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創業者・会長の武藤真祐に聞いてみた!日本の医療が抱える本質的な課題と解決へのアプローチ

こんにちは。インテグリティ・ヘルスケア(以下、IH)Wantedly編集部です!

IHのユニークな点の一つとして、代表取締役会長であり医師である武藤さんの存在があります。

武藤さんは東大病院、三井記念病院にて循環器内科に従事し宮内庁で2年半侍医を務めた後マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルタントを経て、2010年医療法人社団鉄祐会を設立し、東京で在宅医療を行う祐ホームクリニックを開業しました。翌年に発生した東日本大震災後には宮城県石巻市の災害福祉避難所を訪れ、不自由な避難生活によって身体機能が低下していくお年寄りを目にし、2011年9月に石巻にも診療所を開業しています。
医療現場とビジネスの世界を横断し社会の課題解決に貢献する働きにより、2015年12月には医療科学の進展を促し、人々の健康に大きな恩恵をもたらす革新的な成果を挙げた人物を表彰するイノベーター・オブ・ザ・イヤーの受賞者に選ばれました。

今回の記事では、医療現場の最前線から経営者の目線まで身を持って知る武藤さんが、インテグリティ・ヘルスケアを通じて解決したい課題、実現したい社会はどのようなものなのか、原動力は何なのかお話を伺いました。


代表取締役会長 武藤真祐
略歴:東大病院、三井記念病院にて循環器内科に従事。その後マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2010年医療法人社団鉄祐会を設立。2015年シンガポールでTetsuyu Healthcare Holdings Pte, Ltd. を設立。循環器専門医、東京医科歯科大学臨床教授、藤田医科大学客員教授。 東京大学医学部(MD)、東京大学大学院医学系研究科(Ph.D.)、早稲田大学大学院ファイナンス研究科(MBA)、INSEAD (Executive MBA)、Johns Hopkins (MPH, MSc)。

インテグリティ・ヘルスケアでは「2030年までに、個別化された医療と情報が適切に届き、人々が主体的に考え、行動を起こしていく世界を作る。」をミッションとして、サービスを通じて医療のデジタル化を推進しています。武藤さんが、医療のデジタル化を推進する原動力はどのようなものなのでしょうか?

これには患者さん、医療従事者、社会という三つの視点があると思っています。

1.患者さんの視点
患者さんが自分の身体の状態に関する情報を、医療従事者へ適切に伝えられない現状があります。
限られた診療時間、専門知識のないなかで身体の状態や病気に関連する情報を正しく伝えるのは難しいことです。情報自体は、自分の感覚からスマートウォッチの記録まで、実は莫大にあります。にもかかわらず、どの情報が重要なのか、患者さんでは判断できないですよね。結果、医療従事者に伝わるのは直近の状況に左右されたバイアスがかかった情報になってしまう。この情報共有の質を上げる仕組みが必要だと考えています。
都市部では病院が混んでいて、地方だと医師が少ない現状はさらに加速していくでしょう。医療や健康アドバイスへのアクセスがさらに制約されていくという点で、日本全国で同じ課題を抱えていると言えます。この状況のなか、患者さんも自ら考えて、自分の健康を自分で守っていく発想になっていくことが必要です。そのためにも、デジタル化は重要だと思っています。

2.医療従事者の視点
医療従事者は基本的に忙しいです。たとえ患者さんから莫大な情報をもらったとしても、短い時間の中で解釈しきるのは簡単ではありません。時間の問題だけでなく、医療従事者は経験の少なさから、患者さんから本来聞くべきことを十分に聞けておらず、本当は知っておかないといけない情報を聞き取ることができていないということもあります。医療従事者としては、患者さん自身に知識を増やしていってほしいこともありますが、伝える手段も限られています。情報の質を担保する仕組みがないことで、医療従事者も困っているんです。
私も医療の現場に立って30年近く経ち、かつては昭和的にひたすら働き、色々なものを我慢しながら経験を積むようなやり方でやってきましたが、2024年に医師の働き方改革がスタートするように、医師が普通の生活を送り、きちんとやりがいのある環境にしていくことは大切なことだと考えています。マッチョな医療現場から令和のサステナブルな医療現場にしていくためにも、情報伝達の質を上げることは必要なことです。

3.社会の視点
高齢化、そして新たな先進医療や医薬品が生まれる中で、医療費はさらに増えていくでしょう。一方、財源は限られています。それをどう適正に配分していくか、具体的には診療報酬制度をどう整えていくかが課題になるわけですが、現在はデータに基づいたやり方に十分なっていない点が問題なのです。

例えば「血圧が下がった」という結果が見えたとしても、投薬調整が適切だったのかという調整プロセスをデータで追うことができないため、正しい医療介入があって改善したのかどうか評価ができず、無駄な医療も多く発生しているのが実態だと思っています。
残薬や重複投薬といった、無駄な医療が行われているがゆえに、本来医療が届くべき人に届いていない。医療資源配分を適正に行うには、データに基づくことが大切です。

この3つの視点どの立場から見たあらゆる課題に対して、デジタル化は有用だと信じています。インテグリティ・ヘルスケアが提供するePROをはじめとしたサービスソリューションは、このような課題を解決しうると思って進めているものです。


ビジョン実現のための取り組みとしてあじさいネットとノバルティスファーマと包括連携(*)などの事例がありますが、これらの事例は医療業界のどのような変革に繋がっていると思いますか?

医療にデジタルが必要というのは今お話しした通りですが、デジタルイノベーションを起こすということだけではなく、現在既にある技術を医療の中でいかに使って、定着させていくかが重要だと思っています。

例えばオンライン診療を考えてみると、ビジネスの世界では画面上で資料を共有しオンラインミーティングすることは当たり前になってきています。技術自体はもう当たり前にあるのです。医療のデジタル化というとすごく難しいことを言っているように聞こえますが、実態は当たり前のものをどう使っていくかということです。必要なのは技術的なイノベーションではなく、ソーシャルイノベーション、社会が受容できるような規制緩和や診療報酬の制度、人々のマインドセットの変化なんです。

包括連携の取り組みなどを通して、こういったイノベーションを起こすことと定着させる・普及させることは別物で、そこを分けて考えないといけないと、私も経験を通じてよくわかりました。

新しいものはなかなか簡単には受け入れてもらえません。ステークホルダーとコミュニケーションを繰り返し、受け入れてくれるにはどうしたらいいかを考えることが重要なのです。

あじさいネットは、まず協議会を作って一緒に活動してくれるようになったのがとても大事な一歩で、現実に基づいた進め方ができたことが収穫でした。進め方を間違えるとうまくいくものもいきません。ソーシャルイノベーションを定着させるためには、様々な人たちの思惑の曖昧なバランスの上に立ち、信頼をいただいていくことが必要なのです。それを考えることなく進めるとバランスが崩れてしまい、進むものも進まなくなってしまいます。

でも私がヘルスケア領域の好きなところは、様々な立場の人が色々なことを言いますが、最後「患者さんのために」という言葉の前に団結できるところです。どう実現するかには課題がたくさんありますが、共通した思いがある業界なので、デジタルによって変革していけると思います。


2023年5月20日にスイス・ジュネーブで行われたWorld Heart Summitにおけるパネルディスカッション「From global to local: Solutions for heart health」に参加したときの様子。当社が長崎県で取り組む急性心筋梗塞の二次予防デジタルクリニカルパスについてご紹介し、世界でも最先端の取り組みであるとの評価をいただきました。

ビジョンを見据えて、インテグリティ・ヘルスケアをどんな会社にしていきたいですか?

インテグリティ・ヘルスケアは、「包括連携が必要だ」と言うだけではなくて、テクノロジーを通じて実現させようとして活動している会社ですし、変革を実現できる会社であってほしいです。単なる批評家になってしまっては、本当の意味での凄みや発言の重み、信頼は生まれないですからね。ビジネスの部分では園田さん(代表取締役社長)を中心として、私を中心に描いたビジョンを現実の社会のなかで実行していってくれています。

「ビジネス=自分たちのことしか考えていない」と言われることもありますが、ビジネスをしているということは、自分たちの足で立っていることだと私は理解しています。国からお金をもらうのではなく、ビジネスとして成立しているのは、私たちのサービスに価値を感じて対価を払ってくれる人がたくさんいるということです。

このビジネス活動を通して、YaDoc(IHが提供するオンライン診療システム)が日本中誰もの日常にあるのが普通の状態になっている、と言うのが本当の意味で変革ができたということだと思うので、実現させていきたいですね。

これから入社する人や、IHで働く人への期待を教えてください。

それを表現したのが、Integrity(インテグリティ)、Professionalism(プロフェッショナリズム)、Humor(ユーモア)というコアバリューと理念です。 これまでお話したような理想を実現する人間として、どうあって欲しいかがこの3つの言葉に込められています。社会ってこうあるべきという大きな話も、最後は人間一人ひとりの人柄によって支えられています。全てはそこからはじまっていくものだと思うんです。 人間性が脆かったり不安定だと、生み出すサービスやその先の社会がグラグラしてしまうので、人間として信頼できる人であってほしいと思っています。

Integrity(インテグリティ)
プロフェッショナルやユーモアは、技術的な部分もありますが、インテグリティというのはそういうことではありません。すべての人に敬意を払い、社会に誠実に向き合い、「より良い」ことを追求する、その真摯さです。 イノベーションは信頼の積み重ねの上に定着するものだと思っているので、医療現場のイノベーションを目指す私たちは、本質的に信頼に足る人間である必要があると思います。

Professionalism(プロフェッショナリズム)
これは技術の高さだけの話ではないと思っています。インテグリティ・ヘルスケアで一緒に働いてくれる人のなかには、最初は技術的にはジュニアの人もいると思いますが、自分の分野で学びたい、極めたい、負けたくないというプロとしての誇りを持ってそのために努力を重ねるような人であってほしいです。

Humor(ユーモア)
私が患者さんを診るときには、単に仕事をしている、と思われるのではなく、僕らが帰った後にいい時間だったな、先生が来てくれてよかったと、思ってもらうことが目標なんです。そのためには、痛みをとる、精神的に落ち着ける状態にするなど手段はいろいろありますし、そのためには技術が必要なこともありますが、根底にあるのはユーモア、優しさだと思うんです。本当に親身になって、相手のことを考え、関わる人を笑顔にしたその先に生まれる世界を一緒に感じられる人と働けるといいなと思っています。 自分が作ったものが何の役に立っているかわからなくなってしまうものも世の中にはあると思いますが、我々は間違いなく世のため、人のため、そしてプロフェッショナルのためにイノベーションを定着させようとしています。自分の生み出している価値を感じてもらえる会社だと思います。 僕らが実現したいこと、大事にしようと思っていることを、それぞれの技術・持ち場で実現をしたいという想いのある人に、ぜひ仲間になっていただきたいですね。

(*)あじさいネット、ノバルティスファーマとの包括連携協定について 長崎県の地域医療連携ネットワーク「あじさいネット」と、ノバルティス ファーマ株式会社、IHの3者は、循環器疾患および呼吸器疾患に関する地域医療の質向上を目的に、2022年4月に包括連携協定を締結しました。本協定締結以降、IHは、気管支喘息の治療ならびに急性心筋梗塞(AMI)二次予防クリニカルパスに関する課題についてデジタルによる支援を行い、長崎における地域医療への貢献を推進しています。

いかがでしたか?今後もIHへの理解を深めていただけるよう様々なテーマで発信していきます。お読みいただきありがとうございました。

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