2022年に誕生した博報堂Gravityは、ファッション・ラグジュアリー・ライフスタイル領域のブランディングを得意とする広告会社です。博報堂グループ内にあった博報堂マグネットとコスモ・コミュニケーションズの2社が統合し、ノウハウ、スキルを融合することで、ブランド起点の統合マーケティングをワンストップかつ、高クオリティで提供しています。
そんな博報堂Gravityを支える社員へインタビューを実施。今回話を聞いたのは、コマースコンサルティングユニットの中田亮祐。チームを率いる彼は、「データで心を動かすコンサルタント」を理想に掲げています。一見、デジタルの領域と相反するかのような“情緒”を重要視する理由とは?
▼プロフィール
中田亮祐(なかだ・りょうすけ) / 職種:コンサルタント / 2020年4月 入社
アパレル販売、教育業界、Web専業の広告会社を経て、2020年4月、博報堂Gravityの前身であるコスモ・コミュニケーションズに転職。コマースコンサルティングユニットで売上獲得領域のサポート支援を行う。 国内のセレクトショップを中心に担当。
“先義後利”なGravityのコマースコンサルティング
───博報堂Gravityのメディアエクスペリエンスデザイン部には3つのユニットがありますが、中田さんが率いる「コマースコンサルティングユニット」は、どういう役割なのでしょうか?
中田亮祐(以下、中田):以前インタビューしていただいた津賀や山越はがっつり広告の文脈でクライアントワークをしています。もちろん私たちも広告には携わるのですが、Eコマース領域のソリューションを提供するコンサルティングをメインの業務としています。
やさしく言うと「デジタルマーケティングの中でもクライアントの希望や、売上に直結するEコマースにおける悩みごとの解決が得意なチーム」ですね。広告文脈でのコマースの仕事もしますし、AmazonなどのECモールのお悩み解決もします。また、LINEの公式アカウントに関してのスペシャリストもチームに加わり、カバー領域が広がってきています。
───ユニットができた当初と比べて機能が拡張したそうですが、どのような経緯があったのでしょうか。
中田:もともとROAS(広告費用対効果)をKPIとした広告運用が多いチームではあったのですが、クライアントの課題に対し、一般的な広告会社の領域を超え、より統合的に解決をしていくため、Eコマースの領域で他に何ができるのかを考えました。そうして対応する領域を広げていった結果、今のかたちになりました。
グループ企業の博報堂にコマースコンサルティングを中心に行う組織があり、彼らが持っているナレッジ、ソリューション、パートナーを共有できるようなスキームも対応領域拡大の一助になりました。
もうひとつの大きなきっかけは、事業会社でEC事業に携わっていた社員がチームに加わってくれたことです。彼はEC事業を5人規模から200人規模へと成長させた経験を持っていました。
私たちはクライアントの“かゆいところに手が届く”ようなサービスを提供したいと考えていたのですが、まずは“かゆいところ”はどこなのかを調べなければなりません。しかし彼はEC事業を熟知しているので、かゆいところを全部わかっていて、それをもとに組織体としての土壌ができだしたのが3年前くらいです。
───その方の人脈も存分に生かせたということでしょうか。
中田:私は彼の人脈をなし崩し的にビジネスに使うのは良くないと考えています。彼が長年のキャリアで築いてきた繋がりは、彼自身の財産であり、非常に希少なものです。それを目先の数字のために利用して、万が一にも信頼関係が崩れるようなことがあってはならない。もし仕事としてご一緒するタイミングではないのなら、無理に繋げる必要はないと考えています。
まずは私たち自身のサービスの精度を、どんな悩みでも解決できる「魔法の切り札」のような状態にまで高めることこそが先決だと思っています。
───人脈を利用するのではなく、まずは自分たちの価値を磨くということですね。
中田:そうですね。私の仕事や人生における価値観として、「先義後利(せんぎこうり)」という言葉を大切にしています。
まず自分たちが、人としての正しさや誠実さ、義を尽くし、自分たちの身を削ってでも価値を提供する。利益はそのあとからついてくるものだという考え方です。
データを活用した「心を動かすコンサルティング」とは?
──対応する領域を広げていったなかで、苦労した経験もあったのでしょうか。
中田:うちの会社はブランディングに関わる業務がメインなので、Eコマースの売り上げを伸ばすことだけを考えていた頃は、焦燥感がありました。
山越のいる「デジタルディレクションユニット」や、津賀の「コネクションプランニングユニット」のようなチームは予算もアカウントも大きい。キラキラしていて楽しそうな姿を見て悔しい思いもしました。自分やユニットのメンバーはどうしたらいいんだろうと、思い悩んだ時期があったのは事実ですね。
───そこからどのように脱却したのですか?
中田:社内のリーダーシップ研修の一環でコーチングを受けられる機会があって、その機会に救われました。最初はただ愚痴みたいなことを言っていたんですけど、「何でそう思ったんですか?」「どうしたらいいと思いますか?」と、第三者視点で僕に問いかけてくれるなかで、負のスパイラルを止めて正のスパイラルに転換していくことができたんです。
もっと先を見据えて、大局的にどうなっていくべきかというメタな思考に切り替えられました。大変なことがあっても、「今は苦しいけれど、人生で考えたら些末なことだな」と捉えられるようになったんです。
「いろんな環境下でまずは挑戦してみよう、ダメだったら次を考えよう」と楽観的にやってみたら、パズルがパチパチパチっとはまって。社内で行っている、優れた成果を収めた仕事を表彰するアワードで受賞する機会をいただくこともできました。
───そうした気づきがあったことで、仕事との向き合い方は変わりましたか?
中田:めちゃくちゃ変わりましたね。自分が俯瞰して見られるようになると、人の悩みも俯瞰できるようになりました。
そこから「データを活用して心を動かすようなコンサルティングができるチーム」にしたいという方針も決まりました。
───心を動かすコンサルティングですか。
中田: 「コンサルティング」には冷たい響きがあるので、そこに情緒を足せたらと考えました。
もちろん数字を分析することは非常に貴重なスキルの使い道ですが、それだけで終わらせないのが私たちの仕事の意義です。データという客観的な事実を武器にしながらも、最終的には相手のパッションや情緒に訴えかけ、納得感を生む「ハートを動かすコンサルタント」でありたいんです。
───なぜ、デジタルやデータの領域でそこまで情緒を重視されるのでしょうか?
中田:本当に苦しかったときがあったからこそ、人の気持ちや心を動かすという発想に繋がったのかもしれません。
特に私たちが主戦場とするファッション・ライフスタイル領域のクライアントは、非常にきめ細かく、強い関係性を大切にされます。ロジックだけ詰めても、ブランドの本質的な課題は解決できないことが多々あるのですが、そのブランドの本質的な課題に丁寧に向き合うことでクライアントとの信頼感が生まれ、強い関係性が構築できると思います。
僕は昔の上司から言われた「心は熱く、頭は冷静に」という言葉を今でも座右の銘にしているんです。コーチングを受けた際にも、自分の根底にある価値観は「相手の心を大事にすることだ」と再認識しました。
───具体的に「心を動かす」ために、日々の業務で意識していることはありますか?
中田:最も大切にしているのは想像力です。 例えば、広告のCPC(クリック単価)が目標に届かなかったとき、単に数字を報告するだけでは不十分です。なぜその数字になったのか、その裏側にある生活者の心理はどう動いたのか、あるいはクライアントが予算を割けない背景にどんな悩みがあるのか。
表面的な事象の裏側にある真実を豊かな想像力で読み取り、「それなら、次はこうしましょう」と熱意を持って背中を押してあげること。それこそが、相手の心を動かすことに繋がると信じています。
携わっていたブランドのストアが年間アワードを受賞
───その方針が決まってから手掛けたなかで印象に残っているお仕事はありますか?
中田:世界最大手のECモールで行われるアパレル部門の年間アワードで、支援していたブランドのストアが受賞したのは手応えを感じた仕事のひとつですね。もともとそのECモール内の広告をクライアント内部で運用されていたのですが、我々に任せていただき、ターゲティングを見直したところ、効率化が図れました。
さらに広告だけではなく、ECモール内のストアの改善をして最適化を目指すことはもちろん、どういうものが売れているか、デザインや価格などを調べ提案しオリジナルの商品を開発していただいたところ、クリティカルに売り上げに寄与しました。
───有名なECモールにはプラットフォームごとにフォーマット化されたデザインがあると思うのですが、制約があるなかでそれぞれに合わせた改善を施し最適化を目指すというのは、どういうことなのでしょうか。
中田:まず、プラットフォームごとに客層が全然違うんです。例えば、あるECモールでは客層が若めで、サムネイルがとても大事です。情緒的にものを探す人、ウィンドーショッピングする人がそのECモールに行くので、スタイリングを見せます。
また別のECモールでは “目的買い”が多いので、それに応じて広告の戦略も変えていく必要があるんです。
市場におけるワンチーム感を具現化したい
───今後、ユニットとして会社の中でどうなっていきたいですか?
中田:いわゆる広告以外のスペシャリストも増えてきているので、より機能の拡張性を広げたいですし、深度も深めていきたいです。
そういったかたちでユニットのサイズを大きくしたいなというのが、目下のビジョンです。
───それでは、広告業界全体で見たときにどんな存在になっていきたいですか?
中田:クライアントにとって、ブランドとブランドを繋ぎ、業界全体を活性化させる“ハブ”のような存在になりたいですね。また人脈は僕にとっての財産であり、すごく大事にしていきたいものなので、僕らを通してクライアント同士の関係性までつくれたら、違う化学反応が起きるのかなと思っています。
ただ飲み会を開くのではなくて、例えば悩みや志を聞いた上でテーマを決めて、「話が合いそうだから、一回セッティングしましょう」とか。マーケットにおけるワンチーム感を具現化できるようになると、より信頼感を醸成し、自分も楽しめるんじゃないかと。
───広告会社でありながら、かなり近い関係性なんですね。
中田:そうですね。困りごとがあるときって、代理店でもコンサルでも何でもいいから、とにかく解決してほしい、相談に乗ってほしいという心境だと思うんです。そうしたところをひとつひとつ拾いあげるということです。
僕が入社したときからずっと携わらせていただいているブランドもあり、普段から感謝を口にしてくださいますし、関係性が続いていること自体、それを示していただいているのだと思います。
───今後、どんな人と働きたいですか?
中田:データで語るのは大事な要素ですが、一方で誰でもできると思うんです。やっぱり相手の心を動かせるような情熱を持っている人と働きたいですね。
あとは、想像力が豊かな人。ひとつの側面しか見えず、それを信じ切ってしまうと、本当はその裏側にある事象が見えない。想像力をもってコミュニケーションでき、相手の心を動かす情熱のある人と一緒に仕事したいなと思いますね。
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