最近、インフラエンジニアの役割が急速にアップデートされていると感じます。
かつてはAWSやAzure、GCPといったパブリッククラウドを使えることが強力な武器でしたが、現在はそれらが使えて当たり前の前提スキルになりつつあります。
日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の『企業IT動向調査報告書 2025』でも、パブリッククラウドの導入率は全テクノロジーの中でトップとなっており、クラウド技術そのものが差別化に繋がらなくなってきています。
では、クラウドが土台となった今、私たちは次にどこを目指すべきなのか。2026年の市場感やデータから見えてきた、3つの重要な領域についてまとめてみます。
1️⃣運用の作業を資産に変える自動化とIaC&CI/CD
一つ目は、インフラ構築の自動化(IaC)と、それを自律的に回すCI/CDパイプラインの構築です。
これまでのインフラ運用は、いわば職人による手仕事に依存していました。
サーバーにログインしてコマンドを打ち込み、管理画面を操作して設定を行う。
こうした手作業は、属人化やオペレーションミスを招くだけでなく、エンジニアの時間を維持・管理だけに縛り付ける最大の要因となっていました。
実際、日本企業の現状は、このコストによって身動きが取れなくなっています。
① IT 予算の約 80%が、現行ビジネスの維持・運営(ラン)に充てられている。これらレガシーシステムの維持に資金、人材が拘束され、新たなデジタル技術を活用した攻めの IT 投資、人材シフトが進まない(技術的負債)。
引用:経済産業省『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』P.4 ❐
この80%の無駄を削減するために不可欠なのが、IaCとCI/CDです。
IaCとは、インフラを手順書と手作業ではなく、すべてコードとして記述・管理すること。そしてCI/CDは、そのコードが書き換えられた瞬間、自動でテストを行い、本番環境へ反映させる自動配送システムのことを指します。
つまり、これからのエンジニアには、一つひとつ丁寧に作り込む手作りインフラではなく、設計図さえ流せば全自動で製品が出来上がる高効率なファクトリー(工場)を設計する能力が求められているのです。
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2️⃣アイデンティティを軸としたゼロトラスト・アーキテクチャ
二つ目は、セキュリティの考え方の抜本的な転換です。
ここで言うゼロトラストとは、社内なら安全という性善説を捨て、すべてのアクセスを疑って検証するというアプローチです。
かつてはファイアウォールを用いた境界防御が主流でしたが、クラウドとテレワークの普及により、守るべきデータも社外になりました。
そのため、これからのインフラエンジニアには、ID管理(Identity)を起点とし、ネットワーク(SASE)、データ保護(DLP)、振る舞い検知(UEBA)などを統合したゼロトラストアーキテクチャ設計が求められます。
次世代ネットワーク・セキュリティソリューション概要図
引用元:ゼロトラストネットワーク・セキュリティーの構築・運用をトータルサポートするソリューション提供を開始
ゼロトラストは大規模な構成要素(SASEやSIEM等)が絡み合うため、個人環境での構築・再現は困難です。実務で通用する設計思想を身につけるには、各領域に特化したベンダー資格の取得が最短の近道となります。
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3️⃣生成AIの実装を支えるRAGの基盤設計
三つ目は、急速に拡大する生成AI活用市場において、最もボトルネックとなっているデータ基盤の構築スキルです。
現在、多くの企業が生成AIを業務に組み込もうとしていますが、単にChatGPTを契約するだけでは業務活用が進まないという現実に直面しています。
なぜなら、汎用的なAIは企業の内部情報(最新の規定や顧客データなど)を知らないため、実務で使うには社内データを安全かつ正確にAIへ連携させる仕組み(RAG)が不可欠だからです。
しかし、機密情報を外部モデルに渡さずに処理するセキュリティ設計や、膨大な社内ドキュメントを高速に検索させるデータパイプラインを構築できるエンジニアは、市場に圧倒的に不足しています。
AI活用が全社の最優先事項となる中、この「AIと社内データの架け橋」を作れるインフラエンジニアの市場価値は高騰し続けています。
最後に
クラウドという共通基盤が整った今、インフラエンジニアの価値は、単なる設定作業からアーキテクチャによる課題解決へとシフトしました。
データが示す通り、企業はスキルのあるパートナーをこれまで以上に必要としています。技術の変遷を楽しみながら、自らの知見をアップデートし続けること。その研鑽こそが、プロフェッショナルとして最も確実な生存戦略になると考えています。
ジェネスティコンサルティングではこうしたモダンな技術スタックへの挑戦への機会が揃っています。
興味がある方がいれば、ぜひ一度お話しできれば嬉しいです!