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映画監督のなり方を考えてみた。


前回紹介した通り、第2回のSTORIESラボは是枝裕和さんの「映画を撮りながら考えたこと」が選定図書です。前回の記事は、こちらから読めます。


『映画を撮りながら考えたこと』

是枝さんといえば昨年のカンヌ国際映画祭で日本人として21年ぶりにパルムドール獲得という快挙を果たし、10月公開の『真実』はベネチア国際映画祭オープニング作品に日本人で初めて選出されました。
今に始まった話ではありませんが世界から高い評価を得ている映画監督の1人であることは誰の目から見ても明らかでしょう。

本書では制作秘話や映画祭の意義、映画業界の構造、やらせと演出の違いなど多岐にわたる話題に対して穏やかでありながら熱のこもった力強い言葉が紡がれていきます。


どうすれば映画監督になれるのか?

そんな本書からテーマを探している中で出てきたのが「どうすれば映画監督になれるのか」という疑問です。撮影所システムが機能していた時代には助監督として下積み経験を経ての監督という分かりやすい道筋がありましたがテクノロジーの発展により映画制作にかかるコストが大幅に削減された結果、誰もが映画を撮れる時代が到来しました。

当然ながら映画監督までの道筋も多様化し、こうすれば映画監督になれるという紋切り型の答えは現代に残されていません。是枝さん自身もあとがきのようなまえがきで語っている通り、テレビ番組のADからキャリアをスタートさせている監督です。

僕が語っている映画言語は、間違いなく映画を母国語とするネイティヴなつくり手のそれとは違って、テレビ訛りのある「ブロークン」な言葉である。育ててもらった恩義も含めて「テレビ人」であることは素直に受け入れられるし、その置かれている状況に責任も感じているから、請われれば発言もする。しかし、映画に対してはどこか遠慮があった。

そんな正解のない状況で、あえて一つの道筋を提示できればと思っております。
ちなみに、ここでの映画監督とは自主映画は含まず人から依頼され対価が伴う監督を指しています。

↑話し合いの最中

出発地点

まずは現役の監督たちがどのように映画監督になったのかを見ていきたいと思います。

①テレビ
前述の通りテレビ出身の是枝監督はテレビマンユニオンに新卒で入社。ドキュメンタリー番組のディレクターを務めた後に宮本輝原作『幻の光』で1995年に長編デビュー。

②CM/MV
長編デビュー作『WE ARE LITTLE ZOMBIES』が一部の地域で公開中(9月9日時点)の長久允監督は電通に入社し営業→プランナーを経験。現在は電通所属の映画監督として活動中。

自主制作
ニコラス・ケイジを主演に迎えたハリウッドデビュー作が控える園子温監督は、自主制作映画『俺は園子温だ!!』『男の花道』の2作品がぴあフィルムフェスティバル(以下、PFF)で高い評価を獲得。のちに同映画祭のスカラシップ制度で製作された「自転車吐息」で商業デビュー。

④監督助手
是枝監督が採用する制度で、俗に言う徒弟制度。

(前略)助監督はアクセル、監督助手はブレーキという役割分担を相互に理解して、良好な関係が保たれているんじゃないかなと思います。たぶん、以前よりは。

と述べられているように撮影を止めることを臆せず監督に意見するのが監督助手の仕事。
蛇イチゴ』でデビューした西川美和監督が是枝監督のお弟子さんとして有名。最近であれば広瀬奈々子監督が監督助手を経て『夜明け』で映画監督としてのキャリアをスタート。


メリットとデメリット
次に上記で挙げたそれぞれのメリット/デメリットに触れていきます。

①テレビ
メリット:
収入が得られる
入口は誰にでも開かれている

デメリット:
下積み期間が必要

②CM/MV

メリット:
収入が得られる
入口は誰にでも開かれている

デメリット:
下積み期間が必要

テレビやCMであれば収入を得られますが下積み期間が必要になってくるため最短で映画監督になりたい人にとっては遠回りに感じるかもしれません。

③自主制作

メリット:
下積み期間が必要ない
上手くいけば一番の近道
入口は誰にでも開かれている

デメリット:
収入を得られない
制作費用など資金の準備が必要

自主制作であれば最短で監督になれる可能性がありますが収入は得られず制作費の準備も必要になってくるので経済面の障壁をいかにクリアするかが重要になってきます。最近ではクラウドファンディングでの資金調達が増えてきている印象です。

④監督助手

メリット:
商業映画の企画開発から携われる
現役の監督から学べる
収入が得られる

デメリット:
狭き門(倍率は約70倍) 

監督助手は、当然ながらかなり恵まれた環境ではあります。しかしながら、高倍率、かつ不定期での募集ということを考えると他の選択肢に比べ運要素が強いと言えるでしょう。


お金を用意でき最短ルートで進みたいのであれば自主作品を作り映画祭への応募が良さそうですし、時間はかかってもいいから収入を得ながら映画以外の業界も知っておきたいということであればテレビやCMから進めばいいのではないでしょうか。

ただ一つ言えることは、どれもありきたりということです。先述の4つの選択肢だけではないにしろ、映画監督を目指す多くの人が一度は思い浮かべる選択肢ではないでしょうか。

現に先ほど例に挙げたPFFであれば1977~2018年までの全40回で応募作品22,383本に対し入選作品が667本。更に入選から劇場デビューした監督が延べ120名超とのことで重複が無いと仮定すると応募者のうち約0.5%のみが突破できる難関だということが理解できます。

戦略は戦いを略すことだと言われるように正面突破ではなく不意に裏門から侵入することで戦いを進めやすくなります。ですので、映画志望の人が少ないというのもそうですが、そもそも人が少ない業界から目指すのがいいと考えています。

                 ↑コンビニワープ自体は大変危険な行為です!

人数の少ない内に結果を出してその業界のトップ立ってしまえばハロー効果が働くので、かなり状況が変わるかと思います。今でこそ世界の北野とも呼ばれる北野武監督ですがデビューから数作は全くお客さんが入らなかったようです。それでも撮り続けられたのは、もちろん質の高さもありますが、お笑い芸人としての揺るがない評価が果たした役割は決して小さくないでしょう。

人の数以外に考えなくてはならないのがその業界と映画との関連性です。極端なことを言ってしまえば、
カバディでトップ選手になっても映画は撮れません。なので、人の数と関連性の2軸で見ていきます。


新たな選択肢

新たな選択肢として紹介するのがブランデッド・ショート(ブランデッドムービー)です。2016年には別所哲也さんが代表を務めるショートショート フィルムフェスティバル&アジア(以下、SSFF & ASIA)でBRANDED SHORTS部門が設けられ近年注目を集めています。ネスレシアターと題してブランデッドムービーの制作をネスレと共に行なっていたりもします。

まずは現時点で790万再生を超える資生堂のブランデッド・ムービーをご覧ください。

SSFF & ASIA2019 BRANDED SHORTS部門 Branded Shorts of the Year ナショナルカテゴリー受賞作品
              『The Party Bus 好きだなんて言えない』

受賞理由からブランデッド・ショートとは何なのかが読み取れます。

「ショートフィルムのお手本とも言うべき、1シチュエーションの中で繰り広げられる、日常の中の非日常を、丁寧かつ高い技術で、シネマチックに美しく描いている点が素晴らしく、資生堂さんのブランドをきちんと感じさせるメイクを活用した、エモーショナルでファンタジックなアニメーションも高く評価されました。」

つまり広告と映画のハイブリッドがブランデッド・ショートであり、ブランドが発信したいメッセージを届けるだけでなく視聴者の心を動かすことも求められます。それは、7つの審査基準という形でも示されています。

①シネマチック
②ストーリーテリング
③エモーショナル
④アイデア
⑤オリジナリティ
⑥シェアラブル
⑦ブランディングパワー

ブランデッド・ショート

SSFF & ASIAへのノミネート数も年を追うごとに増加していますが、2018年度のジャパン部門への応募総数は124作品です。自主作品の応募が出来ないので比較は適切ではないのですがPFFよりも応募数は少なく、2016年に部門が出来たばかりで今後市場が成長することを考慮すれば黎明期と捉えられます。関連性は、審査基準にシネマチックが入っていることからも分かりますが密接に関わっていると言えます。

さらに、出自が作品に与える影響にも考えを巡らせてみると是枝監督で言えばドキュメンタリー出身であることが是枝監督らしさとして作品に表れています。長久監督であれば広告代理店での経験を次のように語っています。

僕は総合小売大手の店頭ビデオを10年ほど、年間100本はつくっていました。店頭ビデオって、興味のない人たちを立ち止まらせて映像を見てもらわないといけないから、超アゲンストな状況で、過酷なんですよ。その経験によって過多な情報を整理する技術、音で注意を引く方法、このテンポ感で常に新鮮なことをすることなどが体に染みついたので、店頭ビデオをつくっていてよかったなと心から思っています。

さらに作品だけではなく、プロモーションに関しても代理店での経験が活きていると語っています。

映画自体は13歳の自分を降臨させながらつくり、制作後は広告のプロとして「売りづらい映画だな~!」と思いながらなんとかする。同一の人間がそこまで携われると、方向性がぶれることがないんです。

出典:長久允監督「ウィーアーリトルゾンビーズ」公開記念トーク~映画と広告は喧嘩もするし仲良くもする~

長久監督の出世作「そうして私たちはプールに金魚を、」を観ればどのように活かされているかが一目瞭然です。

このように出自が作品へ影響を与える可能性は高く、ブランデッド・ショートで考えてみれば短尺でメッセージの伝達とエンターテインメント性が求められるので映画や広告に比べて制約が多くなります。複数の要素を同時に組み込むための思考が求められるので、作品を力任せにではなくスマートに成立させる力が身に付くと考えることもできるのではないでしょうか。また、従来の広告よりもストーリー要素が強い分人の心に届きやすく、映画とは違いYoutubeなどのプラットフォームに投稿できるので拡散されやすいのも特徴の一つです。


最後に

2020年度の募集は既に始まっているので、条件を満たしている方(団体)は応募してみてはいかがでしょうか。本記事で紹介したブランデッド・ショートが何かの参考になれば幸いです。

次回図書は谷口マサトさんの「コンテンツマーケティングの新常識」です。

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