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老舗卓球メーカーを全面リブランディングする中で気付いた、ブランドづくりに欠かせない3つの秘訣。

◆はじめに

「卓球」が新たな盛り上がりを見せる中、老舗メーカーはどこまで時代に仕掛けられるか。

先日、9月15日に卓球メーカー「VICTAS」のリブランディングを発表した。私は、プロデューサーという立場でこの案件に関わってきた。NEWPEACEが、大手広告代理店や老舗デザイン会社も参加した8社コンペで勝利を収め、2017年2月からプロジェクトが始動した。

皆さんの記憶にも新しい、リオ五輪での男女卓球日本チームの活躍から、世間一般が持つイメージや関心の高まりを感じるようになった。そんな盛り上がりを見せる中、卓球メーカーVICTAS(旧:ヤマト卓球株式会社 現:株式会社VICTAS)が2021年までの卓球男子日本代表のオフィシャルサプライヤーの権利をミズノから獲得した。2020年東京五輪において、さらなる盛り上がりを助長し、ブランドイメージを一新し、競合ブランドに対してどのようにシェアを拡大するか。どのようなブランドアイデンティティにするか。ロゴ、タグライン、ストーリー、コミュニケーションとすべてにおいて、VICTASとの信頼関係の中で、共に構築していった。

改めて、上手くいったこと、もっと良くすることができたことなどを振り返る中で、大きく3つのポイントに分類することができた。


・CONCEPT MOVIE " I AM NEXT. "



・RUBBER PACKAGE DESIGN




◇3つのポイント

1. 共有の合言葉を持つことで、同じ夢を見ること

2. 受発注を超えたバディとして、意思決定しあうこと

3. 理想を徹底して落とし込める体制をつくること



◆ポイント1

共有の合言葉を持つことで、同じ夢を見ること

VICTASは、常に強者に対して挑戦して勝利を勝ち取るというコンセプト「 I AM NEXT.」をメッセージとして打ち出している。日本代表としての絶対的王者の中国に対し、また、VICTASとしての国内競合ブランドに対してのメッセージでもある。まだ勝者ではない新世代のためのブランドポジションを取ることで、王道感を保守に変え、結果的に中高生のトップ選手に強く共感される新しいブランドとして確立する。また、新世代の選手契約や、育成、サポートをしていくことで、卓球業界を牽引していく存在へとなる。

そして、国民の日本代表に対する熱量をVICTASへと重ね合わせる。4年に一度、日本中が注目し、応援する「オリンピック」この文脈にVICTASブランドを重ね合わせることで、日本代表への熱量を、そのままVICTASというブランドに対するイメージ形成に繋げていく。つまり、VICTASのリブランディングプロジェクトは、イコール、卓球男子の日本代表のブランディングであり、世の中にとっての卓球のイメージを一新させるというミッションをも目指している。

2月からのキックオフで、我々は早々にメッセージを開発し、思いを言葉にし、ストーリーを紡いでいった。何よりも言語化することが、VICTASとNEWPEACE、そして、制作チームとが同じ方向を向くにのとても効果的であった。

(ブランド戦略会議 内部資料)



◆ポイント2

受発注を超えたバディとして、意思決定しあうこと

NEWPEACEは、デザイン会社ではない。もちろん、デザイン制作した中で、対価を得ている訳だが、ここで言いたいのは、クライアントワークではないということだ。クライアント、下請けという関係ではなく、目標を掲げ、そこに向かって両者が対等なパートナー関係であること。信頼関係を築き、少し大げさな表現であるが、命を預けられるかということ。それがバディだと思う。我々はクリエイティブ面を任されており、青を赤に直してくれと言われて、クリックひとつで直すことはできない。アウトプットには、我々も責任があり、VICTASは既に自分事なのである。

2月から月1〜2回のブランド戦略会議がスタートした。この会議体の条件は、この場が最高意思決定機関であること。その場で全ての物事が決定できる、そして覆らないということが非常に重要であった。この会議体の設定もこちらから提案し、設けてもらった。また、その会議出席者のVICTAS上層部が同じ方向を向いていたという点も非常に大きな意味を持った。上層部の思いを現場社員へ伝えるため、社長を始め、役員が趣き、自らの言葉で伝えていく。前述の通り、オフィシャルサプライヤーの権利を勝ち取っているのだが、それは体力的なことも含め、相当な覚悟と決断があっての選択だと思う。その点、VICTAS全員が2020年に向けての未来を見据えていた。

(向かって右から2人目 株式会社VICTAS代表取締役社長 兒玉義則氏)



◆ポイント3

理想を徹底して落とし込める体制をつくること

コンペの段階から、弊社は、今や国内外数々の賞を受賞している電通の若きエースAD今井祐介氏をアサインしていた。また、制作チームを電通クリエーティブ X(クロス)とチームを組んだ。当然、アウトプットによってチームは異なるが、アイデンティティを確立していったチームは間違いなくここである。また、社内外問わず、役割を明確にしており、大企業のように、社内に持ち帰って上司に確認するということはない。意思決定権があるものが議論を繰り広げるのである。それがイコール、フットワークの軽さ、スピード感につながっていると思う。

電通AD今井氏は、意思とロジックを持ち、その職域を全体から俯瞰できる素晴らしいクリエイターである。すべてのデザインには理由があり、意図がある。修正の依頼があっても、その意図とは違う意図がしっかりあり、納得しない限り、デザインの修正はしない。一見すると頑固のように感じるかもしれないが、これが先程「バディ」と述べた部分に通ずる。意思のあるADのもと、数々の案件でその勘所を掴み、経験ある制作チームは、まさに味方でいて頼もしかった。

スケジュールの関係上、早々にデザイン制作したラバーパッケージの段階で、VICTASのアイデンティティを確立し、ビジュアルとしてチーム全体に共通認識することができた。



◆さいごに

全てのハブとなるプロデューサーとして

ここまで書いてみて、一つのことに気がついた。上記の大切な3つのポイントは全てスタートラインに立つ前のことだ。

実作業で各々が黙々と業務を遂行しだす前に、我々はどこに向かうんだと言うことを明確にし、また、それを実現できる体制を充分に作ってやることがいかに大事かということである。


私は、通訳が得意だ。これは、一般的な意味の日本語を英語にするといったことではない。同じ日本語を使っている私達でさえも、業界、立場、目指すべき方向など違えば、使う言葉は異なってくる。

人は、対峙すると反発力が生まれる。1対1の2点の状態だと、磁石のように引き合う時もあれば、同様に離れる時もある。チームとしてバランスが良い状態というのは、その点が3点であることだと私は思う。2点が反発しそうな時もその間の糸(関係)を横に引く力でバランスをとってあげれば、3点の位置関係は変わらない。そして、その中でお互いの求めるものを調整していくと同じ方面を向き出す。その時バランスをとっていた力を緩めてあげることで物事を前進させることができる。これは一種の例えで、進む方角は360°あるため、私がバランスを取らずとも進んでいくこともあれば、どうにもならない時だって当然ある。私が「通訳」といっているのは、そういった相互の距離感や、相手の立場に立った際に何が最適かということに気づくことや、それを少しでも良い方向へ導こうとすることである。

周りのプレイヤーがいかに最大限のパフォーマンスをし、チームとして最大の機動力を生み出せるかということを、今回プロデューサーという立場で意識した。

まだまだ9月15日は、単なる通過点に過ぎない。2020年を見越したプロジェクトは始まったばかりだ。


https://www.victas.com/ja_jp/




◆APPENDIX◆ NEWPEACEが行ったこと/行っていること

弊社は、VICTASと年間でのフィー契約を結んでおり、本プロジェクトに参画している。

以下、項目として列挙すると


◇VICTASブランディング

・ロゴ開発

・メッセージ/ストーリー作成

・ロゴ/ブランドマニュアル作成

・定番商品デザイン(アパレル)

・ラケットパッケージデザイン

・ラバーパッケージデザイン

・ブランドブック企画/デザイン制作

・オリジナルインタビュー企画

・コンセプトムービー企画/制作

・WEBデザイン

・新聞広告デザイン制作

・販促物デザイン制作

・記者会見ディレクション/コンテンツ監修

・その他様々なアイテムのディレクション/監修

◇男子卓球日本代表

・代表ユニフォームを始めとするアパレル一式のデザイン

・メインビジュアル企画/制作

◇ショップ

・初の直営店VICTAS SHIBUYAのディレクション/監修

(T4 TOKYO|複合型卓球カルチャースペース内)

・渋谷店オリジナル商品デザイン制作

・店内ディスプレイ制作/監修

◇株式会社VICTAS

・コーポレート関連アイテムデザイン制作/監修

・ブランドVICTASとの住み分けを言語化

・兄弟ブランドTSPとVICTASとの住み分けを言語化

・契約選手獲得に向けディレクション

・販売戦略コンサル

・海外戦略コンサル

その他、制作物が一段落した以降は、ブランド戦略会議の内容は、経営コンサルに近い形になってきている。また既に18年の春夏の商品企画/制作は進行中である。

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