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防災・減災にITを使ってできることとは。災害ボランティアに行ってきました

スペクティ創業のきっかけは、代表・村上の震災ボランティアでの経験でした。情報があふれるいまの時代、スペクティでは災害時こそとくに正しい情報をいち早く伝える必要があると考えています。災害時にテクノロジーをつかってなにができるのか。これは、スペクティが日ごろから取り組む大きな課題です。今回、台風15号の被害を受けた千葉の災害ボランティアに個人で参加したCTO藤田のレポートをお届けします。

エンジニアの藤田です。9月22日(日)に千葉県の館山市に台風15号による災害ボランティアに行ってきました。

館山市での台風の瞬間風速は秒速52メートル。館山市での観測史上最大の風速となり、地域のライフラインに大きなダメージを与えました。台風によるダメージは発災直後の見通しよりも大きく、発災から1週間後も10万弱の世帯が停電、その後も倒木の影響などもあって、復帰作業が難航しており、復旧までにはまだ時間がかかるとのことでした。

ボランティア参加を決めた理由

昨年、「電脳防災コンソーシアム」という、ITの力で防災、減災を実現するための議論の場に参加をさせていただきました。

過去に災害が発生した地方自治体の方々から発災から復旧までのプロセスや問題点などを伺い、その中で、発災直後のダメージもさながら、復旧に時間がかかる場合には副次的な災害の発生への対応も重要であるというお話がありました。今回の千葉で台風被害の復旧に時間が掛かっている状況でそのお話を思い返し、少しでも後災を減らせればとボランティア参加を決めました。

現地ではブルーシートを屋根に張る高所作業のできる職人さんが足りていないというニュースを見ていたので、私が行っても大して役に立たないんじゃないかなとも思ったのですが、災害の現場ではどういうことに困っているのか、防災・減災のために何が必要なのか、自分の目で確かめたいという思いもありました。

どうやって行ったのか

金曜日の晩にボランティアの募集状況を調べてみると、市外からはブルーシート張りの職人の方のみの募集のところも多かったのですが、館山市では市外からのボランティアを募集していたので、翌日はボランティアに必要なものを準備し、日曜日の朝から行くことにしました。

東京駅からの館山までの高速バス「房総なのはな号」が出ているとのことで、前日にバスのチケットを購入しようとバス予約サイトに訪れると、ボランティアの方が殺到しているのか、朝イチ6:30のチケットは売り切れ。8:00の便で館山に向かうことに。当日は8時の便も満席で、キャンセル待ちのお客さんが多数いらっしゃいました。

いつもそのバスを利用されているという方によると、「いつもはこんなに混んでいないからボランティアの方が多いんだろうね」とのことでした。

高速バスは、東京駅からアクアラインで東京湾を渡り、木更津から房総半島の先にある館山市に向かいます。

木更津でも屋根のブルーシートが目立ちましたが、館山市に入ると、ブルーシートで覆われている屋根がかなりの割合となり、多くの柵の支柱が外れ、看板が剥がれ骨組だけになっていたり、ひどいところでは屋根に大きく穴が空いている建物もありました。ビニールハウスの多くはビニールが吹き飛び農作物が荒れた状態で、骨組みが完全に潰れてしまっているものもありました。

館山駅から館山市役所まで10分ほど歩く道程では、屋根が大きく崩落したガソリンスタンドがあり、台風被害のダメージの大きさを目の当たりにしました。

バスが到着したのが10時頃と、少し遅かったこともあり、館山市役所では既にボランティアの方が多く集まっていました。

現地でおこなったこと

ボランティア受付に行くと「ボランティアの方が多く来てくださっていて、タスクのマッチング待ちの方が多く、もしかすると今日中にマッチングができない可能性もあります。南房総市に行ってくださったらマッチングできるかもしれません。職人の方、チェンソーをお持ちの方はこちらに来てください」と、着くや否や現場で困っていることに直面。

マッチングと書かれた紙が貼ってあるテントには多くの人が待機していて、「これは何もできずに帰ることになるかもしれないけれど、それも致し方なしだな」と。南房総市に行く足もないので、とりあえず白色の養生テープに「一般人 フジタ」と名札を書いて胸に貼り、マッチングの列に並びました。

ボランティアを取りまとめている役場や団体の方々も人数はそれほど多くはないので、現状残っているタスクも隅々までは把握できていないでしょう。どのくらいのボランティアが来るかどうかの見通しもあまり把握できていないなか、どのくらいのタスクをリストアップしておけば良いかも判断がなかなか難しいと思います。

ボランティアにタスクを割り振ったとしても安全管理上、完全に手放しで作業を任せるわけにはいかないでしょうから、ある程度の現地までの同行するための人員も必要になるでしょう。運営の方が掛けてくださる言葉からもボランティアに来てくれている人の心意気に応えたいという気持ちがひしひしと伝わってきます。

程なくして、「足腰に自信がある方、50人ほどお願いしたいことがあります」と声がかかります。

「山林地区の方に役所の手が届いていない地域があり、その地域の方々が困っていることがないか、1軒ずつニーズを聞いて周るお仕事になります。簡単にいうと、ボランティアが必要なことがないかを聞いて回るボランティアになりますが、それでもよければお願いします」。

手を上げると、運営の方が50人をカウントし、車を出せる人をリーダーとして、更に4~5人ほどのグループに分かれます。

集合場所の住所が伝えられ、50人のグループが車で移動をし、集合場所で運営の方からタスクと注意点を伝えられます。

「この地域の方は集落での結びつきが強いので外部の方の力に頼りたがらないところがあります。館山市のボランティアセンターからの依頼でお困りのことがないかを伺いに来ましたとお伝え下さい。その場で解決できそうなことはお手伝いしてください。人手が掛かりそうなことは、ニーズ表に内容を書いて、また後でボランティアセンターから手伝いに参りますと。今の所困っていることがないと言う方にも、台風後のご生活がどうだったかお話を伺ってみてください。誰かに苦労したことを聞いてもらうだけでも心が軽くなる方もいらっしゃいます。最後に後でなにか困ったことが出てきたらボランティアセンターに連絡をくださいとビラを渡してください。中には誰の許可でこんなことしているんだと怒る方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、館山市長やこの地域の有力者の方XXXさんからのご依頼で参りましたとお伝え下さい」。

各チーム集合場所から割り振られて車で集落に移動し、大きめの道に車を停めて、歩いて山間のお宅を1軒ずつ回っていきました。

集落で助けあって今はなんとか落ち着いているという方が多かったですが、農家の方は家はなんとかなっているけれど畑がまだ荒れたままだという方が多くいらっしゃいました。

中には、防災放送の音が届かず、2週間も電話も電気も通じない状態で集落で助け合って過ごしていた方々、ご葬儀の途中で停電となってしまい大変だったという方、基礎から剥がれ屋根を飛び越えて家の反対側の畑にベランダが飛んでいってしまった方など、色々とお話を伺いました。

電気が止まって一番困ったことは携帯電話が充電できなかったことらしく、車のエンジンを掛けて携帯の充電をしたりもしたけれど充電には時間もかかるし、とはいえ、外からの情報も入らず家族との連絡も取れなくなることが怖かったとのことでした。

大変な状況にあったのに、うちは何とかなっているからもっと大変な地域の方を助けてあげてくれとおっしゃる方も多く、「ほかの地域にもボランティアのメンバーが回っていますので、遠慮なさらずにお困りのこと何でもお申し付けください」とお話しすると「実は…」と困っていることをお話ししてくださいました。

集合場所に戻ってまた別の地域を何度か聞き取って回ったニーズは、最後は館山市役所に集約して、また翌日からのボランティア活動のタスクに活用されます。

ボランティアを通じて感じたこと

微力ながらもお手伝いができたこと、ボランティア活動における問題点や被災地の方が困っていること、困っていたことを自分の目で耳で確かめられてとても貴重な経験をさせていただけたと思います。

スペクティでは災害などの現地の情報をSNSから収集して自治体や企業に伝えるサービスをおこなっていますが、今回私がボランティアで直面したように、それでもカバーできていない問題は多いです。

網羅的に何が起きているか、どういうことに困っているかのタスク管理とボランティアの方へのマッチングの問題、災害があった各地域内、各地域と行政とのコミュニケーションの問題など、災害の現場では情報の非対称性の問題はまだまだ多いと感じました。

スペクティとしてもこの情報の非対称性の課題を解決できるように取り組んでいきたいと思います。

※記事内に掲載している写真はすべて撮影許可のあるエリアで撮影したものです。
この度の台風15号により被災された皆さまへ、心よりお見舞い申し上げます。

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