組織に新しい風を吹かせる社員。「夢を、諦めない働き方を」──株式会社建助のデュアルキャリア雇用制度
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「おはようございます!」
午前11時。練習を終えた選手がオフィスのドアを開ける。
12時にはもう一人、13時には二人──今日も新しい仲間の明るい挨拶が、建助のオフィスに響き渡る。移転したばかりの綺麗なオフィスには、色とりどりのユニフォームが飾られており、今日もまた新しいユニフォームが飾られようとしていた。
それぞれの夢と努力の証が、ここにある。
2021年、建助に初めてアスリートが入社してから、今では全国で選手たちが社会人としても成長を続けている。「ウチが夢をあきらめずに選手活動を続けられる環境をつくればいい」その一言から始まったのが、デュアルキャリア形成雇用制度だ。
「仲間になってほしい」そう思った方たちのため、働きやすい環境を追い求めるのがファストコムホールディングス。今回もやさしさから生まれた制度を紹介します。
# 夢を追う人の現実を、変えたかった
‐ マイナースポーツを経験。そこで見たアスリート生活の現実
株式会社建助の代表取締役・小林栄治は、幼少期からBMXレースというマイナースポーツに深く関わってきた。国内では競技人口が少なく、スポンサー支援も限定的。練習と試合を続けるには、アルバイトをかけ持ちし、生活をつなぐ選手が多い。そんな現実を、小林社長は間近で見てきた。
「どれだけ才能があっても、経済的な理由で夢を諦めてしまう選手がいる。それって、すごくもったいないことだと思ったんです。」
多くの選手は、引退後のキャリアを描けないまま社会に出ていく。試合や遠征が重なれば仕事との両立は難しく、結果的に退職や転職を繰り返すケースも少なくない。そんな中で小林社長は、「企業がもっとアスリートを支えられるはずだ」と考えた。
“企業と社会人、両方のキャリアを支援する”──。
その理念のもと、建助の新しい挑戦が始まった。
# デュアルキャリア形成雇用制度とは?
競技活動を続けながら、社会人としてのスキルとキャリアを形成できる仕組み。これが「デュアルキャリア形成雇用制度」だ。
[背景]
• 選手引退後のキャリア課題
• 競技に伴う収入の不安定さ
• 地域社会との関わり不足
[目的]
• 企業とアスリートの双方支援
• 地域社会との共生・共創
• 「競技を理由に働けない」を無くすこと
建助では、選手一人ひとりの練習時間や遠征スケジュールに合わせて勤務体制を設計している。たとえば、入社2年目の社員は「9:00〜18:00(実働7時間)」で働き、1年目は「14:00〜20:00(実働6時間)」など、個人の競技環境を最優先に柔軟な働き方を可能にしている。
2021年、その想いがついに形になり、初めてアスリートを採用した。そして今まで、ファストコムホールディングスでは計17名のアスリートたちが活躍してくれた。競技活動が最優先であるため、練習時間や試合などの状況にあわせて、さらに柔軟に対応し、体調に影響が出ない環境をこれからも目指し、提供していく。
# 名刺の裏に、もうひとつの顔を。
‐ 特別にちょっとした遊びゴコロを。
建助のアスリート社員には、少し特別な名刺がある。表は「株式会社建助の営業担当」、裏をめくると「サッカー選手の自分」。地域の人々や取引先に出会うたびに、その名刺は会話を生む。
「えっ、サッカー選手なんですか?」
「どんなチームでプレーしているんですか?」
会話が弾み、自然と応援の輪が広がっていく。アスリートとしても、社会人としても、自分を堂々と表現できる。この出会いをフルに活用して営業として、選手として応援される存在になってほしいと思っている。過去には、地域の人から愛され一緒に食事にいったりと、様々な心温まるエピソードある。今、活躍しているメンバーもそんな経験をしてほしい。
その小さな“遊びゴコロ”が、建助らしさだ。
# 上司が応援に駆けつける、もうひとつの職場関係
ある試合では、沖縄オフィス所属の選手と名古屋オフィス所属の選手が対戦した。社内チャットには「どっちもがんばれ!」のメッセージが飛び交い、当日は上司も応援に駆けつけたという。
職場での上下関係を超えた“人としてのつながり”が生まれている。オフィスに飾られたサイン入りユニフォームは、建助にとっての“宝物”であり、“誇り”でもある。
# 「たいしたことない」と思ったあの日が、転機になった
建助/ソリューション営業第二課 伊藤さん(25歳)
Q1. 怪我をされたのはいつ頃ですか?
2025年4月です。試合中に膝を痛めました。最初はたいしたことのない怪我だと思っていましたが、診断結果は全治半年。思っていた以上に大きな怪我でした。
Q2. 怪我を知ったときの気持ちは?
正直、最初は「1か月くらいで戻れるだろう」と思っていたので、全治半年と聞いたときはショックでした。みんなが試合に出ている中で、自分だけが何もできないという状況が一番つらかったです。
Q3. どんなことが支えになりましたか?
同じ怪我を経験した選手に「俺もここまで戻れたから続けろ」と励まされたことです。また、チームの監督が試合前の円陣で「今日はゆたかのために頑張ろう」と声をかけてくれた場面がYouTubeに残っていて、それを見たときに涙が出ました。その瞬間、「もう一度頑張ろう」と思えました。
Q4. 怪我の間、どのように過ごしていましたか?
サッカーの試合動画を見たり、英語の勉強をしたりしていました。試合がない生活は正直つまらなかったですが、その分サッカーがどれだけ好きかを再確認できました。
Q5. 仕事との両立はどのように?
入院中に「在宅勤務ができないか」と自分から会社に提案しました。先輩のOさんをはじめ、上司が環境を整えてくださり、6時間の在宅勤務を続けていました。仕事をしていると気がまぎれて、怪我のことを忘れられました。同僚もメッセージをくれたり、復帰時には「おかえり会」を開いてくれて、食べたかった焼肉に連れていってもらいました。周囲の支えを強く感じました。
Q6. 「働くこと」がどんな意味を持ちましたか?
競技を離れた期間に、仕事を通して多くの人と関わり、自分の役割を持てたことで心が救われました。この経験を通じて、サッカーも仕事も“仲間が大事”だと改めて感じました。
Q7. デュアルキャリア制度が支えになったと感じた場面はありますか?
大きな怪我をしても、会社に居場所があるという安心感がありました。リハビリをしながらでも働ける環境、仕事に打ち込める時間があったことで、前向きな気持ちを保てたと思います。この制度があったからこそ、「自分はサッカー選手であり、社会人でもある」という自覚を持てました。
Q8. 今後の目標を教えてください。
サッカーでは、試合に出て点を決め、チームを勝たせる選手になること。仕事では、部署の仲間に迷惑をかけず、むしろ支えられる存在になることです。サッカーも仕事も、どちらも100%の気持ちで取り組んでいきます。
Q9. 同じように怪我で悩むアスリートへ伝えたいことは?
焦らず、一歩ずつ進むことです。復帰を第一に考えて、周りの人への感謝を忘れずに。支えてくれる人たちがいるから、また前に進めると思います。
伊藤さんの経験は、デュアルキャリア制度の本質を示しています。競技と仕事、どちらにも本気で向き合う社員がいるからこそ、建助という組織はより強く、しなやかに成長していくのだと思います。
“応援される人”が増える社会を目指して
建助がデュアルキャリア制度を通じて目指しているのは、アスリートを支援する会社ではなく、夢を応援する社会を広げる会社だ。夢を追う人がいることで、応援する人が生まれる。その連鎖こそが、社会を明るくする。
建助はこれからも、アスリートが“夢を諦めずに挑戦できる環境”を提供し続けていく。そして、社会人としてのキャリアを積みながら、次の世代に勇気を与える存在を増やしていきたい。
「ウチが夢をあきらめずに選手活動を続けられる環境をつくればいい。」
その想いは、これからも変わらない。
最後に、社内に飾られたユニフォームを見上げる。そこにあるのは、ただの布ではない。努力と情熱、挑戦の証、そして人と人をつなぐ絆。
今日もまた、練習帰りのアスリートがオフィスのドアを開ける。「おはようございます!」その声が聞こえるたびに、建助のオフィスは少しあたたかくなる。