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株式会社Parasolは、マッチングアプリメディアを中心に婚活サービスなどを提供するITベンチャー企業です。少数精鋭ながら一つの事業にとどまらず、主要事業から派生した複数事業を展開する在り方は、まさに「事業創出カンパニー」といえます。
そこで今回は、代表取締役会長の傘さんと、代表取締役社長の伊藤さんのお二人にインタビュー。Parasolの事業展開や大切にしている思想などについて、どのような背景があるのかぜひご注目ください。
「自社の強み」×「成長産業」を軸に次々と新規事業を創出
―Parasolの「事業創出カンパニー」として、これまでどのような流れで事業展開をしてきたのでしょうか。
伊藤:もともと2017年の設立後にローンチしたのが、男性のためのデートコースマガジン「Forky(フォーキー)」でした。これは傘の実体験をもとに、これまで女性と関わった経験がない男性でも良い恋愛ができるようにと設計したメディアです。
当時、ちょうど伸長傾向にあったのがマッチングアプリ市場でした。そこで「恋愛のノウハウ×成長産業」という軸で新たに展開したのが、マッチングアプリメディア「マッチアップ」や、紹介型婚活マッチングサービス「ヒトオシ」です。時代の波に乗る形で、2つの新規事業を創出しました。
特にマッチアップのようなマッチングアプリの専門メディアはまだまだ未開拓領域で、編集者が記事で顔出しをしてマッチングアプリについて語る……というスタイルは、とても珍しいものでした。こうなったら実名・顔出しをしてとことんマーケティング活動をしようと決め、SNSやYouTubeに進出し、書籍も出版しました。これが2020年頃までの流れです。
今でこそマッチングアプリは恋愛婚活の手段となっているのですが、当時は「出会い系」というマイナスのイメージが強いことに加えて、マッチングアプリ業界はテレビCMが出せないため、上記のように顔出し・実名でのメディア露出は自社の権威力を高める有効な手段でしたし、業界全体のイメージアップにも繋がると思ったため、新聞やテレビへ出演なども積極的に行いました。メディア運営のための総取材歴は800名以上で、明確かつリアルな情報源もサービスグロースの要因の一つとなっていました。
―ParasolのバックボーンにはM&Aした資本業務提携を行っている株式会社キュービックがありますが、新規事業を創出する上では資金力などの面で大きな存在なのでしょうか?
傘:資金的な後ろ盾があるのは、当社の強みの一つではあります。資金的、サービス的に困難な場面が出てきた場合は、キュービックの存在は大きな助けになるでしょう。
とはいえ、基本的に新規事業の予算はメディア事業から創出した自己資金で補っています。Parasolはキュービックから完全に独立した存在として、自由度の高い経営を行っているイメージですね。
わずか1週間でMVPを開発し、スピーディにサービスを立ち上げる
―事業創出カンパニーはほかにも数多く存在すると思いますが、他社と比較してParasolならではの強みはどのような部分なのでしょうか?
伊藤:現在Parasolは社員数5~6名ほどの少数精鋭組織なのですが、この規模感に対して新規事業創出の数が圧倒的に多いのが一つの特性であり強みです。具体的には5年間で9サービス――年間1.6サービスをローンチしてきました。
他社と比較すると、例えばサイバーエージェントは5000名で年2.25事業を子会社化しており、DeNAは2500名で年10サービスを創出しています。当社はこうした著名企業のような年商10~100億円規模の売上を目指して、どんどん新規事業創出を推進しようとしているのです。
実際にここまでの数の新規事業創出を成し遂げられている要因は、取り扱うテーマの面白さだと思っています。
例えばメディア運用のために記事を執筆するにしても、「エアコンの掃除の仕方」だけをずっと書き続けるのは、ピンポイントでそこに興味関心がないと難しいですよね。
一方で「恋愛」は広く深いテーマなので、私自身も熱中して取り組めますし、実際に恋愛の面白さに惹かれて働いているメンバーは多いのかなと思います。
そのほかには、業務委託や外注など即戦力系のリソースを上手く使っているのも、当社の強みだと考えています。
傘:フルコミットするメンバーが少ないからこそ、アイデアが生まれてから企画、ローンチに至るまでのスピードが非常に速いのも強みかもしれません。ヒトオシを立ち上げるときも、私と伊藤、そしてインターン生1名をアサインした3名のチームでプロジェクトを推進しました。リソースが不足したら、3ヶ月単位で外部の専門家――業界のトップレベルクラスの人を巻き込んで協力いただき、スピーディに立ち上げた形です。
こういった動きの中で大事にしているのが、外部から得たノウハウやテクニックを、社員に柔軟にインストールするということですね。大企業の中にいて同じ事業を継続的に行う場合は特定のスキルが強化されていくと思いますが、当社の場合は人材によって違う事業の進め方や考え方を逐一インストールして、自分たちのスキルにしていっています。
伊藤:MVPを作るのも得意ですよね。ヒトオシももともとはスプレッドシートで顧客管理をしていました。今は外部リソースをも用いて効率よく開発しています。メンバーはみんな良い意味で完璧主義ではなく、最小限の工数で一番大事な部分に対してのみ精度が出せれば良い、という認識で動いているんです。
例えば1~2週間ぐらいでMVPを作成してユーザーに使っていただき、足りない部分があれば補足していくケースも多いです。SNSマーケティングを駆使した集客も得意ですしね。
インターン生もやる気と能力次第でプロジェクトにフルコミットが可能
―具体的にどのようなプロセスで新規事業が生まれているのでしょうか?
傘:多くの場合は私が最初の0~0.5の部分まで考えて、伊藤が0.5以降をグロースさせていくようなイメージです。LINEで花束を簡単に贈れる「ONESCENE」というサービスのときなんかは、私が事業の方向性などビジネスモデルの「型」を作成し、それ以降は伊藤も含めたメンバーの意見を反映しながらプロジェクトを進めてもらいました。
伊藤:アイデア出しに関しては、ミーティングを2ヶ月に1回ほど、多いときは毎週行っています。ホワイトボードに全部考えを書き出していくようなブレストですね。
―インターン生の方をアサインされるケースをお伺いしましたが、学生の方の意見も積極的に取り入れるのでしょうか?
傘:そうですね。インターン生自身が「やりたい」と言えば、積極的にプロジェクトに参加してもらいます。そのあたりは当社の特殊性かもしれません。採用活動なんかも、面談からオンボーディングまでをインターン生に任せていたことがあります。
伊藤:もちろん、彼らにそれだけの素地があるのは大前提です。例えば最初はメディアでライターとして働いてもらい、基礎力が備わったら新規事業のピッチに立ち会いをしてもらう、いろいろなプロジェクトのミーティングにも参加してもらうといった形で、ビジネスに必要な「土台」のスキルをさらに培ってもらいます。
その上で新規事業のプロジェクトにフルコミットしてもらうと、ものすごく成長するというパターンは多いですね。基礎力×応用力が掛け合わされていくイメージです。
今後もこれまで培った事業の「型」をベースにアイデアを形にしていく
―今後、Parasolでどのようなサービスを展開してきたいのか、世界観のイメージがあれば教えてください。
伊藤:私はヘルステックリゾート事業に取り組んでみたいですね。リゾート地のような場所を作って、西洋・東洋医学を融合した癒やしのサービスを提供するんです。そこへ行くと日々の疲れがリセットされて、「また明日から頑張ろう」と思えるような場所をイメージしています。先日はアーユルヴェーダを教えてもらうために、スリランカまで行ってきました。
傘:私は飲食店の予約にまつわる事業展開を考えています。例えばある飲食店を6人で貸し切り予約をして一人キャンセルが出ると予約手数料がかかるので、幹事が代わりの人を探さなければなりません。そんなときに、例えばお礼として1000円分のギフトを幹事に対して投げ銭できるようなサービスがあるといいのかなと。
幹事の役割を円滑にできるようなサービスが業界に定着したら、例えば年に100回以上外食をしている人のNFTをあげるなど、Web3と絡めた展開も考えています。いわば飲食のメルカリですね。
ほかにも、地方自治体のマッチングSaaSサービスなんかも考案中です。
伊藤:メンバーの一人は、婚活をしている人のためのマッチングアプリの活動管理ツールを作りたいと言っていましたね。
傘:今は具体的な例をお話ししましたが、マーケットインかプロダクトアウトか、toBやtoCといったこだわりは特にありません。これまで我々が培ってきたさまざまな事業の「型」がすでに存在しているので、自分たちの頭から染み出してきたアイデアを都度社内で共有し、新規事業として立ち上げていければと思っています。