営業代行、インサイドセールス、営業支援。外部パートナーに営業を任せる選択肢は年々増えています。一方で「依頼してみたけれど、思っていたのと違った」「数字は追ったけれど、事業が前に進んだ感覚がない」という声も少なくありません。
では、伴走型の営業支援とは実際に何をしているのか。どこまで入り込み、何を見ているのか。
make standardsの営業支援の"現場"を、社長に聞きました。
目次
「営業支援に頼めば、何でもしてくれる」という誤解
支援に入るとき、最初にすり合わせていること
新規案件で、最初につまずきやすいポイント
なぜ、テレアポや営業代行だけでは終わらないのか
マネジメントの現場で、実際に見ていること
伴走支援がフィットする会社の、共通点
まず相談するなら、どの段階がベストか
おわりに
make standards 代表:佐藤雄希
「営業支援に頼めば、何でもしてくれる」という誤解
広報: 最初にストレートに伺いたいのですが、「営業支援」という言葉で誤解されやすいことって、ありますか?
佐藤: 一番多いのは、「営業支援に依頼すれば何でもできる」という期待ですね。
広報: 「プロに頼んだから大丈夫」というやつですね。
佐藤: そうです。もちろんプロとしてやりますが、人がやることなので、できないこともあります。単価や事業状況を無視して「プロなんだから何とかなるでしょ」という前提で来られると、そこでまずズレが生まれる。
広報: 他にも、よくある誤解ってありますか?
佐藤: 「安ければいい」という誤解ですね。もちろん安く発注できるに越したことはないんですが、大事なのは"発注単価"ではなくて、その後の"獲得単価"なんですよ。
広報: アポや受注が、トータルでいくらで取れているかという話ですね。
佐藤: はい。発注単価が安いことが一番大事かというと、違う。発注単価は獲得単価に影響はするけれど、そこだけを見て選ぶと、結局獲得単価が悪くなって、事業としてうまくいかない。ここは相談を受けていてもよくすれ違うポイントです。
広報: コンペになったときに、各社の出すシミュレーションの数字だけで判断されることも多いと聞きます。
佐藤: それもよくありますね。シミュレーションなので本来どこも完璧ではないはずなんですが、その数字の根拠をどこまで精査しているかは会社によって本当にバラバラなんです。ちゃんと考え抜いて出している数字もあれば、そうでないものもある。発注側がそこの中身まで見ずに数字の大小だけで判断してしまうと、後で絶対にすれ違います。
広報: 佐藤さんご自身は、この状況をどう見ていますか?
佐藤: 僕の持論は、「発注してみるまで、その会社がどんなスタンスで、どんな人材をアサインして、どんな成果を出すかは、本当のところはわからない」 というものです。コンペで他社のシュミレーションやその根拠を聞いた際に、発注側にとっては実態以上によく見せられているケースもあるなと感じる時もあります。だから、発注前にスタンスをすり合わせておくこと自体が、発注側にとって重要な防衛策なんです。
広報: 逆に言うと、受ける側も、そこをすり合わせられる相手かどうかを見ている。
佐藤: そうですね。僕が受諾する側から相談を受ける際も、その観点で会話します。「ぶっちゃけ発注してみるまでわからないですよね」という前提に立った上で、じゃあ何を揃えますかという話をします。
支援に入るとき、最初にすり合わせていること
広報: 実際に支援に入ることが決まったとき、最初に何を確認しますか?
佐藤: 最上段にあるのは、今の事業状況と、今後どうしていきたいのか。その次に、その文脈の中で営業支援に何を求めているのか、という順番です。
広報: 「低単価でアポ取って、低単価で受注してほしい」の手前にある話ですね。
佐藤: もちろん結論としてそこに着地することはあるんですが、そのシミュレーションが本当に実現可能なのかどうか、ここは最初にすり合わせておく必要があります。たとえば「今、従業員でやっている数字の3倍になります」みたいな提案が出てきたときに、「それってどういうロジックですか?」と普通に聞きます。正直、そんなに簡単に伸びるケースって多くないので。
広報: ありがちな例はありますか?
佐藤: たとえば、「今1アポ5万円で取れているのを4万円にチャレンジしたい」というようなご相談。これは理解できます。現状がどうで、発注している会社はどうで、従業員ではどういうやり方をしているのか。前提を並べてすり合わせると、打ち手が見えてくる。一方で、「とりあえず発注したい」という話は、"とりあえず"の中身を解きほぐさないと何も始まらない。
広報: "とりあえず"は、危険ワードですね。
佐藤: 危険ですね(笑)。ただ、上位レイヤーの方ほど、各論がまだ見えていないケースはあって、「そこを明らかにしてほしい」というご依頼の場合もあります。その場合、成果を出すことと同じくらい、"どうやれば成果が出るのかを明らかにすること"そのものが目的になる。これは一緒に取り組む意味が十分にあるご依頼です。
広報: 明らかにすること自体が価値になる、と。
佐藤: はい。一方で、「いくらで、何アポ取ってください、以上」といった発注の仕方を仮に他社にもしているのだとしたら、あまり生産性が上がらないと思うんですよね。お互いに。
新規案件で、最初につまずきやすいポイント
広報: 新しい案件で営業を立ち上げるとき、最初につまずきやすいポイントはどこですか?
佐藤: 一番は、発注側の期待値と、我々が出せるリアルな成果のすり合わせが、本当にできているかどうかです。
広報: 最初に合意したはずなのに、ズレることがあるんですか。
佐藤: あります。一番多いパターンは、最初にお話しする方がどのレイヤーの方かによっては、社内の上位層に活動内容を報告した時点で話が変わる、というもの。だからこそ、なるべく上位レイヤーの方と会話したいですし、相手の事業状況に合わせた期待値を握りたい。
広報: もう一つ、よくつまずくポイントはありますか?
佐藤: 「どのターゲットに、何の価値で、どう営業するのか」が整理されていないケースですね。
広報: 商品の価値の言語化、という話でしょうか。
佐藤: わかりやすい例で言うと、水の価値って何ですかと聞かれたら、「喉が渇いたから飲む」「水分補給が必要だから」くらい、シンプルじゃないですか。
広報: たしかに、そうですね。
佐藤: でも、ある程度複雑なプロダクトになると、同じ商品でも相手によって価値の伝え方が変わるんですよ。大元の価値は一緒なんですが、切り口をどうやって増やしていくか。この切り返しのバリエーションが、アポや商談の率に直結します。これが整理されていないまま、商材を一度も売ったことのない我々のメンバーに営業させると、当然アジャストがずれて成果が出にくい。
広報: なるほど。その先にある"つまずき"もあったりしますか?
佐藤: 動かしながら見えてくる話ですが、狙っているターゲットがそもそもズレていたということもありますし、プロダクトが求めている成果に対してフィットしていないということもあります。
広報: プロダクトがフィットしていないとなると、営業の話ではなくなりますね。
佐藤: そうなんです。「武器がもう少し必要だから、商品を少しアップデートしないと厳しいですよね」という話を、クライアントとする必要も出てきます。逆に、他社さんやクライアント社内の別チームがすでに正解を持っている場合は、その正解をパクりつつ疑う、という動きもします。
広報: パクりつつ、疑う?
佐藤: 3人のチームでうまくいっていた正解が、30人のチームでも通用するかというと、そうじゃないこともある。だからこそ、うまくいっていることを横展開する価値は大きいんですが、規模や条件が変わったときにそのまま通用するかは疑っていく。この両輪が必要なんです。
なぜ、テレアポや営業代行だけでは終わらないのか
広報: make standardsが「テレアポや営業代行だけで終わらない」と言っている理由を、改めて聞かせてください。
佐藤: シンプルな話で、価値を返さないと、発注をいただいている理由がないからです。
広報: 価値の定義が、アポ数や商談数ではない、ということですね。
佐藤: そうです。価値は、その事業がうまくいくこと、その会社がうまくいくこと。アポや商談は、その要因の一つでしかない。
広報: わかりやすい具体例はありますか?
佐藤: マーケでよく聞く話なんですが、「1リード1,000円で取ってほしい」という発注があったとして。1,000円だと、ポイントサイトで「資料ダウンロードしたら500円プレゼント」みたいな座組みで数は取れる。でもそれ、ポイント目当てのリードだから、事業的には何の意味もないじゃないですか。
広報: はい、そういう話はよく聞きますね。
佐藤: 営業も同じで、アポ単価を安くしても、決定率が落ちたら意味がない。むしろアポ単価を1.5倍にしても決定率が2倍になるなら、そっちの方がいいですよね、という話です。アポだけを見るんじゃなくて、アポ×商談×受注×その先の事業インパクトまで見ないと、どの打ち手が最適かは判断できない。
広報: "安かろう悪かろう"という言葉の話にもつながりますね。
佐藤: ここはおもしろい違いがあって。経営コンサルだと、外資系のコンサルに数億円発注する、みたいなことが普通に起きるじゃないですか。「自分たちでは見えない視点が欲しいから」と言って、高い単価を受け入れる。
広報: たしかに、そうですね。
佐藤: ところが、営業になると途端に「安い方がいいでしょ」になるんです。ビジネスサイドの方って、営業の実務経験がないことが多くて、「このくらいで取れるでしょ」と軽く見られがちなんですよね。でも、営業代行会社は大抵、人件費率を何パーセントと決めて運用しているので、発注単価が安いと、単純にアサインされる人が安くなる。そうすると成果が出にくくなる、という構造なんです。
広報: 「適切な単価」がある、と。
佐藤: より高くある必要はないし、必要以上に高いのも違う。適切である必要がある。これに尽きます。
マネジメントの現場で、実際に見ていること
広報: 営業チームのマネジメントに入るとき、何を見ているんですか?
佐藤: 一番はもちろん成果です。そして、その成果の要因。これを"人×やり方"で分解します。
広報: 人、というのは具体的にどういうことでしょう?
佐藤: 誰が、何を、どうやっているのか。ミニマムで足し算、理想は掛け算。Aさんだけが売れていて、B・C・Dさんが全然売れないというチームは、もったいないことが起きている状態なんです。人には得意不得意があるので、それをちゃんと掛け算に変換できているか、という視点で見ます。
広報: "やり方"の方では、何を見ますか?
佐藤: 営業戦略と営業戦術です。成果が出ていないチームは、だいたいここがしっかりしていないか、しっかりしていてもやりきれていないかのどちらかなんですよ。
広報: "やりきれているかどうか"は、外から見ると意外と判断が難しそうですが。
佐藤: 見分け方の一つは、過去の施策の敗因がちゃんと言語化されているかですね。「過去やってダメだったんです」と言われたときに、「なぜダメだったんですか?」と聞くと、答えられないことがあるんです。ダメだった事実はわかるけど、その原因が整理されていない。これだと、次に何をやってもうまくいかない可能性が高い。
広報: やりきる、の前提として、振り返りが大事ですね。
佐藤: そうです。あとは、成果が出るイメージが湧いていない組織からは、成果は出ないと思っていて。
広報: メンバーレベルでイメージが湧くかどうか、ですか。
佐藤: はい。そしてメンバーにそのイメージを湧かせるためには、間にいるリーダーやマネージャーが、成果が出るシナリオをちゃんと描けていないといけない。それが描けていれば、メンバーにも伝わる。描けていないなら、そこから変える。
広報: 定量と定性の両方を見る、という話もされていましたね。
佐藤: 定量には嘘がないので、数字を突き詰めていくと必ず原因に突き当たる。ただ、その原因が何かは定性情報を見ないと見えてこない。たとえば、商談のNG理由を分解すると、50%、30%、10%、5%、2%みたいに分布するじゃないですか。
広報: はい。
佐藤: 2%の理由に手を打っても、成果は変わらないんですよ。10%、30%、50%のところから順に手を打つ。50%が「商品」だったら、本当にそこは変えられないのか、から考える。ロックされているなら、次に率が高いところから潰しに行く。これを定量と定性をセットで見ないと判断できない。
広報: 最後に、成果を出したいという"集団の意志"の話もありました。
佐藤: 仕組みと熱量は両輪なんです。成果が出る仕組みをつくりつつ、成果を出したいと思っている集団に変えていく。これは「成果を出した方が、本人にとっても組織にとってもプラスだよ」ということを、どう伝え続けるかという話でもあります。
広報: 佐藤さんがリクルート時代によく言っていた話が、ここで効いてくる気がしました。
佐藤: ああ、35歳までにどんな経験とスキルを身につけているかで、その後の人生の自由度が大きく変わる、という話ですね。リクルートの契約社員の場合、卒業(有期契約満了)までに三年半という期限があります。その間に成長した方が自分にとって得だよね、と伝えていました。今の組織にも、その考え方のベースはあります。
伴走支援がフィットする会社の、共通点
広報: クライアントと良い関係を築くうえで、大事にしていることはありますか?
佐藤: 一番は、相手のことを考えることですね。相手のビジネスと、発注してくださっている方そのものを。
広報: シンプルですが、言うほど簡単ではない気がします。
佐藤: 最近社内でもキーワードにしているのが「徳を重ねる」という言葉。GIVEする、良いことをする、という精神です。そうすると、自分も気持ちがいいし、相手も気持ちがいい。結果として、相手も自分のことを考えてくれるようになる。それを期待してやるというより、いいことをしている方が自分が気持ちいいよね、という感覚に近いですね。
広報: ビジネスだとどうしてもコストや損得勘定が絡みますよね。ギブをどこまでするかの判断は、難しいところもありそうです。
佐藤: ここ、一見矛盾するんですが、ちゃんとギブするためにも、適切な対価はもらわなければいけないと思っているんです。
広報: と、言いますと?
佐藤: 僕一人なら動けるけど、人を動かすにはお金がかかるから。ちゃんと価値を返し続けるためには、ちゃんと良い人をアサインし続けなければいけなくて、そのためには適切な単価が必要なんです。
広報: 具体的なエピソードはありますか?
佐藤: 少し前、ある大手企業さんの案件を受けるときに、最初、控えめな金額で提案しようとしたんです。そうしたら信頼しているパートナーに「それはダメですよ。向こうからしたら金額が数万低いかどうかよりも、ちゃんと価値を返すために、ちゃんと良い人を張れる金額を提示した方がいい」と言われて。
広報: なるほど。
佐藤: その通りだなと思って金額設定したんですが、結果として、適切な単価で受けたからこそ、価値を返せて、急拡大の要員ニーズの採用も実現出来たと思います。金額が、お客様に返せる価値の度合いに影響する。安く見せることが必ずしもGIVEにならない、というのは大きな学びでした。
広報: そのうえで伺いたいのですが、どんな会社ほど伴走支援がフィットすると感じますか?
佐藤: 外部なんだけど、外部と思わないでくれる会社さん、ですね。
広報: "中の人"として扱ってくれる、ということですね。
佐藤: そうです。情報がないと、僕らも判断できないんですよ。秘密保持はもちろん結ぶんですが、その上で、僕らから見える数字以外の、事業全体の状況を共有してくれるかどうか。そこが開いていると、「こうした方がいいですね」と踏み込んだ提案ができるし、ディスカッションができる。
広報: 逆に、難しい関係はどういうものですか?
佐藤: 情報を遮断される関係ですね。毎月定例をして、「何アポ取れました」「はい」で終わり。打ち手が打てない。そして最悪なのは、言われた通りにやっているのに、実は事業上フィットしていなくて、後から上のレイヤーの方に「どうしてこうなった」と言われるパターン。
広報: 後出しじゃんけんですね。
佐藤: この形になると誰も得をしません。うまくいっていないことがあれば早めに言ってほしいし、こちらも本音で話す。難しいときは「難しい」と言うし、「今うちでは難しいので、こういう会社さんの方がいいですよ」と伝えることもある。そこまで本音で話せる関係の方が、結果的にうまくいくんです。
まず相談するなら、どの段階がベストか
広報: 最後に伺いたいんですが、make standardsに相談するなら、どの段階がベストですか?社内でしっかり整理してから、と構えてしまう方もいる気がします。
佐藤: いえ、整理してから来ていただく必要はまったくないです。
広報: あっさり(笑)。
佐藤: むしろ、「いますぐこの形で発注したいです」の状態で来られる方が困るんですよ。
広報: というと?
佐藤: 発注したいですと来られても、「ありがたいですが、まだ判断できないです」となるので。順序が逆なんです。発注する前に、「そもそも発注すべきなのか」「他にどんな方法があるのか」という問いが絶対にあるはずで、そこのスタート地点から一緒に考えたい。
広報: 粒度としては、どのくらいふわっとしていても大丈夫ですか?
佐藤: 「営業、テレアポ、商談、カスタマーサクセスあたりで、うまくいっていないな、もっとこうなったらいいのに、がざくっとある」、このくらいで全然大丈夫です。状況を聞きながらディスカッションすると、ぼんやりしていたものがリアルになってくることも多いので。
広報: 壁打ち相手としてmake standardsを使う、くらいの感覚で良さそうですね。
佐藤: そのくらいの気持ちで来ていただいて大丈夫です。ただ、30分なり1時間なり、時間をいただいている以上は、その場でちゃんと価値をお返しするのが前提です。その最初の相談で価値を返せなかったら、そもそも発注いただく理由がないと思っているので、そこは全力で向き合います。
広報: ありがとうございました。
おわりに
インタビューを通じて印象に残ったのは、「価値を返す」という言葉が、終始ブレずに語られていたことです。アポ数、商談数、受注数、営業にまつわる数字はたくさんありますが、弊社にとってそれらはすべて、"事業がうまくいく"という最上位の価値に紐づいた手段でしかありません。
だからこそ、ターゲット設計にもプロダクトにもマネジメントにも踏み込むし、ときには「発注は待ってください」とも言います。
make standardsは、"売る"だけでは終わらない仕事をしています。
佐藤 雄希
◆プロフィール
1980年生まれ。同志社大学卒業。同志社大学在学中に創業期の有限会社ドリコムにて、約2年間プロジェクトマネジメント、経理・財務・労務周りを担当。新卒で株式会社リクルート(現リクルートライフスタイル)に入社し、ホットペッパーの飲食部門でリテール営業、営業リーダー、大手法人部署の立ち上げ、マネージャーを経験後、人事部に異動。
人事部では中途採用をメインに、育成・査定・中長期のチャネル検討も担当。中途採用では年間400名採用を800名採用まで拡大。
その後、新規事業の営業・営業推進部署を立ち上げ、Airレジ、Airウォレット、Airウェイト、Airリザーブ、ペットサロンボード、ショプリエ、リクルートかんたん支払い、の7つのプロダクトのセールス周りの責任者を担当。最後は、Airレジの国内セールスの責任者を経験後、2018年6月に退職。2018年10月1日に株式会社make standardsを設立。