「クラフト以上に考える力が身についた」非美大出身デザイナーがSEESAWで1年過ごして/SEESAW デザイナー 新原と佐藤
SEESAWの制作はアウトプットのクオリティが高いとお褒めいただくことが多くあり、面談の中で「美大卒のデザイナーばかりなのでは?」と聞かれることもあります。SEESAWのデザイナーのバックグラウンドは様々で、もちろん美大出身者もいれば、社会人になってデザインを始めた人や、他の職種からデザイナーにキャリアチェンジした人もいます。
今回はその中でも「美大には行っておらず、社会人になってからデザインを始めた」新原さん、佐藤さんにお話を聞きました。2人ともSEESAWにジョインして1年ほど。どうしてSEESAWを選んだのか、ここまでどんな学びがあったのかなどを聞いてみました。
経済学部を経てデザイナーになった2人
── お二人に学生時代について聞かせてください。専攻や、大学に通っていたかどうかなども含めて教えてもらえたらと思います。
佐藤:大学では経済学部で経済や経営を専攻していました。ただ、正直そこまで真面目に授業を受けていたかというと、そういうタイプではなく(笑)。後半になるにつれて、文学部の授業を多く取るようになりました。美学や文学に興味があって、そのあたりを中心に受講していましたね。
新原:私も経済学部です。ただ、経済そのものに強い興味があったというより、その学部に大きなインターン制度があったのが理由でした。その学部に所属するとさまざまな企業でインターンができる仕組みがあったので、3年間ほぼインターン漬けの学生生活でした。
インターン先はウエディング、食品、化粧品など、いろいろな選択肢があり、その中で私はあえて「自分の人生ではあまり選ばなさそうな分野」に行こうと決めて、物流会社と研究所の2社でインターンをしました。結果的に、すごく面白かったですね。
── そんなお二人が最終的にデザイナーという道を選んだのは、どうしてだったのでしょうか。
佐藤:大学時代に、服飾系のインカレサークルに所属していました。そこで服をデザインしたり、作ったり、構成を考えたりする活動をしていて。大学生活のほとんどをそれに使っていたので、「ものづくりが好きだな」と実感するようになり、デザイナーを目指すようになりました。
服飾デザインに進むのも悩んだのですが、ちょうど3年生のころにコロナ禍になってしまい、外に出る機会が減り、自分と向き合う時間が増えて「服飾じゃないかもしれない」と考えるようになりました。もしコロナがなかったら服飾の道に進んでいたと思います。そこから将来性などを考えてWebデザインの道を選びました。
新原:私はインターンのつながりで、ホームページ更新のアルバイトに誘ってもらったのがきっかけです。最初はコーディングやWordPressの更新など、完全に実装側でした。2〜3年ほどそこで実務をしながら、少しずつデザインにも触れるようになって。Illustratorを使ってみたら、それがすごく楽しくて、「これを仕事にしたい」と感じたのが始まりでした。
── お二人とも前職はWeb制作会社ですよね。新卒で入社し、実務を通してデザインスキルを身につけていったのでしょうか。
佐藤:はい。独学もしたのですが、実務で学んだことのほうが多いです。Web制作会社だったので、基本はWebデザインが中心でした。ディレクター、デザイナー、フロントエンド、バックエンドと役割が分かれていて、その中でデザインを担当しつつ、ワイヤーフレームを作ることもありました。当時は大規模なサイトが中心で、LPなど単ページのものは少なかったです。
新原:前職は就職してから2社目だったんですが、デザインもコーディングも両方やらせてくれる会社として選んだのが、前職でした。
前職では、大規模なサイトというよりは、ToB・ToC両方ですが、「デザインの知識はないけれどホームページを作りたい」というクライアントが多かったです。シンプルなWebサイトやLP、バナーなどをたくさん作りました。どちらかというとマーケティング寄りで、ページ制作に加えて、広告運用のアドバイスまで行うようなスタイルでしたね。
佐藤:新原さん、コーディングやってたイメージ、あまりないですね。
新原:「やってました」と言えるほどのレベルではないですね。もう何年もしっかり触っていないので、ベースの知識がある、というくらいです。やってみた結果、「これはちょっと苦手かもな」と思いました。(笑)
提案するのも、信頼を得るのもデザイナー
── では、これまでの経験を踏まえて、「転職しよう」と思った理由を教えてもらえますか。
佐藤:前職では、デザイナーの先輩がいなくなってしまって。「もっと学びたいな」という気持ちが一番大きかったですね。Webデザインだけでなく、グラフィックにも興味が出てきたので、そういったことができそうな環境を探していました。
新原:私もWebの経験が中心だったので、グラフィックを学びたいという気持ちがありました。前職は、別業種から転職してきた人が多くて、みんな同じくらいの経験年数で切磋琢磨する雰囲気だったんです。それはそれでいい会社だったんですが、もう少し経験年数の長い方から、実務的なことを学びたいと思うようになって、転職を考えました。
── 幅広く学べそう、という期待があったんですね。SEESAWに実際に入ってみてギャップはありましたか?
佐藤:入社前にしっかり話を聞いていたので、大きなギャップはなかったですね。やりたいことをちゃんとやれる環境だな、という印象はそのままでした。
SEESAWは特にデザイナーに任される権限が、かなり大きいと感じています。自分で提案を考えて、最後まで持っていくし、クライアントとのやり取りも自分で行うことが多いです。デザイナーがクライアントに直接メールしたりもします。前職では、ディレクターがいて、デザイナーがいて、さらに上にプロジェクトマネージャーがいる、という体制でした。今はそういった役割が明確に分かれていない案件も多くて、その分、責任を持って仕事をしている感覚がありますね。
── 大変そうですね。
佐藤:大変です(笑)。前の会社でも「やらせてほしい」と言ってやってはいましたが、今は最終判断を自分自身が行う必要のある案件もあって。案件によりますが、その分、日々鍛えられている感覚はありますね。
── 新原さんは入社してみて、SEESAWはどんな会社だと思いましたか?
新原:SEESAWは「お客さんから得る信頼」をすごく大事にしている会社だなと感じています。
例えば、ちょっとしたミスひとつが大きな信頼の損失につながる、という話がよく出ますし、打ち合わせの振り返りでも「お客さんが本当にやりたかったことは、実はこうだったんじゃないか」という視点で話すことが多いんです。やり取りのラリーももちろん重視しますが、それ以上に、目に見えない信頼を積み重ねていく姿勢が強いですね。こういった環境は初めてなので新鮮です。
── SEESAWの仕事の進め方で、他にも特徴的だと感じる部分はありますか。
佐藤:自分の場合、前の会社がどちらかというとじっくり派で、並行する案件も多くて3つくらいでした。それに比べると、今はかなり多くの案件を並行して進めていて。大変さはありますが、その分いろんな案件に関われる楽しさもありますね。
新原:私は、前職に「インナー(社内での案件会議)」と呼ばれる文化がなかったので、そこがすごく新鮮でした。前職では、フィードバックは基本的にコメントベースで、わからなければ自分から聞きに行く、というスタンスだったんです。
SEESAWでは、クライアントとの打ち合わせ後に、必ずフィードバックの場があって、そこで考えを共有する文化があります。それがあることで、自分ひとりで突っ走っている感覚がなくて、みんなで考えて動く、後ろで支えてくれている人がいるような安心感があります。
代表から学んだのは「仕事の進め方や折衝力」
── お二人とも、入社してだいたい1年くらいだと思いますが、この1年で特に伸びたと感じるスキルはありますか。
佐藤:並行して複数の案件を進める中で、全体的にぐっと伸びた感覚はありますね。クラフト力もそうですし、ディレクション的な力も。両方をやる機会が単純に増えたので、その分成長した気はしています。
「ここがすごく伸びた」と言い切るのは難しいんですが、アウトプットの数は確実に増えました。提案をする機会も増えて、プロジェクト全体の進め方がどんどん最適化されていく感覚があります。
クラフト力やディレクション力といった要素が全部合わさって、プロジェクトの始まりから終わりまで、どう進めるかが以前より見えるようになってきた。そういう意味では、確実に一段階上がった感覚はありますね。
── 担当する範囲とその前後まで見られるようになったんですね。新原さんはどうですか。
新原:私も、総合的に底上げできている感覚があります。なかでも大きいのは、入社の動機でもあった「グラフィック領域」の経験です。これまでやったことがなかった分、入社してからはパッケージや紙媒体なども担当させてもらって、知識がかなり増えました。
もうひとつはディレクション面です。任せてもらえる範囲が広くて、例えば大人数が関わる案件だとフードコーディネーター、カメラマンなど、複数のパートナーと一緒に進めることもあります。そういう案件での進行の仕方は、知識としても実務としても成長できているなと思います。
佐藤:私も前職では社内完結の案件が多かったので、社外とのやり取りは確かに経験として増えた気がします。
── 特に思い出に残っている案件はありますか?
新原:あります。入社して最初に担当した、新聞広告の制作がいちばん印象に残っています。大手企業の案件だったのですが、クライアント側も決定権を持つ方が多く、年代も上の方が中心でした。
打ち合わせではSEESAWのアートディレクターやデザイナーも意見を出し合っていたのですが、あの緊張感が今でもすごく記憶に残っています。最初にそれを見たことで、私ももっと頑張ろうと思えたので、あのときの緊張感は忘れないようにしたい、という意味でも思い出に残っています。
佐藤:僕は特定の案件というより、代表でクリエイティブディレクターの村越さんと一緒にやると「なるほど」と思う瞬間がすごく多いです。できる限りAD案件に入りたいと思っていて、今も何件かやらせてもらっています。
ビジュアルの細かい部分もそうなんですが、それ以上にクライアントとのやり取りが上手だと感じます。 マーケティングやブランディングなどの知識もあるので出てくる言葉は、本当に学びになります。
新原:クライアントの特性を嗅ぎ分けて、「こういうタイプの人にはこう返す」といった引き出しがあって、すごいですよね。
── たしかに。「この人にははっきり言った方がいい」「この人はこういう進め方が好き」など、そういう判断をされている。これは技術力というより、仕事の進め方ですね。
佐藤:それもこの1年で学んだところだと思います。クライアントとの交渉や提案の頻度が、前職と比べて圧倒的に増えました。前職だと週1回あるかどうか、提案も自分がしない場合があったんですが、最近は毎日なにかしら提案しています。プロジェクトの始まりから終わりまでの進め方も含めて、学ぶ機会が多くて良かったなと思います。
放任してくれるけど頼れるチーム体制
── チームの雰囲気はどうですか?
新原:過ごしやすいと思います。チーム内は程よい緊張感がありつつ、意見は言いやすい。入社して感じたのは、「いい意味で放任」なところです。
例えば、デザイン案を出したときも、「なぜこの案になったのか」を言葉にして説明させてくれる。さらに、自分がADとして前に出るときに、どう説明するか、どうコンセプトを組み立てるか、考えさせてくれるんです。その上で判断を任せてくれます。
リーダー陣は、「やって身につくこと」が大事だと思っているのかもしれません。サポートはしてくれるけど、やりすぎると本人のためにならないから、いい塩梅で自由にさせてくれる。
── 任されるからこそ、より頑張らなきゃと思えるんですね。佐藤さんが感じるチームの雰囲気はどうですか。
佐藤:優しい人が多い、というのはありますね。それと、みんな自分の意見をしっかり持っています。自分の制作物に対して何かしら意見があるし、「言われたからやった」という人がいない。それは当たり前のようで、当たり前じゃない気がしていて。みんなその素養が備わっているチームだな、と感じます。
── レビューやフィードバックの特徴はありますか?
佐藤:前の会社だと、デザイナーの先輩がいない時期もあったので、Webサイトとしてのフィードバックはあっても、ビジュアルの細部まで話す機会は少なかったです。今は、例えばロゴの「ここの角度がどう」といった細かい部分も、同じ目線で話し合える人がいる。それが楽しいですね。
それに、意見が欲しいときは、同じプロジェクトチームじゃない人にも聞きます。自分がADで悩むときもそうです。外部の意見というか、「ぱっと見てどう思う?」みたいな反応を知りたいときがあるので。逆に自分が聞かれることもあります。
新原:レビューの面でいうと、最終的なビジュアルに妥協しない姿勢を、ADやリーダーたちがしっかり持っているなと感じます。提案ギリギリまで修正することも多くて、それはすごくありがたい部分ですね。それと、佐藤さんが言っていたのと同じで、自分のADだけでなく、本当にいろんな人に意見を聞く文化があるのも特徴だと思います。そこは他社と比べても、すごくいい点だなと感じています。
佐藤:他のメンバーがなにを作っているか、むしろ見たいです。
新原:積極的に「他の人の意見どう?」って会話が飛び交うわけではないんですけど、みんなしれっとFigmaを覗いてる感じはありますよね。たまに他の人も同じFigmaデータを見ているときがあって、ちょっと気まずい(笑)。
── 他のデザイナーから受けた影響や刺激って、何かありますか。
佐藤:みんな、仕事がうまいなと思います。「デザイン力が高い」というよりも、社会人としての土台がしっかりしている人が多い印象ですね。
例えば、相手の発言の意図を読み取って返す力。コミュニケーション力と言うと簡単ですけど、そういう部分のレベルが全体的に高くて、その上でデザイン力もある。だから、すごいなと思うし、自分も頑張らなきゃなと思います。
新原:今、佐藤さんの話を聞いて思い出したんですが、クラフトビールのラベルデザインを、入社してすぐに担当させてもらったんです。そのとき、最初にやるのがリファレンス集めだったんですが、私は「缶ビールのパッケージだから」と、缶ビールのパッケージだけを集めていました。
一方で、デザイナーの先輩は昔の巻物など、ジャンルにとらわれないリファレンスを集めていて。筆っぽい表現だったり、もっと抽象的でグラフィカルなものだったり。それを見たときに、自分の視野の狭さを実感しました。「これは関係ないかも」と切り捨てずに視野を広く持つ、ということを強く意識するようになりました。
── SEESAWに入ってみて「思ったより大変だな」と感じたことはありますか。
新原:工数管理ですね。前職は、じっくり作るタイプの会社ではなかった分、自分一人がやった分がそのまま工数となり、比較的わかりやすかったんです。
一方でSEESAWはクライアントからは見えない社内でのミーティングや、細かい修正なども多い。そういった作業を、どう効率化して、会社の負担にならないようにするか、というのはすごく難しいなと感じています。
佐藤:僕も工数管理は難しいと感じています。前の会社だと、工数はディレクターが持っていて、そこから振ってもらって、「これじゃ足りないです」というやり取りをしていました。しかし今は、例えばADをやらせてもらうと、デザイナーの工数を管理する側にもなるので、「これだとこのくらいかかってしまうな」とか、振り方次第で前後してしまう部分がある。そこが難しいなと感じます。
美大じゃないからこその利点はある
── お二人はデザインの専門学校や美大の出身ではないですが、そういった「まったく違うことを勉強してきたバックグラウンド」が活きていると感じることはありますか。
新原:お金のこと、経済学は活きてる部分があるかもしれません。実技面で活かせているかと言われると、まだあまりないんですけど。
私は正直、デザイン系の学部を出ていないことにコンプレックスがずっとあって。でも、コンプレックスがあるからこそ、「諦めないで頑張ろう」「この人より頑張ろう」みたいなハングリー精神は強いと思います。
佐藤:経済・経営を専攻していたことにより、「どこにお金が発生しているのか」「誰がどういう形で稼いでいる商売なのか」といった視点は、多少あるかもしれません。利益がどこにあるかが見えると、「ここはこういう見せ方をしなきゃいけない」とか、いろいろ見えてくる気はします。
サークルでファッションについて真剣に取り組んでいたときは、ブランドのファッションショーや映画もめっちゃ見てました。そこで学んだ画のきれいさ、構成などは、もしかしたら活きているのかもしれないですね。
── 逆に、美大出身の方たちがいる中で、「いいな」「悔しいな」と感じることはありますか?
佐藤:めちゃめちゃあります。美大で学んでいたり、美大に向けた勉強をしてデッサンを積んでいたりしていると、地の力が違うなと感じることが多いです。その分、今取り返さなきゃという精神ではあります。
新原:私も感じます。美術を学んできた人は、ベースが整っているからこそ違った発想ができると思っていて。クライアントも自分たちでは思いつかない発想を求めてデザイン会社に依頼することがあるので、そういう発想力が求められる場面があります。
いまの私は着実ではあるものの無難な発想に留まってしまうことがあり、発想力の源となる経験値の違いを痛感しています。大学生活の4年間は確かに大きな差ですが、これからの4年間でいくらでも成長できると信じているので、諦めずに頑張りたいです。
── 美大出身じゃないデザイナーからは、デッサン力が羨ましいという話もよく聞きます。
新原:ありますね。ラフの精度が全然違う、というのは感じます。社内のデザイナーから「ラフで描けない時点で最終成果物が良くなるわけがない」と聞いたことがあって、本当にその通りだなと思うんです。ラフが汚いままパスに起こしても、やはり良くならないので。そういう意味で、私も最近イラストを描き始めました。
── SEESAWへの入社を考えている人に「こういうことを知っているといいよ」「これを伝えたい」ということはありますか?
佐藤:自主制作はしておいた方がいいんじゃないかなと思います。仕事の制作だけじゃなくて、自分の好きなものを見つけることも含めて。
新原:私も、それはすごく関係ある気がしています。代表の村越さんが採用基準を明確に言うことはないんですけど、ずっと考えていて、「自主制作しているかどうか」は関係ありそうだなと思っています。
仕事以外でもデザインするって「好きじゃなきゃできない」「楽しくなきゃ続かない」し、体力もいる。そういうところを見ているのかなと思いました。なので、自主制作の例があるといいんじゃないでしょうか。
佐藤:SEESAWのデザイナー、みんな何かしら自分で作っていますよね。副業でやってる人もいれば、好きで作ってる人もいるし、いろいろですけど。
新原:みんなやってますね。やってない人、多分いないです。
── 新原さん、佐藤さん、ありがとうございました!