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震災から10年。AIベンチャー社長が語る創業秘話とビジョン

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、国内観測史上最大のマグニチュード9.0を記録。巨大な津波に襲われた東北各県では被災地域が広範囲に及びました。

スペクティ創業のきっかけは、当時会社員だった代表村上の東日本大震災のボランティアでした。

震災発生から10年、代表の村上に当時被災地で感じたことやサービスへの想いなどを語ってもらいました。

東日本震災がなければ、まだ会社員をやっていたかもしれない

当時、米IT企業のシスコシステムズに勤めていたのですが、将来は起業したいという漠然とした思いはありました。

2009年から働きながら大学院(ビジネススクール)に通っていたのですが、SNSによるバーチャルなコミュニケーションとビジネスへのつながりに興味があったので、SNSコミュニティにおける消費者と企業との繋がりをテーマに修士論文を書きました。無事に修士論文を書き終え、卒業を控えた「3.11」、東日本大震災が発生しました。

僕は阪神大震災で被災し、神戸でボランティアをしていた経験があったので、震災発生当時、直感的に絶対に人手になる、すぐにボランティアに行かなければとという思いがよぎりました。ビジネススクールを通じて知り合った仲間を中心にボランティアを募って4月に10名ほどで現地に入りました。

それから毎月ボランティアに行く生活を続けて、有給や当時の会社にあったボランティア休暇も使い果たしてしまいました。未来のために何かしなければという思いが強くなり、最終的に会社を辞めて起業するという選択をしました。

まったく計画的ではなかったと思いますが、あの震災がなければ僕は会社員を続けていたかもしれません。

「何かしないといけない」・・・言葉にならない光景を目の前に強い想いが湧き上がった

▲震災直後の陸前高田市

東北へは車で向かったのですが、福島に入ったあたりから様相が変わってきて目の前の風景が変わっていきました。仙台の街中もひどく、松島は壊滅状態、どこが道路かわからない、信号もついてない。

「本当にここを進んでいいのか?」と何度も思いながら運転していました。

神戸の時の高層ビルが倒れている光景も記憶に鮮明でしたが、津波の被害にあったエリアはまったく神戸のそれとは違い、何もかも流されて無くっているんです。

にぎやかな町であったであろう場所に乾いた泥と瓦礫の平野が続いている…

本当に衝撃的な光景でした。

東京も自粛で様々なイベントが中止になり、外出もできなかった。

震災発生直後は、いまのコロナによる緊急事態宣言時より人がいなかった様に思います。

それでも東京では、あたたかいご飯は食べられるし、家族がそろって寝られる家もある、電気や水道も使える。

東京へ帰る道を運転する度、被災者の方を残して日常に戻る後ろめたい気持ちと、「何かしないといけない」という想いでいっぱいになりました。

被災地で感じた情報格差とSNSの可能性

元々、SNSへの関心はあったんです。

Twitterが日本でサービスを展開して間もない2009年ごろからアカウントを持っていましたし、Facebookもやってました。ビジネススクールの修士論文はSNSに関連したテーマでした。

東日本大震災のボランティアを通して、SNSの可能性を感じたんです。

東松島、石巻、南三陸、気仙沼、陸前高田、大船渡、釜石など1年くらいかけて各地を回ったのですが、強く感じたのはテレビなどで見聞きするニュースはイコール「東北のリアル」ではないということです。

テレビでの情報と、実際の様子や現地の人が話していることはまったく違ったんです。

例を上げると、4月のゴールデンウィークの直前、テレビのニュースで石巻にはボランティアが集まっている、各地から支援物資も届いているという情報が流れていました。

東京でそのニュースを見ていると、東北では支援が十分に届いているように思えました。しかし、実際に現地に入ってみると、すぐ隣の東松島ではボランティアが足りなく、人手不足に悩んでいました。

情報の格差を感じました。

やっぱり東京でテレビを見てるだけだと、正確な現地の情報はわからないんです。

一方でTwitterには、どこで何が足りない、どこでボランティアを募集しているという、現場のリアルな声がたくさんありました。

マスメディアが伝えきれていない現場の「リアル」がSNSにはたくさん上がっている。この情報をうまく整理して伝えられるようになれば、SNSは情報源として役立つと思いました。

2011年11月に会社を立ち上げてから、紆余曲折ありましたが、SNSの情報を適切に届けるサービスを提供することになったんです。

熊本地震をきっかけに、全国の報道機関へ一気に広がった

▲社員総会でビジョンを語る村上

最初はスマートフォンアプリとしてSNS情報をロケーションベースで集約できるサービスを作ったのですが、SNS情報への信憑性や不要な情報の多さなど様々な課題がありました。

2015年頃、SNSに注目していたNHK(日本放送協会)に興味を持っていただき、抱えている課題や想定している活用方法などをヒアリングし、即座に改善するということを地道に繰り返しました。

2016年初めに、元々あった個人向けのスマホアプリ版「Spectee」から大きく方向性を変え、企業向け(主に報道向け)のPC版「Spectee」へリニューアルしました。

顧客のやりたいことをしっかり理解してプロダクトを迅速に改善するというスペクティの文化はこの頃定着した様に思います。

そんな矢先に起こったのが2016年熊本地震です。

地方でまた夜間に発生したということもあり、現場の情報が不足する中、Specteeから発信される情報がニュースの情報源となるケースが多数出てきました。

今でこそ、SNSを情報源にしたニュースがテレビで当たり前のように放送されていますが、当時は「ニュースは記者の足で取ってくるもの」という考えも根強かったこともあり、非常に画期的なことだったんです。

熊本地震をきっかけに各社から問い合わせをいただき、「Spectee」はあっという間に全国の報道機関に広がりました。今では殆どのメディアで活用いただいています。

正確な情報発信へのこだわり

▲SNS情報をチェックする専門チーム

スペクティがもっとも大切にしているのは情報の「正確性」です。

SNSの情報を扱ううえで、創業以来ずっとこだわり続けている部分です。情報にデマや間違いがあっては、現場が混乱しますし、信用されなくなる。

SNSの情報を有用なものとして使っていただくにはこの「正確性」の担保が必要になります。

詳細はお伝えできないのですが、スペクティでは正確な情報のみを届ける仕組みを構築しており、それが多くのお客様からの信頼に繋がっています。

「Spectee」から「Spectee Pro」へ、400以上の組織が導入する防災・危機管理サービスに


2020年3月にこれまで「Spectee」をアップデートした、「Spectee Pro」をリリースしました。これは名称こそ無印から「Pro」を冠したものになったくらいですが、実は内部の構造から大幅に刷新した、まったく新しいものとなっています。

この「Spectee Pro」は、リリースから1年しか経っていませんが、すでに官公庁・地方自治体、交通機関、通信会社、メーカー、物流や商社など、国内400以上の組織で導入いただいています。

最先端の技術を活用し、世界中の危機を可視化していく

この10年中、防災・危機管理に焦点を当ててきました。現在はSNS情報だけでなく、あらゆる技術を活用して、『危機』を可視化していくことを進めています。

たとえば、2019年から固定カメラの映像データを活用した気象変化における道路の路面状態の自動判定の技術開発を進めています。

北海道や東北、日本海側では毎年のように大雪により道路で車がスタックしてまうなどの被害が起きています。これまでのやり方ではどうしても除雪車を出すなどの初動対応が一歩出遅れてしまいます。そのため道路に設置されたカメラからの映像をAIを自動判定することで、より早い対応につなげ、被害を最小限に止めたいと考えています。

その他にも、河川カメラによる水害予測や、衛星画像による被害覚知、ドローンを使った被避難誘導など、防災・危機管理に関する様々な技術開発に取り組んでいます。

多くの技術や英知を結集して、「最先端の情報解析技術で、世界のあらゆる『危機』から人々を守る」というスペクティのミッションを果たしていきたいと思っています。

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