【想いをつなぐ。|第1回】握った手は、離さない。 ー nobitel代表・黒川が語る「人の未来を大きくする」組織づくり
ビジョンは、ただ掲げているだけでは完成しません。そこで働くメンバー一人ひとりの想いと重なったとき、初めてその言葉は熱を帯び、動き出します。
本プロジェクト「想いをつなぐ。」では、全12回の連載を通じて、nobitelが目指すビジョンと、現場で生まれるリアルなストーリーをつないでいきます。
その出発点となる第1回は、すべての物語の起点である代表・黒川のインタビュー。「人の未来を大きくする」というビジョンの裏側にある、切実な願いと組織への哲学を聞きました。
「社会は辛い」という先入観を壊したい
新卒のメンバーと話していると、働く前から「社会は辛い場所だ」という先入観を持っている方が本当に多いなと感じます。
疲れ切った大人の背中を見て、「自分たちもああなるんだ」と諦めてしまっている。僕は、そんな呪縛を壊したい。
社会という場所は本来「フリーなルール」で動いています。努力次第で、いくらでも自由になれるし、生きる意味を見つけられる場所なんです。
仕事を通じて「自分には価値がある」と実感してほしい。それが僕の切なる願いです。
実は、nobitelが掲げる「人の未来を大きくする」というビジョンは、もともとはお客様向けではなく、スタッフのために生まれた言葉でした。
かつて都内で小さなお店をやっていた頃、一度、社会から離脱してしまったような若者たちを預かって雇用していたことがあります。
一度頑張ることをやめた彼らが、仕事を通じて夢を持ち、未来を変えていく姿を間近で見てきた。だからこそ、この言葉には魂がこもっているんです。
「評価」が組織を腐らせる
スタッフが自分自身の未来を信じて挑戦するためには、組織が「公平な土俵」であることが不可欠です。そこで僕がたどり着いたのが、独自の「選挙制度」でした。
多くの組織では、直属の上司が部下の給料や出世を決めます。でも、これって実は恐ろしいことで、社長よりも上司が「最大の権力者」になってしまうんです。
そうなると、人はどうしても上司の顔色を伺い、忖度し、派閥が生まれます。「お客様のために」と言いながら、実際には「上司のために」働くようになってしまう。そこに時間を使うのは、本質からズレてしまうと思うんです。
だからこそ、nobitelでは上司の主観による「好き嫌い査定」を一切排除しました。店長になりたい人は自ら立候補し、仲間からの投票と、お客様からの評価という透明な指標だけで決まる仕組みです。
全員が100%納得できるルールを作るのは難しいけれど、「このルールなら仕方ない」と誰もが思える透明性を追求しました。上を見るのではなく、正しくお客様に向き合える環境を作っています。
「人間力」で人を動かす
店長が評価権を持たないnobitelでは、面白い変化が起きます。「力」で部下を動かすことができなくなるんです。そこで求められるのは、背中を見せ、人として信頼される「本物のリーダーシップ」です。
特定の誰かに役割を固定するのではなく、全員でパスを回し、後ろから全力でフォローに入る献身性。そんな環境でリーダーを経験した人は、きっとどこへ行っても通用する人間になれるはずです。
もちろん、最初から完璧にできる人なんていません。だからこそ、教育において僕が最も大切にしているのは「待つ」ことです。
ハイハイしている赤ちゃんに「早く走れ!」と言う人はいませんよね。まずは立ったことを褒め、歩いたことを喜ぶはずです。大人だって同じです。
本人は今、その瞬間を必死に頑張っている。その「差分」を認め、できるようになるまで信じて待つ。この「待つ」ことができない組織は、いずれ破綻してしまうと僕は考えています。
教育に、手を抜かない
理念と同様、僕たちが決して妥協しないのが「技術の教育」です。
「人を大切にする」と言うのは簡単ですが、未経験のメンバーをいきなり現場に放り出すのは、お客様に対しても、本人に対しても不誠実だと僕は考えています。
だからこそ、たとえばDr.stretchでは、新人は店舗に配属される前に、研修センターで約2ヶ月間にわたる徹底的な集中研修を受けます。
解剖学の基礎から、独自のストレッチ技術、そしてプロとしての接客まで。現場で必要なすべてを、まずは集中的に身につける。
この2ヶ月間があるからこそ、自信を持ってお客様の前に立つことができ、お客様もまた安心して身体を預けてくださる。この確かな教育の土台が、組織のブランドを支えているんです。
「余白」が仕事を楽しくする
技術についても、マニュアルで縛ることはしません。解剖学や技術の基礎は徹底して教えますが、現場でお客様に対してどのストレッチを選択するかは、スタッフの判断に任せています。
自分で考える「余白」があるからこそ、仕事は楽しくなるし、個性も輝くからです。
お客様から「人によって技術に差があるね」と言われることがありますが、それは僕にとって「褒め言葉」。相性の合うスタッフをお客様が選べることも、サービスとしての魅力の一つだと思っています。
理念は「伝え続ける」もの
こうした仕組みを作っても、理念を掲げているだけでは意味がないと思っています。
人間は、どうしても忘れてしまう生き物です。だからこそ、繰り返し、繰り返し伝えていく。そのために、従業員向けに毎月欠かさず「カルチャー研修」を行っています。従業員は半年に一度必ず参加をします。
僕自身が講師となり、朝から夕方まで5時間ほどかけて、nobitelが大切にしている価値観や考え方を改めて確認する。今ではこの研修を、日本国内だけでなく世界中の店舗に向けて配信しています。
同時通訳を入れながら、世界中の仲間と同じ熱量を共有する。そうやって「共通言語」を作ることで、組織としての根っこが少しずつ固まっていくんです。
また、役割が変われば必要な学びも変わります。そのため、新人研修、技術研修、店長研修、マネージャー研修と、キャリアの段階ごとに学び直す機会も用意しています。
一度伝えたら終わりではなく、その時々の立場に応じた視点で理念を咀嚼し直す。このサイクルが、組織を強くすると信じています。
現場を見ないと、何もわからない
組織が大きくなるほど、トップは現場から遠くなりがちです。数字上の報告だけで現場を知った気になってしまうのが、経営者として一番怖いことだと思っています。
だから僕は、全世界290店を回るようにしています。現場に行かないと、何もわからないからです。
店舗で働くメンバーがどんな表情をしているか。お客様との間に、どんな心地よい距離感が生まれているか。そこには、決して数字には表れない「体温」があります。
理念をただの綺麗な言葉にしないためにも、自分の足で現場を訪れ、自分の目で空気感を感じる。その積み重ねこそが、僕の経営のリアリティを支えています。
握った手は、決して離さない
そして、僕にはスタッフとの向き合い方において大切にしていることがあります。
本人が「ここでやりたい」と僕の手を握っている限り、たとえ結果がすぐに出なくても、僕からその手を離すことは絶対にありません。不器用でも、時間がかかってもいい。その人が前を向いている限り、僕は信じ続けます。
本人から「引き上げてくれ」と言われない限り、僕から無理に引き上げることもありません。また、一度自分から手を離して去っていった人を、追いかけることもしません。
今この瞬間、nobitelという場所で僕の手を握って必死に頑張っている仲間のために、一番の時間を使いたい。それが僕の覚悟です。
1000億のスタートラインへ
nobitelは年商100億を達成しましたが、これは通過点に過ぎません。今は「1000億」という次なる目標を掲げています。
なぜ数字を追うのか。それは、その規模になったとき、初めて「世の中をもっと良くするために何ができるか」を真剣に考えられるスタートラインに立てる気がしているからです。
「人の未来を大きくする」。このビジョンに心から共感し、一緒に新しい景色を見に行きたいと思ってくれる仲間を待っています。
NEXT
次回は、この思想を体現する一人、新卒入社から海外副社長へと駆け上がったメンバーのストーリーをお届けします。店長、エリアマネージャーを経て、台湾という未知のフィールドへ挑んだ彼の物語——。どうぞお楽しみに。