくった世界に入れる」ことに感動する
デザインチームの皆さんにSynamonの仕事のおもしさを聞くと、真っ先に出てくるのが「自分のつくった世界に入れる」というキーワード。「NEUTRANS」の場合は、シーン(空間全体のこと)をつくることも多いからこそ、この表現につながるのかとも思うのですが正直どんな感覚なのでしょうか?
西口:やっぱり常に嬉しいですね。
徳永:毎回、嬉しいです。
武藤:Synamonに入社して初めて体験したときは、嬉しいより驚きました。
西口:自分のつくった世界に入るだけでなく、自分が手掛けた車とかをバーチャル空間内で目の前で見れるのはすごく嬉しいです。等身大、実寸大で展開できるから、とにかくデカいんですよね!
映像やゲームのように画面越しで見るのもそれはそれでいいですけど、大きなものをつくったときにちゃんとその大きさで見えるのは、VRならではの良さだと思っています。
デカい、等身大、やっぱりこれだと思います。
「もしかしたらココは本当の世界かもしれない」と感じてもいたい…Synamonがフォトリアルを目指す理由
SynamonのCGはフォトリアルも特徴のひとつですが、そもそもなぜフォトリアルなCGを目指すようになったのでしょうか?
西口:目指しているのは、映画『マトリックス』や『レディ・プレイヤー1』で描かれていたような、バーチャル空間内で本当に暮らせる、ずっとそこにいられる…というものなんです。もちろん、フォトリアルでないとそれができないわけではないですが、まずはリアル・現実と区別のつかないレベルまでもっていくのが理想だと考えて設計しています。「実在感」を出したい。
実在感?
西口:「そこにいると思わせる・勘違いさせる」ってことですね。これは本当の世界なのかバーチャルの世界なのか?自分がどっちにいるかのわからない状態にまでもっていけたらおもしろいと思っています。
そのためにフォトリアルなんですね。
西口:そのためには、グラフィックのきれいさもですが説得力が大事。私たちは、ちょっとした違いで違和感を感じて「これは本当の世界じゃない」と思ってしまうんですね。
バーチャル空間内の光や物理法則などの細かい部分にも、現実世界と同じルールを適用していくことで、「NEUTRANS」に入った人たちが「もしかしたらココは本当の世界かもしれない」と感じてもらえるものを目指しています。その後のステップとして、非現実的なもの、現実では不可能なことを足していくアプローチをとりたいですね。
バーチャルなので、アニメみたいな世界もSFみたいな世界も何だってつくることはできます。それはそれでおもしろいですが、まずは現実と同じような空間をつくることで「実在感」や「現実と地続きである」という感覚をもってもらいたいんです。
とはいえ、マシーンのリソースを全てグラフィックのキレイさに割くわけにはいかないので(笑)フォトリアルなものを目指しつつ、リソースとのバランスとを考えてつくっているのが現状ですね。
「NEUTRANS」では会議室をはじめとするオフィス空間や実在する施設をバーチャル空間として再現することもありますよね。特に気をつける部分とかはあるのでしょうか?
西口:すごい細かいところになりますが、床と壁の接合部分で少し出っ張っているところあるじゃないですか?
武藤:幅木ですね。(下の写真の床と壁の接合部分です)
西口:そう、さすが武藤くんw 幅木って、現実では数ミリのちょっとした出っぱりなんですよ。2DCGだと幅木をわかりやすくするために大げさに押し出してつくることもありますが、同じことをVRでやってしまうと、バーチャル空間内で見たときにすごい違和感があります。VRの場合はたった1ミリの厚みが違和感につながったりもするので、VRで「本当にリアルだな」って思うものと2DCG作品として気持ちいいカッコよさというのは別物なんだなと、両方やったことがある立場として改めて感じますね。
1ミリでそんなに変わるんですね!
西口:ちょっとしたところですが、こういう細かなこだわりがリアルにつながるというのはあると思います。僕たちの仕事は100点を目指しても100点のモノはできなくて、150点200点を目指し「そんなところ誰も見ないだろ」っていう部分にもこだわってはじめて100点に近づくんじゃないかと考えているんです。時間とのバランスはありますが、そんなところまでやらなくても…という部分にもこだわることで、見えてくるものもあるかなって思います。
バーチャル空間内にいるとあまりにも自然で気づいていなかったのですが、かなり細かな部分まで考えぬかれているのがよくわかります。実際に制作をするときはどういうステップで進めているんですか?
西口:「まずはリファレンスを集めろ」というのは、僕がめちゃめちゃうるさいくらい言いますねw
個人的な考えですが、本当の意味でゼロから想像で生み出すのはムリだと思っていて、絶対に今まで体験してきた何かから作られているはずなんです。なのでリファレンス、どんなものを参考として集めるかが一番大事だと思ってます。ここが間違っているとよいものにならない。
上の写真は「NEUTRANS」を導入いたいだいてる皆様が利用できる「SeminarRoom」。このシーンも実際のカンファレンスホールやセミナー会場のレファレンスから、バーチャル空間として適した空間へと落とし込んでいます。Synamonの全社MTGは、毎週ここが会場になっているんですよ。
リファレンス探しは量的にどのくらいやってほしいとかありますか?
西口:1種類だけでなく、いろんな種類の資料をみてほしいです。あと背景に関わらず、つくる対象物に関連する前提知識は必要だと思っています。理想でいえば、その分野のプロフェッショナルになれるくらい知識をつけれるといいのですが…さすがにそこまでは難しい。
先ほど幅木の例も出しましたけど、建築物のそういった名称も調べ上げて、リファレンスにあるものについてはライト(電気)のメーカーとかも調べられている方がいいだろうなって。実在しない架空のものをつくるときも、本物を知ったうえで変えていくというか。
なるほど。まず本物を知ることが大事なんですね。
西口:構造物だけでなく、デフォルメされたキャラクターとかも人体構造を完全に知ってからつくべきという考えですね。デフォルメされているからリアルじゃなくていいというわけではなく、あくまでリアルから落とし込んでデフォルメしていく。
「NEUTRANS」のアバターもですか?
西口:そうですね。うちのアバターはものすごくコミカルな表現にしてますけど、頭の大きさ・目の位置、耳の位置とかは基本的な人体構造にあわせているんです。HMD(VR機材)をつけながら自分の頭を触ったときにアバターも同じように頭を触っているようにしたかったので、現実の自分の顔の位置とアバターのパーツの位置がなるべくズレないようにつくっています。頭がすごい大きなアバターとかにしてしまうと、自分は頭を触っているのにアバターだと手が埋まっちゃうんで。そうならないようにしようと、最初から決めてました。
「NEUTRANSのアバターはビジネスシーンで活用しやすいだけでなく表情がコミカル。ずっと使っていると愛着が湧きます↓↓
そうだったんですんね!確かに頭ポリポリしているのとか、アバター越しにも伝わってきますもんね。話変わりますが、実在する施設をつくるときはどうやって?
武藤:徳永さんや西口さんは施設の写真を200-300枚くらい撮ってつくっています。自分も部屋の全体像から隅っこの小さなところまで100枚くらいは撮影して、その画像をもとに見取り図にいろんな数字を書き込んだりしてデータにあげていきますね。直接モデルを触る前にやることが多いと思います。
徳永:現地に訪問させてもらったときに、全部の箇所を測るのてってムリなんですよね。だから、置いてある椅子やテーブルなんかも型番とかをメモって後で調べられるようにしています。ロケハンの数時間でバシャバシャって写真を撮りまくって後で整理する感じです。
西口:制作するうえで気になるポイントを撮っている感じですね。帰ってきて写真撮れてなかったら、もう一回撮りにいったりします。
Biz.Dev.メンバーからロケハンがすごいって話は聞いたことあったのですが、本当に細かい部分まで記録してるんですね。具体的に思い出に残っているシーンはありますか?
徳永:KDDI様でつくらせてもらった「KDDI DIGITAL GATE」はかなりおもしろかったです。実在する施設をつくった初めてのケースだったしこの3人でやりきったので、あらゆるものがつまっている気がします!
西口:そうですね。完璧に同じにするのは難しいですけど「あ、同じだ」って印象をもってもらうために試行錯誤しました。
徳永:KDDI担当者様の押し出したいポイントを聞いたりしながら、どうやってつくるか考えてつくったのですが、完成したバーチャル空間に入ったときに皆さんのテンションがあがっているのも見れたので、すごいおもしろかったですね。
上は東京・虎ノ門にある「KDDI DIGITAL GATE」の実際の写真。この空間をバーチャル空間に再現したのがこちら↓↓ 担当者様からも好評です
CG制作を超えた「体験をつくっている」という感覚がおもしろい
あらためて「NEUTRANS」の特徴やCG屋にとってのSynamonのおもしろさを教えてください。
西口:「NEUTRANS」のCGという意味では、現実感、実在感、リアル…というキーワードかな。背景つくるのが楽しい人には、向いていると思いますよ。あと建築のCGに近いものもあると思います。
徳永:前職が映像系だったこともあって、自社プロダクトって新鮮ですね。最近は、CG屋として誰かの体験をつくるおもしろさをすごい感じています。「自分がおもしろいと思っている体験を誰かに感じてもらう」「誰かがおもしろいと思っているものを、私たちがつくって体験してもらう」ということですね。特にSynamonの場合は、ビジネス用途で日常で使われるための体験。常に継続して使われる体験をつくり続けているというのは、めちゃめちゃおもしろいポイントです。
今まで手掛けてきたもの全てそうだと思うのですが、私たちがつくったシーン(空間)で色々な体験が生まれているんですよね。お客様と直接話しをしていても、バーチャル上でそのシーンに入ってもらうことで、お客様たちが自然に未来のことを語りだすこともあって。そういうのを見ていると体験をつくれているんだなっていう気持ちになります。
武藤:少人数で手掛けていることもあり、お客様からのフィードバックを自分のことだと捉えることができるのもSynamonのいいところだと思います。問題を指摘されれば血の気が引いて大急ぎで直そうとしますし(笑)感謝されたときは達成感が大きいですよね。
徳永:今日みんなで話をしていて再認識したのですが、やっぱり空間を作ることがワクワクしておもしろいと思っているメンバーが集まってますよね。
CGディレクター募集中です!あなたも「自分のつくった世界に入れる感動」を体験してみませんか?
SynamonでのCGデザイナーのお仕事、いかがでしたか?
現在、SynamonではCGディレクターを募集してします。ビジネス向けVRのCGディレクターというと、なかなか想像しづらい部分もあるかもしれませんが、「体験をつくる」「空間をつくる」ことにワクワクしてくれる人と一緒に働きたいと思っております!
あなたも、自分がつくった世界に入れるおもしさを体験してみませんか?
SynamonはXR技術をつかって本気で世の中を変えていきたいと考えています。一緒に未来づくりに挑戦しましょう!
※デザインチームの作っているシーンについては、会社ページにあるポートフォリオもご覧ください。制作背景などを簡単にご紹介しています。
株式会社Synamon's job postings