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Con-Techスタートアップがまとめた、“日本一わかりやすい建設業界まとめ”<後編>

 さて前編を読んで建設業界の基礎知識はバッチリというみなさんに、後編では建設業界の問題点や今後の動向についてお話しします。

※前編はこちら<https://www.wantedly.com/companies/shelfy/post_articles/121465

②建設業界の問題点

 建設業界の問題点は私が一番深く調べたところかつ、考えさせられた分野です。少し重たい内容になりますが、今回は大きな二つの問題から建設業界の問題点を深掘っていきます。

(重い内容がゆえに読みやすさをかなり意識して書きました…)

〜深刻な人手不足〜

 まずは人手不足の問題。人手不足に陥っている業界は他にもたくさんありますが、建設業界はかなり深刻です。

<建設業就業者数の推移>

 建設業就業者数は1997年をピークに年々減少し続け、2010年以降はほぼ横ばいとなっています。加えて従業員の高齢化も進んでおり、33.9%は55歳以上。それに対して29歳以下の就業者はわずか11.4%と、入職者が少ないことを意味します。

 全産業で見てみると、50歳以上の従業員の割合は28.6%、29歳以下の就業者は31%になっています。建設業界シビアすぎる…。

 また建設業就業者は大卒の3年以内離職率は30.5%と全産業の中でも上位にランクインし、高卒の離職率47.7%と平均値を大幅に超え、5位になっています。このまま行けば建設業界は将来、さらに深刻な人手不足に陥いるとみられています。このような状況になっているのは主に3つの原因があります。

⑴賃金の低さ

 先ほど説明した多重下請け構造により、建設業界の所得格差は非常に大きくなっています。元請けとなる大手ゼネコンなどの平均年収は800〜1000万円と他の業界と比較しても高めですが、現場で直接働く作業員の平均年収は420万円程度です。

 また過去5年間で資材費が35%アップしているという話もあります。そのため利益率が低下し、人件費に回すお金が減少しているのも低賃金に繋がっています。(35%は恐ろしい…。消費税が8%に上がったことなんてちっぽけに見えちゃいますね…。)

⑵労働時間の長さ

 建設業界で月に30時間以上残業している人の割合は26.7%(トップの運輸・運送業は37.7%)で第9位係長以上の管理職層だと54.2%で、順位が入れ替わり第1位となります。現場監督は月100時間以上の残業が当たり前となっているようです。
 彼らは現場の作業を終えた後に必要書類作成を行うため残業時間がさらに長くなるのです。建設業界のIT化は他の業界よりも遅れていて、情報交換を口頭やFAXで行うために、事務作業などに時間膨大な時間がかかっていると言われています。

 労働基準法では、1日8時間/週40時間を超える労働は禁止されています。加えて労働基準法36条に基づいて結ばれる協定、通称サブロク協定が使用者と雇用者間で結ばれれば月45時間年360時間までの残業は認められています。しかし建設業界はこのサブロク協定の適用外なのです。これは繁忙期・閑散期で労働時間に大きな差があることや、天候によって作業の進捗状況が左右されるためです。

また完全週休二日制もまだ実現されていないのが現状です。

週休二日制の導入が遅れている理由は2つ考えられます。

 一つは、現場で働く人は日給制の人が多く、勤務日数を減らすと彼らの手取りが少なくなるからです。もう一つは、週休二日制を取り入れると工期が延び、工費が上がってしまうのを発注者が良しとしないからです。

⑶保険加入企業の割合の低さ

 公共事業労務費調査における保険加入状況を見ると、全体的に加入状況は上昇傾向にありますが、地方より関東が、元請け企業より高次下請け企業が加入率の低い傾向にあります。危険を伴う仕事が多い業界にも関わらず、保険に入っていない人が多いのが現状です。これは保険料が高額であること、誰がどの保険に入っているのか管理するシステムが整っていないことが主な原因です。

〜建設需要がなくなる〜

 そして建設業界が抱える問題をあげるなら建設需要の減少の話も欠かせません。

「2018年問題/2020年問題」

 2017年までの日本は不動産バブルと言われ、需要が供給に勝る状況が続いていましたが、2018年はこの需要と供給のバランスが逆転すると言われています。他にも2018年には大きな変化があります。まずは安倍総理と日銀・黒田総裁の任期満了。今後も金融緩和政策が行われるかわからないということです。そして少子化の加速による世帯数の減少。今後住宅建築の需要は増えることなく、下降の一途を辿ると言われています。

 そして2020年以降は東京オリンピック後の雇用の減少海外の投資家の日本撤退と、さらに問題が増えるのです。

 それでは今後の建設業界の活路はどこなのかというと、「海外」です。

<海外売上比率の変遷>

 海外売上比率の変遷を見ると、海外には総売上のほとんどが海外売上高である企業も存在します。日本はゼネコンを筆頭に1990年代に比べて少しずつ比率はアップしていますが、世界と比べるとまだまだ低い状況です。これはかつて国内に大きな需要があったことや、一時的な海外展開しか行われてこなかったことが原因です。

 今後長期的な海外展開を行うにあたって、為替の問題他国との競争などいくつかの課題がありますが、一番の課題は商習慣の違いです。

 日本の商習慣は”性善説”に基づいており、契約を事細かに交わさずに、話し合いと信頼で仕事を進める傾向にあります。一方海外は”性悪説”の考えで、論理的な交渉戦術に基づいて契約内容をみっちり決めていきます。曖昧さを残しておくとそこを突かれて大きな損をする可能性があります。そのため海外進出をする際には想定されるトラブルや損失は、できる限り契約書の中でリスクヘッジしておくことが重要です。

 やはり島国である日本は海外との文化の差が特に激しいですよね…。独自の文化や価値観は魅力であり弱点でもあるということを身にしみて感じます。

③最近の動向

 ②で挙げた建設業界の問題点を受け、現在日本の建設関連企業や国はどのような対策をとっているのでしょうか。

⑴保険加入の義務化

 保険加入率の低さを受けて、国土交通省は「平成24〜29年の5年で法人や個人業者で従業員が5人以上いる業者の社会保険の強制加入を徹底する」としています。平成29年度以降は、保険未加入企業は下請け企業に選定しない、未加入者は現場入場を認めないといった措置をとる方針です。制度を整え入職者を増やそうという狙いです。

 しかし加入しても10社に1社が社会保険料を滞納しているという現状があります。強制的に加入させても加入後の問題も深刻であるため、保険料の引き下げなどの新たな対策を講じる必要がありそうです。

⑵IT化

 高齢化・人手不足の建設業界にを魅力的な業界に変えるには建設業界のIT化は不可欠です。情報を整理し、管理することができるので業者間のトラブル減少にも役立ちます。

国は「i-Construction」というプロジェクトで、AIやドローンなど新しいテクノロジーを使った「ICT土木」を提唱しています。そのためスーパーゼネコンなどはAIの研究に力を入れており、実用化に向けて開発を進めています。

 <国が行なっているIT化>

 国が行なっている建設業界のIT化で代表的なものは「建設キャリアアップシステム」です。

 これは国土交通省が提唱した「技能者に配布するICカードを通じて技能者の現場における就業履歴や保有資格などを統一のルールでシステムに蓄積する」システムで、技能者の基本情報や社会保険加入状況、保有資格、就業履歴、事業者情報が登録されます。

 このシステムの導入によって現場管理の効率化書類作成の簡易化・ミス削減の効果が期待されます。また技能者の資格や就業履歴の記載によって技能者の施工力が「見える化」され、処遇向上にも繋がります。

 国土交通省はこのシステムを平成30年秋から運用を開始し、開始5年を目処に全ての事業者の登録を目指すとしています。

<民間が行なっているIT化>

 民間では、写真に工種や工法といった建設業独自の情報を登録し、簡単に仕分けを行うことができる「工事写真管理ソフト」や、作業所の予算に対する原価を予測し、予算オーバーしないようにするための「工事原価管理ソフト」などが作られています。また、多くの建設業者の方々が作成・管理に苦しんでいる「グリーンファイル(労務安全書類)の電子化」も取り組まれています。(実はこれ弊社が着手している事業です。<https://greenfile.work/>)

 実用化目前のAI技術として、鹿島建設が開発している「3Dモニタリング」があります。これは建造物の仕様や敷地、コストや工期などの情報を入力すると条件にあった3Dの施工計画を数分で複数パターン提案するシステムです。

 大林組が開発中の「工程認識AI」は、工事現場で撮影している記録写真を解析し、写っている資材の完成割合などから工事の進み具合を判定するシステム。撮影をドローンやロボットで行えば撮影の手間も省け、検査を無人化することも可能になりそうです。

 少し前までは、AIは人間の仕事を奪う驚異的な存在として認識されていましたが、最近ではいかにAIをうまく使うか、そして代わりに人間はどこにリソースを注ぐのかが重視されるようになってきましたね。

おわりに

 以上、建設業界の問題点、最近の動向についてお話しました!他業界に携わっている方々にも共感していただける内容がいくつかあったのではないかと思います。個人的には、海外展開の動きを今後も追っていきたいと感じています。

 気づけば前編後編合わせて6000字超えの長編作になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。建設業界について調べ、まとめていくうちに、シェルフィーがどのような考えで事業に取り組んでいるのか、シェルフィーが行なっていることは建設業界の方々にどのようなメリットをもたらすことができるのかなどの本質的なところを再認識することができました。社員全員にも共有して、「建設業界に変革をもたらすぞ、Con-Techをもっと盛り上げてくぞ」とさらに熱い気持ちを持ってみんなで頑張っていきたいです。

 読者のみなさんには建設業界をなんとなくでも理解し、世の中の建物はたくさんの人の頑張りと苦労でできているということ、彼らがいなければ人間は生活できないということ感じていただければ嬉しいです。



(参考文献)

一般社団法人日本建設業連合会(2017)「建設業ハンドブック」,2018年4月15日アクセス

国土交通省(2016)「建設産業の現状と課題」,2018年4月15日アクセス

visualizing.info(2015) 「市場規模マップ」,2018年4月16日アクセス

建設コネクト(2017) 「建設業界ならではの構造 元請・下請・孫請とは?」,2018年4月16日アクセス

建設業許可専門 上田貴俊行政書士事務所 「建設業法で一括下請けが禁止されている理由とその基準と例外規定」,2018年4月16日アクセス

国土交通省(2016)「建設業における社会保険未加入対策に関する参考資料一覧」,2018年4月16日アクセス

イッカツ(2017)「【業界研究】建設業界の現状・動向・課題について」,2018年4月16日アクセス

BRANUMAG(2017)『建設業界最大の課題、人材不足対策は「AI/人工知能」でできるのか?』,2018年4月28日アクセス

国土交通省(2016)「建設企業の海外展開」,2018年4月28日アクセス

建設業ERPシステムPROCESS(発行年不明)「建設業界における海外進出の動向とリスク」,2018年4月28日アクセス

建設・設備求人データベース(2012)「海外展開を加速する建設業界」,2018年4月28日アクセス

Stockclip(2017)「2017年 建設業 売上高 ランキング」,2018年5月3日アクセス

一般社団法人東京建設業協会(発行年不明)「建築現場でのIT活用」,2018年5月5日アクセス

国土交通省(2014)「運輸業の労働者をめぐる状況」,2018年5月22日アクセス

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