1
/
5

【 本当のエステティック・シエナ物語 第1章:予定のない午後三時 】

良く晴れた平日、午後三時。
私は、白金台プラチナ通りの緩やかな坂を歩いている。
今日は、土日の結婚式関連の黒い服の人たちがいないので歩きやすい。

私は、どちらかというと集団が苦手。
集団特有の、あの仲良しゴッコ。
お互いを詮索し合う会話の連続や、
近づき過ぎず、離れ過ぎもしないよう、
常に距離感を保つためにセンサーを働かせる妙な緊張感が苦手。
だから、時々こうして一人で歩きたくなる。

最近は、ショーウィンドウを眺めていても、心惹かれるものが少ない。
今、自分に必要なのは服・・・ではないと、私の奥で直観が囁く。

もちろん誰しもが抱える仕事や家族の些細なことは私にもある。
でもそれは、あの集団の人たちが四六時中話題にするほど、
本当は問題ではないのだと思う。

私の問題、
しいて言えば、40歳を過ぎ、少し身体の動きが減ったかな。
例えば今、私の前方20メートル、
歩行者用信号機が点滅し始めたけれど、若い時は何も考えず走って渡った。
でも今、こうして頭の中で何かがグルグルと回り、足を止め、
次の青信号を待つようになった。

大人になったから? それとも老化?
私を含め、誰もが、
特に不幸とも、幸せとも、言い切れない地点で、
信号待ちをしているのかもしれない・・・。

信号は青になったけれど、私は予定のない午後三時。
人生の交差点で、向かう方向がはっきりしないまま、歩き出せずにいる・・・。