自分と他者の「世界の捉え方」。その違いを探究するサービスデザイナーの仕事とは
インフォバーンで働く社員へのインタビュー企画。今回はINFOBAHN DESIGN LAB.(以下IDL)でサービスデザイナーとして働く山岸さんのインタビューをお届けします。
現在、サービスデザイナーとしてさまざまな案件で活躍する山岸さん。しかし、前職とは異なるスキルや経験を求められる今の環境に慣れるには苦労したと語ります。インタビュアーである私、松永が山岸さんと初対面だったので、まずは仕事とは関係のない話からお伺いしました。
グリーンピース、絶対回避
ーー山岸さん本日はよろしくお願いいたします。仕事の話をお伺いする前に、最近ハマっているもの、もしくは苦手なものを教えていただけますか?
ハマっているものですか…。あ、お菓子作りにハマっていますね。お菓子作り教室にも通ってフランスのお菓子を作っています。『フィナンシェ』とかを作ってて楽しいですよ。
苦手なものは2つあります。まずはグリーンピース。見た目がもう…。あの皮の食感もダメですね。好きな人には申し訳ないんですけど本当に苦手なんですよ。
ーー僕も苦手なのですごくわかります。似た食感の『粒あん』も苦手なのですが山岸さんはどうですか?
『粒あん』はギリギリ行けます(笑)。緑じゃないので。食感よりも見た目がダメなのかもしれないです。シュウマイの上のアレとか、オムライスの上のアレとか、絶対避けますね。
ーーわかります。でも人とご飯食べる時「こいつグリーンピース食えないんだ」って思われるの恥ずかしくて噛まずに飲み込むときもあります。
私はそこの恥じらいとかは一切ないですね。絶対回避です。
苦手なものの2つ目は『ホラー映画』です。共感性が人より高いのかもしれないのですが、痛めつけられる映像とか残虐な映像見ると「痛~」っていう気持ちになっちゃうんです。『SAW』とか絶対無理ですね。一時期アルバイトで映画館で映写技師をやっていたのですが、『SAW2』を担当した時は目をつぶりながらフィルムを繋ぎました。
ーーやったことないのでわからないのですが、映写技師って映像がちゃんと出てるか確認するお仕事ですよね?
そうです。配給会社からフィルムが7リールくらいに分かれて送られてくるんですけど、それを繋げる作業があります。その繋ぎ目をちゃんと見ないといけないんですけど『SAW2』の時は見ることができなかったので、もしかしたら間違いがあったかもしれないです。
ーー「あれ? 今映像なかったぞ?」みたいな?
そうですそうです。ホラー映画まったく見れないので、楽しめる人のことをうらやましいなって思いますね。ホラー映画って名作と呼ばれる作品多いじゃないですか。『冷たい熱帯魚』とかは観てみたいと思うのですが…やっぱり絶対無理ですね。
「四六時中UIデザインを考えるのが楽しかった」
ーー僕もグリーンピースとホラー映画がすごく苦手なので、一方的に山岸さんと距離が縮まった気がします。ではここからは仕事の話を。まずは山岸さんってインフォバーン何年目でしょうか?
今は7年目ですかね。ジュンカムさん(インフォバーン代表取締役社長・田中準也)と同期だと記憶しています。インフォバーンは2社目の会社になりますね。
1社目は大阪にある企業で、そこでインハウスのUIデザイナーをやってました。スマホやパソコンでテレビを見るためのシステムを作る会社で、そこで必要になるテレビアプリのUIデザインなどを担当することが多かったです。サービスを受託開発することもあり、その端末のUIデザインなどもやっていました。その会社を経てインフォバーンにやってきました。
ーーUIデザインは学生時代から学ばれていたんですか?
学生時代はプロダクトデザインの領域を学んでいました。プロダクトといってもゴリゴリのモノづくり系じゃなくて、行動観察とかを通してプロダクトを考えよう、みたいなゼミで勉強していたんです。
小さい子どもが部屋の中でどういう場所が好きでどういう行動をとるのかを観察し、その観察から示唆を得てプロダクトに落とし込む、というようなことを好んでやっていました。
ーー学生時代からそういったUXを考えるのがお好きだったんですね。前職で思い出に残ってる仕事ってありますか?
プロジェクト単体というよりは、UIデザインを四六時中考えていること自体が楽しかったです。分かりやすい画面にするためにはどうすればいいのか。そういったことをエンジニアと一緒に仕様から考えるのもいい経験でした。
「どうすればもっと良くなるのか」をみんなで考えデザインに落とし込んでいくのが楽しかったですね。前職時代はなんかもう土日も関係なくずっと仕事してました。今思えばあれは体に良くなかったかもって思うんですけど自然とやっていましたね。無理にではなく。その会社には6〜7年くらいいました。
世界の捉え方の違いを求めて
ーーインフォバーンに転職したきっかけは何だったんですか?
ずっとUIのデザインをやり続けていく中で、UIだけでなくそれに付随してUXについても考えるようになりました。なので、UXデザインに関われる会社はどこだろう、とうっすら探していたんです。その時にたまたま参加したイベントで井登さん(インフォバーン取締役 副社長・井登友一)を見かけたのがきっかけです。
そのイベントでは人間中心設計の話をしていたんですが、その話がすごくおもしろかったんですよ。人間中心設計はHCDともいうのですが、プロダクトやサービスを開発者視点ではなくユーザーを起点に考えるというもの。当たり前に「大切な考え方だな」と思うじゃないですか。
でもそのイベントではHCDに批判的な話もしていて。当時あんまりそういう話をする人がいなかったんですよ。「HCDってこういうものなので、こうやって学びましょう」という流れが主流の時に「いやいや……」みたいな内容で(笑)。HCDを批判的に考える姿勢がすごく印象に残っています。
ーーそこでインフォバーンを知って、すぐに応募されたんですか?
そうですね。まずはポートフォリオをお送りして面接をしてもらいました。面接でたしか「最近のデザイナーでどんな人が好きですか?」って聞かれて。最近じゃないですけど深澤直人さんが好きなんですっていう話をしたのですが、話した後に「あ、落ちたかも」って思いました。ずっと活躍されていて最近のデザイナーというわけではないし、なにより面接官の反応があまり良くなかった気がして(笑)。
ーー(笑)。それはヒヤヒヤしましたね。インフォバーンでの最初の案件って覚えてますか?
覚えています。入社後いきなりUXデザインの案件に入らせてもらいました。ヘルスケア案件のリサーチや、新しく立ち上げる銀行の体験設計などの実務に入らせてもらったんです。
前職ではずっとUIのデザインをやっていたので、UX領域の仕事はめちゃくちゃ苦労しました。もちろん自分でUXデザインを勉強してから入社したのですが、やはり実践となると期間もあれば予算もあるわけで。そのあたりをどうバランスとって動けばいいのかとか、お客様にとって有用なプロセスとは何かを考えたりとか、そのあたりは慣れるまで苦労しましたね。
ーー特にどんな点に苦労したのでしょう。
全体的に苦労したんですが、例えばユーザーリサーチです。ユーザーの行動を深く理解するために行うデプスインタビューなど、これまで知らない人と対話してお話を引き出す経験がなかったので、なかなか大変でした。
「いかに準備するか」が大切なんだと今ではわかります。特に「問い」の準備が重要だと感じています。プロジェクトのテーマに沿って、どういうことを聞きたいのかを考え、そこから逆算して「問い」を準備しておく。そういうところをしっかり設計し軸を持っていれば、インタビュー中の思わぬ脱線も楽しみつつ、より広く深い探索ができると思います。今はめっちゃ好きですね、デプスインタビュー。
ーーいいですね。どういうところが好きなんですか?
私、結構憑依タイプで。憑依するように話を聞くのが好きなんです。「私はこう捉えているけどこの人はこう捉えている。それってなんでなんだろう?」って考えながら話を聞くのが好きで。その人がどう世界を見ているのかに興味があるんです。お互いの見ている世界の違いを知るのは非常におもしろいですよね。
サービスデザイナーは「サービス精神旺盛な人」が向いている
ーーすごく楽しそうに話されるので本当に好きなんだと伝わってきました。山岸さんは「サービスデザイナー」という役割を担っていますが、具体的な仕事内容を教えてもらえますか?
今やってるお仕事としては新しい製品・サービスの顧客体験を考える案件が一番多いですかね。オンライン診療の顧客体験の改善であったりとか、少し前だと航空会社さんと一緒に機内の顧客体験のデザインを行ったりとか、そういう案件をやることが多いかなと思います。
最近は組織デザインの案件も多くなってきました。新しい顧客体験を生み出すためには組織としてどういう人材を育成すればいいのか、組織としてどういう仕組みがあれば新しい変革を起こし続けることができるのか。そういう課題を持ったクライアントも多くなってきています。
ーーそのようなお仕事の中で充実感を感じるのはどんな時でしょうか?
難しいですね…。一つあるとすれば、アプローチを考えているときかもしれないです。案件によってこれまでやってきたアプローチを変える必要があるときがあるじゃないですか。それをクライアントと協創していくのはおもしろいなと思いますね。
例えば、去年とある案件でお掃除ロボットの顧客体験をリサーチするお仕事がありました。お客さんの家に行ってお掃除ロボットがどのように使われているかといった使用感を直接リサーチする予定だったのですが、コロナ禍で断念することになったんですね。
その時に「ああ残念でしたね」で終わらせるのではなく、「お客さんに360度カメラを送ってご自身で撮影してもらいながらインタビューすれば良いリサーチにできるのではないか」とメンバーとアイデアを出し合いながら乗り越えました。こんな感じでアプローチを工夫するのが好きなんだと思います。
ーーどう工夫すればいいかと思案しているときに充実感を感じるんですね。ちょっと話は変わりますが、どんな人がIDLのサービスデザイナーに向いてると思いますか?
サービス精神旺盛な人が向いていると思います。サービス精神旺盛といっても奉仕するということではありません。ユーザーはもちろん、クライアントやチームメンバーと丁寧に向き合い、うまく行かない時でも想像力を働かせながら工夫してゴールを目指す。そして自分自身もそのプロセスをおもしろがることができる。そういったマインドがあった方がIDLの仕事を楽しめると思います。
あとは純粋に体力がある人がいいと思います。プロジェクトを遂行するには粘り強さが必要ですし、リサーチするのも見たり聞いたりするだけじゃなくて全身を使うので、個人的には体力がいる仕事だなぁって思っています。
IDLで働くメンバーは元々編集者だったりデザイナーだったりで個性豊かなメンバーが揃っています。そしてそれぞれがプロ意識が非常に高いメンバーの集まりだと感じていますね。なので、お題が一個ドーンと来た時にそれぞれが自分の得意領域の知見を生かして「こうやれるんじゃないか」「ああできるんじゃないか」と切り口が出てくる。そういう環境を楽しめる方はIDLに向いているのではないでしょうか。
ーーなるほど。IDLに入社するとどんな体験ができそうでしょうか?
一番おもしろいのは領域横断でいろんなプロジェクトに関われる点でしょうか。ヘルスアプリの案件ができたかと思いきや全然違う教育系の案件に携わったり。領域をまたいで縦横無尽に動き回れる部門なのでそれは楽しいんじゃないかと思いますね。
あとは、デザインプロセスを一から考えられるおもしろみはありますね。ただアウトプットを出すだけじゃなくて、そこに至るプロセスをデザインすることができる。
ーーそこに自分なりの工夫を入れられる。
そうです。過去の案件で航空会社のリサーチを行った時に、空港で直接お客さんをリクルートしないといけなくて。飛行機に乗る直前のお客さんに「リサーチ手伝ってください!」って声をかけたんですよ。大変だったんですけどおもしろかったです。
チェックインカウンターの前で待ち伏せして、協力してくれそうなお客さんがいるとグランドスタッフさんが「今!」と目で合図してくれて(笑)。その合図を待って、お客さんのところにダッシュしました。
グランドスタッフさんのご協力を得るために朝礼にも参加しました。スタッフの方々が円になって業務の話をしている場に私もCAさんみたいな顔で入らせてもらったんです(笑)。もちろん話している内容はわからかったんですけど全部に「ハイ!」と言いながら。
そこで「はい、じゃあ山岸さんも一言!」と促してもらい「今日はインタビューのためにお客様をリクルートしに参りました!よろしくお願いします!」と挨拶させてもらいました。現場ならではの臨場感を感じることができておもしろい体験でしたね。
このように普通に暮らしていたら絶対体験できない場面に触れられるのもIDLで働く醍醐味だと思います。そういうことにアンテナが立つ方がいたらぜひ一緒に働きましょう。
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