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1000兆円「再エネ」市場。20代・30代がリードしていける理由とは

こんにちは、自然電力の渡部です。今回は代表取締役3名に再生可能エネルギーの可能性や、その事業展開にかける想いについて聞いたインタビュー記事をご紹介します。(※2018年6月インタビューの原稿です)

世界のトップ企業が注目する再生可能エネルギー

川戸健司(以下「川戸」) 日本国内で太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーについて、正確に理解している人ってまだまだ少ないと思うんです。世界では今や当たり前に使われているエネルギーなんですが。

日本では2012年7月からFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)が始まって、そこから数年間、太陽光発電がそれまでにない盛り上がりを見せましたが、今やブームが終わったと思っている方も多いのではないでしょうか?

再生可能エネルギーは導入され始めた当初、発電コストが非常にかかる高い電源だと思われていました。それが今では、技術革新と急速な拡大、そして、太陽や風という無限の資源を活用していることから、例えば太陽光発電は海外では原子力、石炭火力などよりも安い電源になってきました。発電そのものにおいては二酸化炭素の排出もなく、脱炭素化への切り札としても期待されています。

長谷川雅也(以下「長谷川」) パリ協定の影響もあり、ここ1~2年で、ビジネス界を中心に再生可能エネルギーを積極的に活用しましょうという動きが本格化しています。企業活動における再生可能エネルギーの導入と活用は、一気に世界的な潮流となった感があります。

川戸 これまで、企業活動や暮らしにおいて「どんな電気を使うか」という発想は私たちの中になかったと思います。それが今は、「どのように作られた電力を使うかを選ぶ時代」になったんです。

世界のトップ企業は、環境負荷が低いというCSR(Corporate Social Responsibility)的な観点だけではなく、コストの削減と安定性というビジネス判断で、「事業稼働に使う電力のすべてを再生可能エネルギーによる電力で賄うことを目指します」と宣言しています。

注目すべきは、グーグル、マイクロソフト、ナイキ、ゴールドマン・サックスなど米企業番付「Fortune 500」の上位に名を連ねるような世界有数の大企業がこの動きの先陣を切っていること。アップルは再生可能エネルギー由来の電力で作った部品しか購入しないと、サプライチェーンの協力会社にも要求しています。まさに今、世界のエネルギー事情は変わり始めています。

再生可能エネルギーは2040年までに世界の電力の60%以上を賄い、市場規模は既存投資額を含めると1000兆円を超えるといわれています。

磯野謙(以下「磯野」) そのような状況なのに、日本での再生可能エネルギーの利用は大規模な水力を除くと、たった7%程度。先進国で最低です。GDP世界3位で、エネルギー消費4位の国の再生可能エネルギーの比率が一番低いのはやはりおかしなことです。

そんな中、日本でも「再生可能エネルギー100%を目指します」という企業が少しずつ出てきています。 近い将来、特にグローバルマーケットで戦っている日本企業は、再生可能エネルギーを使用する方向へシフトする選択を迫られると考えます。

技術力を支える「マスターズ」

川戸 まさに今、再生可能エネルギーは時代の変わり目の、その中心にあります。2011年にこの3人で創業し、気づけば7年が経ちました。今ではクルー(自然電力グループでは会社を大きな船に例え、スタッフのことを「クルー(乗務員)」と呼ぶ)が約200人います。

15か国以上の国の人が働いていますし、その横には僕らがリスペクトと親しみを込めて「マスターズ」と呼んでいる60代以上のベテランもいます。

例えば、大手工事会社で施工・品質管理・コスト管理の担当役員だった方や、大手エンジニアリング会社やゼネコンで海外プロジェクトを多数手がけてこられた方。これまでの日本の産業やエネルギーを第一線で作ってきた、素晴らしい経歴を持つ仲間が自然電力グループの技術力を支えてくれています。

そういうマスターズと20代、30代のクルーがチームを組んで発電所開発、運営を行っています。

長谷川 加えて、大手総合商社のエネルギー事業責任者や海外子会社の社長を歴任されてこられた方や、日本企業の時価総額ランキングの上位に入る企業のCFOをご担当された方など、これまで国内外においてビジネスをけん引されてきた方々が、相談役などの形で応援してくださってます。

事業的にも技術的にも、さまざまな場面で意見交換し、アドバイスをもらっていますが、自然電力がさらなるステージに向かう中で、大変心強いサポートです。

ベンチャーマインドを忘れないために。2つのキーワード

川戸 一方で、仕事のスケールが大きくなっても、ベンチャーらしさを忘れては面白くないという想いがあり、キーワードを2つ決めています。

1つ目は「グローバルかつローカル」。

先ほどもお話ししたように、再生可能エネルギーの技術開発や導入が日本よりも進んでいる欧米や、発展する経済を支える手段として再生可能エネルギーの導入に積極的なアジア・南米など、15カ国以上の人が働いています。そういった多様性から得られる技術や、ノウハウに関する情報量のアドバンテージを生かしています。世界中の再エネをめぐる最新動向の一次ソースにタイムリーに当たれるというところも強みのひとつではないかと思います。

一方で、国内における発電所開発では、各地域(ローカル)に根差した発電所を建設するために、ローカルコミュニティの方々とのコミュニケーションを重視しています。日本国内の法制度や政治情勢といった要因にも正確に、敏感に対応しなくてはなりません。1人ひとりのクルーが、グローバルとローカル双方のノウハウや視点を持ち、プロフェッショナルとしてプロジェクトを進めていきます。

2つ目は「プロフェッショナルかつリラックス」。

仕事におけるさまざまな面でこの軸は生きてきます。働き方で言えば、“世界に通用するプロ”であるべきという使命感。同時に、自分たちの原点でもある「自然を愛する・楽しむ」という気持ちを忘れないようにしています。

例えば、風力発電所の候補地は風が良い場所で、その周辺の海では良い波が生まれます。アウトドア好きなクルーは多いですが、中でも、サーフィンが好きなクルーにとっては、出張のついでにサーフィンをしたり。そういうメリハリのある働き方です。

長期的な視点で自然や地域に還元する仕事を楽しむために、自然や地域そのものを楽しむ。そういうリラックスも大切だと思っています。そうすると、自然や関わっている地域への愛着も生まれますね。私自身は、地方で仕事をした後に、現地の名湯を訪れるのも楽しみのひとつです(笑)。

「1人1カ国のカントリーマネジャー」というスケール感で

長谷川 ベンチャーとしての強みを生かすという面では、業務上の権限をどんどんクルーに委譲して、クルー1人ひとりが自主的に、かつ自立して事業を運営していける状態をつくってきました。

磯野 実際、20代でも数百億規模の事業戦略を任されている者もいます。大手商社でいえば役職がしっかりついてから任されるような業務に、弊社では20代にして挑戦できる。若くてやる気に満ちたクルーにとって、自然電力で働く面白さのひとつはそういったことにあると思います。

もちろん、若手に任せることで、何百億円のプロジェクトが、例えば、地域の方とのひとつのコミュニケーションの掛け違いが発端で合意ができずに頓挫してしまう……といったような、会社にとっての「リスク」はあります。

経験豊かな年長者を担当につけていれば回避できたかもしれない、というようなことですね。ちなみに僕もそういった失敗を前職でやったことがあって。ただ、挑戦した結果として失敗した場合、リカバリーにコストはかかりますが、それは、その人を育て、ひいては会社を成長させていくのに必要なコストだと思っています。

僕の中で持っているイメージは、世界中200カ国にそれぞれ1人の「カントリーマネジャー」を作る、というくらいの人材育成です。200人のクルーがいたら、1人1カ国を担当し、その国のエネルギー問題を解決できるぐらいの人材であってほしいんです。

川戸 この間、ブラジルの事業でインターンを募集したら、ブラジルをはじめとした世界中の大学生、1000人から応募がありました。現在、ブラジルプロジェクトは20代のクルーがリードしているのですが、このインターンシッププロジェクトも、彼がすべて企画し、実施・運営しているんです。

磯野 若いとか若くないとか、年齢と能力とは、直接的な関係はないと思います。仕事ができる人は多分、共通項がある。それは何かというと、“好奇心”や“強い想い”。

仕事に関わった人たちのことをもっと知りたい、そこにある課題に挑みたいと思うかどうか、未来のために自分は何がしたいのか、そういうものを内に持っているかいないかの違いですね。

若い人に信頼がついてくると「希望」になる

長谷川 僕たちも無謀と言われることもありながら、30歳の時に会社を起こして、それでもやってこられたのは、好奇心もありましたし、強い想いがあったからだと思うんです。

当時30歳の僕らが「50年後、100年後の日本のエネルギーとか、世界のエネルギーを変えたい」と言ってやってきて、地域のさまざまな人たちと交渉し、理解や共感を得て、数億単位の資金を集めて発電所をつくっていこうとするんですよ?

そもそも、「発電所をつくる」という事業は、それまでは限られた大企業のみが携わる仕事でした。確かに無謀に見えたかもしれない。でも逆に、若者だからこその応援もたくさんいただいた。

自分たちがそういう経験をしてきていることもあり、これからの未来をつくっていくために、熱い想いを持った20代や30代の人はどんどん前に出ていくべきだと思いますね。

川戸 確か、創業3年目の時でした。当時の僕らからするとまさかの大手総合商社と取引させていただくことになり、その時の先方のリーダーがこれまた熱い人で。「君たちは僕と同じ血が流れている」とおっしゃってくれて、うれしかったです。

磯野 若い時は信頼されるまではハードルが高いけど、一度信頼されると、若さゆえのエネルギー量に魅力を感じていただける。

これまで多くの方々と話し、仕事をご一緒させていただく中で、「若さ」に「信頼」が加わると、それは「希望」になるんだと感じています。

長谷川 創業から間もなく、2013年にはドイツのjuwi(ユーイ)と合弁会社のjuwi自然電力株式会社・juwi自然電力オペレーション株式会社を作りました。juwiのメンバーをはじめ、海外の人と一緒に仕事をし始めて気づいたことは、世界では20代、30代の人たちが再生可能エネルギーの最前線で大きなプロジェクトをバンバンやっているということです。世界でできて、日本でできないということはないでしょう。

川戸 弊社は東京ガスと資本業務提携をしていますが、その交渉を取りまとめた弊社の責任者も、当時20代でした。他にも20代で入社した女性クルーが、2年後にはjuwi自然電力オペレーション株式会社の代表取締役になりました。再生可能エネルギー発電所の運営・メンテナンスを担う、大事な領域の企業の代表です。

磯野 若者の活躍も女性の活躍も、日本の再エネ・ベンチャー界隈においても注目に値する実績だろうと思います。

投資資金は1兆円規模。発電事業をさらに拡大

川戸 今年、自然電力は次なるフェーズに向けて大きな進化をしようとしています。例えば、自然電力の事業の一つに発電所の管理があります。いわゆるアセットマネジメントです。

現状、自然電力では大体500億円規模の発電所を管理していますが、それをより拡大させていこうというプロジェクトを立ち上げています。このプロジェクトの投資資金は数千億から1兆円規模を目指しています。今まさに進めているところで、ここで活躍してくれる仲間を探しています。

このプロジェクトが実現すると約5ギガワット、すなわち発電出力換算で、最新鋭の原子力発電所5基分の電気を太陽光と風力で作ることができます。

総発電出力量にして、約233万世帯分の電力を賄う計算です。

※内訳を太陽光4ギガワット、風力(陸上)1ギガワットとし、日本の1世帯あたりの年間消費電力量(2974kWh、2015年度電気事業連合会調べ)を想定した場合。

長谷川 これまでこういう大きなプロジェクトを手掛けているのは、いわゆる大企業だったんですよ。それが弊社も実績と信頼の積み重ねの結果、中規模の組織で大規模なプロジェクトを運営できるようになりました。

僕らの組織はスリムに構成されているので、コスト競争力を持ちながら、スピード感も保つことで大企業との差別化ができていると考えています。

磯野 「スピード×信用力」という両軸を兼ね備えることが重要だと考えています。企業規模が大きくなってくると信用力は上がるけど、スピードが落ちてしまうことが多い。信用力を持った会社がスピードも保つというのは難しいんです。

僕らはベンチャー企業でありながら、信用力を持つ大企業とチームを組むことで、このような大規模なプロジェクトをスピード感を持って実現させることができていると思います。

川戸 自然電力では、確かに若い人たちにも大きな権限を持って責任を伴った業務にあたってもらっていますが、ただやみくもに仕事だけすればいいとは考えていません。自然に触れ合うことや健康な生活、自分自身の自己実現と、組織の目指す方向が同じところにあってこそ、仕事においても良いパフォーマンスが生まれると思っています。

さまざまな分野が大きく変化している時代にあって、エネルギーも、まさにその一つであり、しかも、中心にあります。世界中のどんな産業もどんな人も、エネルギーなしではその変革を起こせない。まさにインフラであり、インフラにベンチャーが挑むこと自体が革新的です。

このタイミングでエネルギーのフィールドに立ち、その巨大なうねりを経験できることは、僕らがそう実感しているように、これから挑戦しようという誰にとっても、大変幸運で、素晴らしい経験になると信じています。

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