3月24日、「ニュー北九州市シティ」プロジェクトが始まりました。これはアジアの新世代アーティストたちに北九州市ならではの文化を題材に作品を制作してもらい、その斬新な視点により北九州カルチャーをアップデートしていく取組みです。
第1弾のテーマは、北九州発祥である酒屋の一角で集い飲む文化「角打ち」です。香港の門小雷(リトルサンダー)さん、台湾のShiho Soさん、韓国のナム13さん、日本の雪下まゆさんの4名のアーティストに自由な感性で描いていただきました。これらの作品は、東京・渋谷駅、北九州・小倉駅、福岡・天神駅に駅貼りポスターとして公開されましたが、かなりの迫力を発散し道行く人々の注目を惹きつけていました。
制作は、北九州市、アジアのクリエイティブシティガイド「HereNow」。私は全体のクリエイティブディレクションを担当させていただきました。私から「ニュー北九州市シティ」プロジェクトを始めた3つの理由をお伝えしていきます。
「Newtro」を求める新世代の若者と北九州市をつなげるために。
今回のプロジェクトでは、韓国や台湾、香港などで発生した「Newtro(ニュートロ)」カルチャーを体現するアーティストを起用しました。流行の最先端のファッションや音楽などのアートとして採用されることはありましたが、地方自治体の広告では初めての起用だと思います。「Newtro」とは「New+Retro」の造語で、「新しい過去」を意味します。生まれながらにインターネットを使いこなすZ世代・ミレニアル世代の10代・20代にとって、かつての「アナログ」な生活や文化は新鮮に映ります。それらを新たな感性で再解釈したカルチャーが「Newtro」と呼ばれているのです。
「アナログ」な生活や文化にもたくさんに出会える北九州市は、「Newtro」を求める世代にとって心そそられる街だと思います。「角打ち」をハシゴしたり、レトロ感が満載の旦過市場などを歩けば、宝物をいっぱい発見し、インスピレーションも刺激されます。新世代の若者と北九州市をつなげて、新しいカルチャーを創造していくことがこのプロジェクトを始めた第一の理由です。
なお、参考までに、「Newtro」カルチャーの原型になっているのは、「Future Funk(フューチャーファンク)」という音楽ジャンルで、世界的なシティポップブームの立役者になった韓国人DJ兼プロデューサーのNight Tempo(ナイトテンポ)が有名です。私は彼のロゴやファッションブランドとのコラボアイテムなどのデザインを手がけていますし、この音楽から古きものを新しく楽しむ「Newtro」カルチャーが生まれる過程についても注目していました。今回、日本の皆さんに「Newtro」カルチャーのアーティストたちを紹介できて嬉しい限りです。
北九州市を東アジアの文化的なハブ都市として発展させるために。
九州の玄関口に位置する北九州市は、古くから本州はもちろん大陸とも活発に交流し、多様な人やモノ、情報が受け入れることで独自の文化を育んできました。未来に向けても、韓国や中国などの国々との文化交流をリードすることが北九州市の役割だと考えています。
ちょうど2021年は東アジアの文化交流が活発になる年です。北九州市は中国・揚州市、韓国・順天市とともに「東アジア文化都市」に選ばれ、今年4月29日から5月9日までの11日間、「北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs」が開催されます。その機運を盛り上げるために、今回のプロジェクトで先鋭的なアーティストのコラボレーションを手がけたというわけです。北九州市を東アジアの文化的なハブ都市として存在感を高めることがこのプロジェクトを始めた第二の理由です。
コロナ禍の中でも、アートによって人々の心をつなげるために。
現在、コロナ禍により海外との行き来が制限され、東アジア内での交流も滞っています。こんな状況でも可能なことは何かを考えて行き着いたのが、「ニュー北九州市シティ」プロジェクトでした。各国のアーティストに一つのテーマのもとで制作してもらい、それらを駅貼りポスターとして並べて公開する形です。さらに、Tシャツやグラスといったオリジナルグッズにも展開しました。
実際、駅でポスターを観ていただくとわかるのですが、それぞれのアーティストが個性を主張しながら全員で一つのグルーヴを発しているようでした。まさに「ONE ASIA, ONE ART」です。コロナ禍であろうと、アートなら人々の心をつなげることができる。それを証明しようとしたことが、このプロジェクトを始めた第三の理由です。
これからも新しい世代の才能あふれるアーティストを登場させたり、北九州市の魅力的な文化を新しい視点から描いていきます。「ニュー北九州市シティ」プロジェクトの今後の展開にご注目ください。
▼HereNow北九州 | 「ニュー北九州シティ」プロジェクトの全貌に迫る記事
https://www.herenow.city/kitakyushu/article/new_kitakyushu_city/
▼「ニュー北九州シティ」ブランドサイト
https://new-kitakyushu-city.com/
北九州市がこれまで展開してきたアーティスト・カルチャー企画のアーカイブを見ることができます。